第十三回歌会 解題

「飛」リ 大崎甘奈
ひかりを飛ばしドラマの撮影のような工事現場に演者はいない

夜の工事現場が照明を強くたいているのを見てドラマの撮影現場みたいだと思いつくった歌で、そこには演者ではなくリアルの工事をする作業員しかいないことを詠みたかった歌です。今回の4首はいずれも歌から決めてあとから付記を足しました。甘奈は現場を多く見ていることとアンカーボルトソングの中で裏方への意識が向いていたので選びました。「ひかりを飛ばし」という表現が曖昧で「灯りをたいて」とかの方が良かったのかなと思っています。題字は抜けてますが。

「子」チ 杜野凛世
口紅の色をうつして夕焼けは音にならないことばの粒子

詠草を詠む会で三多摩さんに触れていただいた歌です。凛世GRADやLPでシャニPに自分の気持ちを伝えようとして伝えられない、という描写がいくつかあったため夕焼けにそれを仮託する形でつくりました。最近は杉崎恒夫の歌にとても影響を受けて短歌をつくっているのでその感じがモロに出た歌だと思います。夕焼け、口紅、ことば、音と短歌界のキラーワードがビタビタに出てくる形になったのでただの類想歌、ただの観念的な短歌にならないようにだけは頑張って気をつけたと思います。2位になれて嬉しかったです。

「雨」ヲ 小宮果穂
恐竜の背なかのような斑点を地面に残し過ぎたり日照雨

詠草を詠む会で全然触れられなかったのですが3位になっていて驚きました。こういうこと結構あるので面白いですよね。これも現実で見た光景から先に歌をつくってそれに果穂の付記をつけた形です。果穂さんならこういうこと思いそうだと思います。実際恐竜に斑点がついていたかどうかは分からないので図鑑や教科書で見たイラストの恐竜の斑点を想起している、というのがこの歌の面白さだと思ってつくりました。

「紀」ヨ 園田智代子
紀元前期限後紀元前休み明け生物のノートを写す

今回大ミスをやらかした歌です。提出時間に焦ってつくるからそうなるんだ。これは生物のノートではなく歴史のノートじゃないと意味が分からなくなります。正しくは

紀元前期限後紀元前休み明けは歴史のノートを写す

になります。歴史の授業内で紀元前と期限後のところを書いたノートを行き来して写しているチョコ先輩、というイメージでつくったのですが本当になぜか提出する直前で「生物に変えると助詞抜けるやん!」とか頭おかしくなって生物にしてしまいました。意味通じなくなってるじゃねーか。
この歌自体は渡辺松男の

かこみらいかこみらいかこぶらんこかちる花かわれいったりきたり

という歌の手法を借りたものでした。中句折れの韻律になったので結構危ういかなと思いはしましたが紀元前期限後紀元前のリズムからならまああんまり読みづらくはならないかなと思い提出しました。

私の解題は以上です。今回も良い歌がとても多くすごく励みになりました。次回までに腕を磨いていこうと思います!ありがとうございました!

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