ラーメン

最近になってラーメン屋に一人でよく行くようになった。
正確には「一人でもラーメン屋に行けるように」なった。
感染症のアレがあって、外食を避けていたのもあるが、そんなこととは関係なく、もともと私は外食が苦手だった。

今年に入ってからだと思う。
今住んでいるアパートの唯一の利点とも言える「アクセスの良さ」を、もっと活用してもいいんじゃないかと思うようになった。歩いて行ける範囲にさまざまな店がある割に、私はほとんど訪れたことがなかった。最初は恐る恐る、それほど混んでいない店に突入。勝手がわかってくると、あとはタガが外れたようにそれほど臆することなく行けるようになった。

期間をかけて、7、8軒くらいまわった。
定番のラーメン、余裕があればチャーハンや餃子もセットにした。
スープを飲み、麺をすすり、ネギを拾う。
頭の中でこれまで食べてきたラーメンと比較し、ランキング化してみる。
そして自分に問う。「またここに来たいか?」

私は決してグルメではないので、基本的に何を食べても「おいしい」という感想しかない。スープを全部飲むことこそしないが、よほどのことがない限りなんでも残さず食べる。だけどいろいろ店を巡るうち「おいしい」を超えた何かを感じる場面があることがわかった。
「いらっしゃいませ」と言われると嬉しい。
「ありがとうございました」と言われると嬉しい。
気落ちしていた時は、むしろその言葉を聞くために行った部分も、少なからずあるくらいだ。

幸福。

それが店の雰囲気によるものか、その日の自分の気分によるものなのか、よくはわからないが、ラーメン一杯分以上の幸福を感じる時が確かにあったのだ。味ももちろんだが、あえて外で食べる意味は、ひょっとするとそういうところにあるのかもしれない。

そして少しの冒険感。
私はまだ知らないことばかりである。

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