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2020年春に12年目となる1つの先進医療が終焉を迎えた。それは多焦点眼内レンズを用いた白内障手術である。先進医療制度により、多焦点眼内レンズが日本国内に広く普及したことは事実であろう。近年では年間約1万4000件の当該手術が行われている。

多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術(白内障手術に限る)は、2008年に認可された先進医療である。第2項先進医療【先進医療A】(29種類)の14項に該当する。この先進医療の件数と費用は、先進医療の件数の9割、その総額の半額超を占めている。当該先進医療技術の総額は平成29年6月30日時点で8,388,800,529円となっている。

多焦点眼内レンズは、無水晶体眼の視力補正のために水晶体の代用として眼球後房に挿入される後房レンズである点では、従来の単焦点眼内レンズと変わりはない。しかし、単焦点眼内レンズの焦点は遠方又は近方のひとつであるのに対し、多焦点眼内レンズはその多焦点機構により遠方及び近方の視力回復が可能となり、これに伴い眼鏡依存度が軽減される。術式は、従来の眼内レンズと同様に、現在主流である小切開創から行う超音波水晶体乳化吸引術で行う。

多焦点眼内レンズには、遠近の2焦点レンズと、遠方、中間、近方の3つの距離に焦点がある3焦点レンズ(トリフォーカルレンズ)がある。後者は、2019年に米国アルコン社から発売、初めて日本の国内承認を取得したパンオプティクス(PanOptics)がある。

多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術が先進医療から外れた後の眼科クリニックの対応としては次のような戦略が考えられるであろう。この先進医療技術を今後も全額自費診療として継続して行き、3焦点レンズを含め多焦点眼内レンズのバリエーションを増やして行くことであろう。もちろん時宜に応じた設備投資も必要となるだろう。

さて、2020年4月から選定療養制度が施行され、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術が行えるようになりました。選定療養とは、追加費用を負担することで保険適用外の治療を、保険適用の治療と併せて受けることができる医療保険制度の1つです。

保険診療との併用が認められている療養は、①評価療養、②患者申出療養、③選定療養があります。

保険適用と保険適用外の治療を併せて行う混合診療は原則禁止とされてきたことから、先進医療では、費用の全額が自費負担となっていました。先進医療特約付の生命保険に加入している被保険者は、保険会社から給付金を受け支払っていました。一方、選定療養では、白内障手術自体は従来どおり保険適用で、多焦点眼内レンズを選択することで増える費用についてのみ自費支払となります。

多焦点眼内レンズに係る選定療養


(参考)
眼科先進医療研究会(Advanced Ophthalmological Medical management Society)



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