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木材の異方性について


木材=ネギ?

ネギを長い方向に引っ張ってもなかなか千切れないが、ネギを長い方向に沿って割くのは容易だ。これは木も同じで、丸太を短く切るにはチェーンソーのようなパワーのある機械を使う必要があるが、斧を丸太の円い断面に振り下ろせば一撃で割れる。つまり木には弱い方向と強い方向がある。そしてそれは丸太が加工されて木材になっても同じで、このような木材の方向によって木材の性質が異なること異方性と呼ぶ。ここで大事なポイントは2点。
1. 木材には3つの「方向」がある
2. 3方向で「性質」が異なる

木材における3つの「方向」

木材は繊維状の組織が束ねられたような構造になっている。繊維の伸びている方向が軸方向(繊維方向)。あとの2方向は切り株を想像するとわかりやすい。切り株の地面に垂直な方向が軸方向である。切り株の断面には同心円状の年輪が入っているが、この円の中心から外側に伸びる方向が放射方向(半径方向)である。そして最後の一つが接線方向。接線、すなわち円周に接する直線が伸びる方向である。本来は円周方向、つまり曲線として考えるべきだが、木材は四角いのが基本なので便宜的に直線として扱う必要があるため接線方向とされている。
まとめると、
木材には軸方向、放射方向、接線方向の3つの方向がある」
ということになる。木材は数学のx,y,z軸のように3方向で異方性があり、直交異方性材料などと呼ばれる。一方で金属やコンクリートなどは異方性がないため、等方性材料と呼ばれる。

3つの方向の「性質」の違い

「強さ」の違い

木材は軸方向とそれに直交する方向(放射・接線方向)で力を加えられたときの強さが異なる(強度異方性)。強さの指標として強度(壊れにくさの指標)があるが、3方向の強度比は軸方向、放射方向、接線方向でおよそ10 : 1 : 0.5 となる(あくまで目安)。したがって軸方向の強度が圧倒的に高い。逆に言えば軸方向に直交する方向の強度はあまり期待できないため、それを前提に木造建築や木製家具を設計する必要がある。

「収縮しやすさ」の違い

木材には水分が抜けることで寸法が小さくなる(収縮する)性質があり、収縮率が3方向で異なる(収縮異方性)。3方向の収縮率比は軸方向、放射方向、接線方向でおよそ0.5~1 : 5 : 10 となることが経験的に知られている。したがって放射方向・接線方向が軸方向に比べて大きく収縮する。身の回りの木材(たとえばフローリングやまな板)が反っていたら、この収縮異方性が原因である。

まとめ

全体をまとめると次のようになる。
木材は軸方向、放射方向、接線方向の3方向によって、強さや収縮しやすさが異なる」
このような異方性は木材の加工のしやすさや木材同士の接着性能にも影響するため、様々な観点で重要な性質だ。異方性が生じる理由・メカニズムについては、木材のミクロな構造について知るとより理解できるが、筆者もまだまだ勉強不足なので、ここでは割愛し今後の記事で触れる。

編集後記

木材は建築物に用いられることがありますが、金属やコンクリートのような他の建築材料よりも複雑な性質を持っています。だからこそ、木材を活かして美しい寺社仏閣を世に残した「大工さん」たちの技術力の高さを再認識できるのではないでしょうか。

参考

コンサイス木材百科 秋田県立大学木材高度加工研究所
材質用語集ver.1.0 日本木材学会

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