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『お邪魔しま stay me』 - 絵恋ちゃん(2024)【楽曲感想】

  • この記事は新曲のネタバレを含みます。フィジカル版/ダウンロード版共にリリース直後ということもあり、歌詞はある程度省いて引用します。(と言いつつ色々書いているので消すかもしれないね…)

  • あくまでも一個人の解釈・感想のため、楽曲制作者が意図してる内容と異なる可能性があります。


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はじめに

この曲を歌っている地下アイドルの絵恋ちゃん
現在地方に住んで、その土地のアイドルとして活動するという
ご当地アイドルなりきりツアー を行っている。

この曲はそのツアーの 第1弾 大阪編 のワンマン(2024/04/12)にて初お披露目された楽曲。

作詞の服部真希ちゃん(くぴぽのまきちゃん)は直近の2つのツイキャスにて、この楽曲を作詞するにあたって考えたことを話している。
その内容はここでは書き起こさないので、興味がある方は是非聞いてみてほしい。楽曲のこと以外にも絵恋ちゃんの話をしていたり、他の内容も非常に面白い。上の方の配信の弾き語りは、深夜眠れない時に最適である。

楽曲感想

1番

お邪魔しま stay me 不束な天使

曲始まり

イントロはなく、最初から歌に入る。

お邪魔します/stay me の言葉遊びと、
不束(ふつつか者ですが…のやつ)・天使(曲の後半で何を指しているかはっきりと分かる)の組み合わせが絵恋ちゃんのツアーの楽曲としてピッタリ。

音源で聴くと少し空気が多いウィスパーボイスっぽい感じになっているように思う。儚くて可愛い。
また、「不束な天使~」の後に「Ha~」という声が入るのだが、音がhiE→hiDという高音にも関わらず、すごく綺麗!!!!讃美歌のよう。
絵恋ちゃんがキーの高い曲を歌うイメージが自分はそこまでなかったので(『絵馬に願いを』のような高音の叫びはある)、ライブで聴いた時の声量に非常に驚いた。

曲はストリングスとグロッケンなどの音が入りとびきりかわいく、メルヘンで、ワクワクキラキラな夢の世界。
これから何が始まるのだろうと思わせる。

作曲の栗原ゆうさん/編曲の音楽かいとさんの創る多幸感に溢れつつ繊細で、すでに最高だ。

おまじないだから

1番Aメロ

おまじないという行為や言葉自体は非常に可愛いが、
幸せになりたいときや願いを叶えたい時にするものであって
上手くいっているときではなく、多少の不安がある時にしかしないように思う。
この一言だけで、部屋を出る時の気持ちが間接的に感じられる気がする。

Bメロやサビでは「寂しかった」とオタクに甘えるような歌詞もあるものの、
1番の時点では、弱い部分はオタクに隠し、引っ張っていってくれるような、そんな印象を受けた。

2番

ただいまって憧れてた ずっとひとりぼっちで死にたくない
おかえりって憧れてた 生きてる実感溢れるね

2番 Cメロ

1番のAメロとメロディーが違うためここではCメロと定義する。

人(オタク?)と関わらないことでの死への恐怖と、人と関わることによって得られる生の対比。
移動の制限があったコロナ禍を経て、これから全国各地でツアーを続けていく中で
いろんな場所がホームになっていき「ただいま」「おかえり」といえる場所が増えていくのだろうなと想像した。

今はまだお披露目されたばかりの新曲という感覚だが、
いつかこの曲にも郷愁性を感じるようになるのかもしれない。今後感じ方が変わっていくのが楽しみだ。

今日は(電車♡)やってきたよ 今日は(新幹線♡)案外近いね
今日は(ロケット♡)やっぱり遠い I live in your heart.

2番 Dメロ

電車→新幹線 と現実味のある交通機関のあとに、「飛行機」ではなく「ロケット」という夢のような、でも現実に存在している乗り物になるのがすごく良いなあと思った。
まきちゃんのイメージする アイドル・かわいい の部分が現れているのではないかとまで思えた。

最後に入っている”I live in your heart.“
これは現場に来ているオタクはもちろんのこと、在宅(≒本来活動の中心としている関東のオタク)への言葉とも捉えられるのではないかなと妄想する。
もし私が意訳するとしたら「どこにいてもいつも一緒だよ」とするかもしれない。妄想なので許してほしい。

先日のワンマンライブではこの楽曲が2回披露され、2回目の歌唱時はカッコ内の部分が地名に変更されていた。
これからのツアーで色々とアレンジが出来そうな部分だ。

何処へでも行くよ 田舎、都会、世界 宇宙規模までついてきて

2番 サビ

ここでBメロの「ロケット」が「宇宙規模までついてきて」に繋がっているのが好き。
「好き」の程度の比喩として「宇宙一」と表現するがあまりにも最大級の愛で好きなのだが、オタクとアイドルの間に大きな愛がある感じがあって可愛い。

アイドルは天使 オタクはクレイジー

2番 サビ

天使とクレイジーで韻を踏んでいるのに加え、絵恋ちゃん現場のオタク(通称:えれにすと)を的確に表現しているのが面白い。

絵恋ちゃん考案の現状の仮振り付けでは客席全体(オタク側)を両手で指差していっており、オタクというのが特定の誰かではなく我々全員であることが窺える。

Eメロ

落ちサビ前の部分をEメロと定義する。

1番・2番共に知らない場所に行くことへの不安などはあるものの
気持ちに余裕があるような(と書きつつもニュアンスは違うと思う。もっと上手い言い方したいが言葉が思いつかない)態度をとっていた。

