戸籍を読み解いてわかる先祖の物語とは?家系図制作を手掛ける東野久美子さんにインタビュー
あなたの家には、家系図がありますか?由緒ある家柄の方なら代々受け継がれる家系図があるかもしれませんが、多くのご自宅にはないでしょう。
私が最近、交流会で出会った東野久美子さんは、家系図読み解き案内人をされています。具体的には戸籍を読み解いて家系図を制作するお仕事。自分にはどんな先祖がいて、どのようなルーツをたどってきたのか知らない方も、東野さんの手にかかれば約200年前の先祖まで調べることができるのです。
今回は、戸籍読み解き案内人の東野さんにお話を伺い、家系図作成の魅力と意義について探ってみました。
なぜ戸籍を読み解くことが大事なの?
東野さんのお父様は戦争経験者。お父様の弟さんはすごく賢くてイケメンで、家族にとっても自慢の息子さんだったようですが、実は戦争で亡くなってしまいました。戸籍を見て亡くなった日から生年月日を差し引くと23歳で戦死していることがわかったのだとか。その戸籍には、死亡の届出を出した日付や提出した人の名前が記載されています。
その死亡届を提出したのは、東野さんのおじいちゃん。自分の自慢の息子の死亡届を提出しに行ったおじいちゃんの気持ちを考えるとなんとも切ない気持ちに。このような今は亡き家族、先祖の気持ちを読み解いていけるのが戸籍だと、東野さんは語ります。
戸籍に書かれている文字数自体はほんのわずかですが、それを推測して読み解いていくと、そこには先祖の物語が隠れているのです。これまで遠い存在だった自分の先祖も、戸籍を読み解いていくことで身近に、リアルに感じられるようになります。
戸籍から家系図を作ると何がわかる?
戸籍からわかるのは名前や生年月日、婚姻事項、出生事項などですが、先祖代々の戸籍を読み解いていくと、その家系の傾向がわかるそうです。例えば、東野さんがこれまで読み解いてきた中には養子縁組を何度も繰り返すことで今の苗字が受け継がれていたり、離婚する方が多かったりする家系があったのだとか。
また、戸籍に先祖の職業まで詳しく書かれているわけではありませんが、昔は今のように住民票と戸籍が分かれておらず、戸籍の住所が実際に住んでいる住所でした。そのため、戸籍に書かれた住所を見ると、その時代背景から先祖の職業を推測できるようです。
戸籍を読み解いてみたら「坂本龍馬が生きた時代に生きていた先祖が、坂本龍馬の生家があった高知市上町の近くに住んでいたことが判明した」なんてこともあるかもしれませんね。100年以上も前を生きていた先祖のドラマを推理していくおもしろさが、戸籍にはあります。
家系図を手にした方の反応
このように依頼人の先祖一人ひとりの戸籍を読み解いて、依頼人の家系図を作り出す東野さん。戸籍を読み解いて作られた家系図には、自分の先祖の名前がずらっと書かれています。そこに記載された先祖がいなければ、今の自分は存在していません。
これまで遠く感じていた自分の先祖の存在も、家系図を作ることですごく身近に感じられるようです。東野さんの娘さんも、それまでは特に家系図に関心がなかったようですが、実際に家系図を手にしたら「この人たちが全部繋がってるねんなぁ」と感心されていたそうです。
またある依頼人は、両親が幼い頃に離婚しているため自分の父親の存在を知らなかったようです。そんな中、家系図を作ったらそこにはしっかりと自分の父親の存在が。これまで父親の存在を知らなかったことで、モヤモヤとした気持ちがどこかにあったのかもしれません。しかし、家系図を作ったことで依頼人からは「気持ちがすっきりした」という声をいただいたと言います。
家系図は自分用として作るだけでなく、父方と母方の家系図を分けて作成し、両親それぞれにプレゼントすることもできるそうです。
今この時代に家系図を作る意味
東野さんのお話を伺っていると、自分の家系図がどんなふうになっているのか知りたくなってきました。思い返してみると、自分の先祖がどこで暮らしていて、どんな人だったのかあまり聞いたことがありません。
とはいえ「今すぐに家系図を作らないといけない!」という方は少ないでしょう。しかし「いつか家系図を作ってみたい」と思っている場合は、なるべく早く取り掛かった方が良い理由があるようです。
現在は戸籍の保管期間が150年とされています。平成22年に法令が改正されて現在の150年になったのですが、それまでは80年でした。「私もおじいちゃんまでしか戸籍を遡れなくて、それ以上は取れませんでした。」と東野さんは言います。田舎の方では200年前の戸籍が残っていることもありますが、特に都心部では指定の期間が過ぎると、戸籍が廃棄される傾向があるようです。
また、世界的にみると戸籍制度を導入している国は少なく、韓国では戸籍制度が廃止されました。近年はマイナンバーカードの制度も取り入れられており、日本でも戸籍制度が廃止される時が訪れるかもしれません。そうなると戸籍を遡れなくなるので、戸籍制度がある今、150年が経って先祖の戸籍が破棄される前に家系図を作っておいた方が良いのです。
戸籍読み解き人としての想い
「先祖は誰にでも平等にいる存在です。だからもっと先祖や家系図が身近なものになってほしいと思っています」と語る東野さん。
戸籍を読み解いている間は「次はどこにある戸籍を取り寄せますよ」といった感じで、依頼人に途中報告するそうです。すると「全然思っても見ないところに親戚がいたことがわかって、推理小説のようでワクワクします。」といった声をいただくことも。ただ家系図を作るだけでなく、「戸籍を読み解く流れをリアルに感じて楽しんでもらいたい」という思いで、東野さんは戸籍読み解き案内人をされています。
家系図を作ることで「自分にはこれだけ多くの先祖がいたんだ」「一人ではないんだ」と気付くきっかけになります。また、先祖と同じように、あなたも未来の家族の物語を作る一助であることがわかり、自分という存在の重みをより一層感じられるでしょう。
「家系図を作ってみたい」と思われた方は、ぜひ戸籍読み解き案内人の東野久美子さんのページをご覧ください。お申し込みは月3名までと限られているので、お早めに…!