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慢性肝炎とは、肝臓の持続性の炎症が6ヶ月以上続く病態を言います。その際、脂肪肝、肝硬変、原発性胆汁性肝硬変や原発性硬化性胆管炎などを除外します。日本では70%強がC型肝炎ウイルス(HCV)、約20%がB型肝炎ウイルス(HBV)によるものと言われています。

B型・C型ともに慢性化後、肝炎の炎症状態が継続すれば、徐々に線維化が進み肝硬変へ移行します。線維化の進行により肝機能が低下し肝不全に至ります。また、細胞分裂を繰り返すことで発癌のリスクが高まります。トランスアミナーゼの上昇が6ヶ月以上継続し、ALT(GPT)がAST(GOT)がより高値になります。

肝生検にて門脈域の線維性拡大、小円形細胞浸潤がみられ、門脈域辺縁に限界板の破壊(piecemeal necrosis)という肝細胞の変性・壊死がおこりグリソン鞘と門脈域の境界が壊れた状態になった場合に慢性肝炎と診断します。ウイルス学的には、HCV-RNA(+)であれば、C型慢性肝炎と診断されます。

従来、C型肝炎ウイルスの治療は、インターフェロン(IFN)製剤、リバビリン(コぺガス、レベトール)の併用療法が推奨されてきました。しかし近年、直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)の使用が主流となってきています。これは、IFNを必要としない治療法で、持続的ウイルス陰性化率(SVR)を向上させています。DAAには、ダクラタスビル(商品名ダクルインザ錠60mg)とアスナプレビル(商品名スンベプラC100mg)の併用、レジパスビル・ソホスブビル配合製剤(商品名ハーボニー配合錠)などがあります。

HCV感染者は、世界で1億7000万人、日本では150万~200万人と推定され、このうち70%がジェノタイプ1とされています。このジェノタイプ1に上記のDDAが特に有効であることが知られています。さらに2016年11月18日に抗ウイルス薬エルバスビル(商品名エレルサ錠50mg)、グラゾプレビル(グラジナ錠50mg)の2剤が薬価収載と同時に発売されました。適応は「セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」です。この2剤の抗ウイルス作用は、HCVの複製や細胞内シグナル伝達経路を調節する蛋白質を阻害します。

さて、C型肝炎患者がDAAによる多剤併用療法の結果として12ヶ月以上SVRを維持できているとすると、生命保険会社の新契約の引受査定はどのように変わるでしょうか。実際、大半の臨床試験がDAAによる多剤併用療法の有効性を示唆しています。たとえば、ジェノタイプ1のC型慢性肝炎患者を対象としたエルバスビルとグラゾプレビルの12週併用療法のSVRは高く、国内第3相臨床試験では96.5~97.1%と報告されています。米国でも同様の結果報告があります。

新契約の引受査定は、おそらくHCVに対するDAA治療を受けた生命保険申込者をほぼ標準体での引受可能となるでしょう。しかし鍵となる要因は、基礎疾患となる肝臓病変の広がりです。肝硬変治療中の患者であれば、なおさら大きな関心事です。というのも、たとえ肝炎ウイルスが存在しなくても、肝硬変は肝細胞癌発症のリスクとなるからです。

最大の制約因子は、DAAの膨大な費用です。たとえば、2015年9月に発売されたC型肝炎治療薬ハーボニー配合錠は、当初1錠約8万円と高額だったことから、国民医療費を圧迫すると批判されました。このため、年間売上1000億円超となる薬価を大幅に引き下げる厚生労働省の特例対象となり、16年4月から、5万4796円になった経緯があります。それでも依然として高額な薬剤であることには変わりはないでしょう。

さらには、この高額な薬剤の偽造品も出回った。2017年1月17日に厚生労働省は、C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が奈良県内の薬局チェーンで発見されたと発表しました。これもハーボニー配合錠が高額ゆえに一儲けしようとした悪い奴らがいるということでしょう。食品偽装ならぬ薬剤偽装です。

ハーボニー配合錠を製造・販売するギリアド社(GILEAD)も、テレビCMで「C型肝炎のない明日へ」と題して最短12週間で飲み薬のみの治療により治癒を目指せると喧伝。過日、新契約の告知書で、「C型肝炎 4週間の服薬治療で完治」という告知を見ました。早ければ4週間でHCV-RNAが陰性つまりウイルスが検出できなくなるようです。

HCV遺伝子別12カ月SVR

したがって現在HCV-RNA(-)で肝機能も基準値以内であったとしても、肝硬変の有無が肝癌発生リスクを左右する大きな予後因子であることには変わりはないでしょう。慢性C型肝炎の罹患期間を考慮すべきことは言うまでもないようですね。




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