距離感保って 調子乗らないで

1番 サビ

会いに来てあげたよ 全部忘れていいよ

2番 サビ

しかし、Eメロでほかの部分と比べて明らかに心境が露になっている。

一連の言葉の語呂がとても気持ち良いが、
他の部分とは違って辛辣な歌詞もあり。

その中で1つ、疑問が生まれた箇所がある。

Eメロの途中、「stay with you」という歌詞が出てくるのだ。
タイトルの「お邪魔しま stay me」にはwithが入っていない。
「語呂の良さでそうしているのかな?」とも考えたが、歌詞中にwithを使うのであればタイトルにもwithを入れるのではないだろうか。

自分は英語が得意ではないので色々と調べてみたところ
stayには滞在する、◯◯し続ける、留まる、そして精神的に支える(これは他の方に教えてもらいました。勉強になる)などの意味があるとのこと。
もしかすると、複数の意味が込められているのかもしれない。

落ちサビ

お邪魔しま お邪魔しま stay me

落ちサビ

1度「お邪魔しま」を言った後ブレイクが入り更には転調するのだが、その後の2回目の「お邪魔しま」の絵恋ちゃんの声の表現の破壊力がすごい。なんなんだ???!!
あと、1拍ちょっとで即転調したメロディー歌えるの凄すぎるのですが?!音感がないとできない。

舞台出演などがあり本格的に演技のレッスンを受ける機会があったのも影響はあるのかもしれないが、この表現はアイドルとしての天性のセンスなのではないだろうか。ぜひ音源を聴き、心臓がギュッ!!!!とする同じ気持ちを味わって欲しい。

転調は健康に良い。

これで良かったの あなたに会えて ちょっと遠くに来たけれど

ラスサビ

純粋な喜びであれば「良かった あなたに会えて」この部分だけでいいはずだが、
ここで「これで」と自分を納得させていたり
「ちょっと遠くに来たけれど」と、自分で決めたことではあるものの、やはりずっと心配なまま過ごしていたのではないかと思わせる。

1番・2番のサビではオタク側が受動的だったが、
ラスサビでは1番と同じようなフレーズを使われつつも、1番とは対照的な単語が使用されている箇所がある。
その部分からはなんとなくではあるが、自分たちはずっと大人になれなくて(ならなくて)、今後どうなるかなんてわからないから、アイドルが会いにきた今この瞬間に会いにきてねという共依存の意味に受け取れた。

まとめ

『お邪魔しま stay me』は
"アイドル"というファンタジーと、
"1人の人間"としての現実的な心境
アイドルとオタクとの関係性・距離感
それらのバランスがすごく絶妙な歌なのではないかなと思った。

直接的な言葉を書かずとも単語や言い回しで「こういう気持ちなのかな」と思わせる内容で
まきちゃんの言葉選びはもちろん絵恋ちゃんの歌い方も素晴らしかった。
歌詞全てに対してだったり、部分ごとに比べたりしたい気持ちがものすごく強くなる楽曲だったが
全文書くのは流石にあかんので、ぜひ音源を買って聴いてもらいたい。

さいごに

作詞 服部真希ちゃん

大阪のアイドルグループ くぴぽ のプロデューサー兼メンバーであるまきちゃん。

私は最近、くぴぽのライブに行くと思わずメンバー全員と話したくなる。メンバー全員のことが大好きだ。
でも私は服部真希という人物を詳しく知っているわけでも、深く理解しているわけでもないと思う。
ただ、トークイベントやツイキャスでの話の節々に「まきちゃんは、まきちゃんが思い描く“アイドル像”がはっきりしているのだろうな」と思うことがよくあった。

例えば「自分はこういう曲が好きだけど、アイドルがこういう曲を歌うのは違うよね」という話をしていたり、アイドルが酒・タバコを嗜むのをオープンにすることに対して自分の考えを持っていたり。

また、私が見えている部分のみで分かったような気になって書くが、
まきちゃんと絵恋ちゃんは似ているなあと感じることが多々ある。
人の気持ちに響く言葉が書けるところ、曲を作れるところ、笑いに真剣なところ、音楽が好きなところ、こだわりが強いところ、コンセプトを大切にするところ、オタク/お客さん想いなところ、そして、生きるのが不器用なところ。
そんなまきちゃんの書いた歌詞を絵恋ちゃんが歌う。愛しい2人のコラボ、こんなに嬉しいことはない。
いつも上手く気持ちを言語化できず(このnoteもそうやね)直接伝えられないままだが、心底嬉しいのだ。

これから何度も聴いて、もっとこの曲を大好きになっていきたいし
今後もし曲解説などのイベントや配信、文章を読む機会があれば、より理解を深めたいし
それこそ人によっても感じることが違うだろうから、色んな解釈や感想を見ていくのが楽しみだ。
(私はライナーノーツ大好きおばさんである)

歌ってくれた絵恋ちゃん、ありがとう
歌詞を書いてくれたまきちゃん、ありがとう
かわいいメロディーを書いてくれたゆうさん、ありがとう
キラキラ素敵な編曲をしてくれた音楽かいとさん、ありがとう