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noteスペシャル!藤川ヒロシ、探検隊!衝撃!グンマー大森林の奥深くに幻の種族バンブーエルフが生き残っていた!

 グンマー自治区、東京の北西に位置し、193万人が住む。今だ原始の自然が残り、科学文明を拒む少数民族が多数存在する日本列島最後のフロンティアである。温泉地で有名であり、自治内外の多数の観光客が集まるクサーツ町は外の文化と中の文化が混じり合い、日本人に馴染みやすくも日本にないオリエンタルな雰囲気を持つ。
 今回探検隊には一通の写真が届いた。そこには絶滅したとされた種族バンブーエルフと思われる姿が映っていたのだ。
 バンブーエルフとは遥か昔から竹林に住み、タケノコを主食とし、竹を利用して生きてきた種族である。長命種であり、竹取物語はバンブーエルフを元にしたと言われている。しかし数々の文化的影響を日本人に与えながらもある時期から彼らの姿は見えなくなり絶滅したと思われていた。
 我々探検隊はバンブーエルフの保護のため、この写真を撮ったクサーツ町に滞在する写真家ターカハッシを尋ねに行くのだった

 我々はターカハッシの滞在する宿ニーチシンに早速向かった。ニーチシンは300年以上続くクサーツ町の中でも歴史ある宿の一つである。我々は彼が待つ部屋に上がった。

「これは一体どうやって撮ったんだ」

 さっそく隊長は逆光で輪郭だけ捉えた写真について切り込んだ。

「これはグンマー大森林に鳥を撮影しに行った時のことです」

 彼の話はこうだ。彼は鳥を追いかけ撮影に夢中になってると森で遭難してしまったのだ。そうして彷徨っているうちに見慣れぬ竹林に入ってしまった。そこで何者かに襲われ、目覚めると森の外にいた。襲われた瞬間とった写真がコレなのだという。逆光により顔や姿の詳細はわからない。だがバンブーエルフの特徴といわれる尖った耳がそこにハッキリ写っていたのだ!

 我々はさっそく彼が撮影の拠点に使っていた村へ向かうことにした。北へ300キロ、悪路をジープで走りそこから船で川を下る。クサーツの街を出ると科学の文明はなくなり、自然の驚異が支配する未開の荒野であった。道中灼熱の太陽が照り付け、車に乗っているだけでも隊員の体力を蝕む。川に辿り着けど、小舟には乗せられる荷物も隊員もだいぶ制限された。我々は最小限の隊員と荷物で村へいくことを余儀なくされたのだった。

 船は不気味に揺れ、周りを見渡すとワニやピラニアが我々が船から落ちてこないかと口を開けて待つ。
 隊員たちの顔は明らかに曇っていた。

「ジャングルは色々な生き物がいるな」

 だが隊長は涼し気に風景を楽しむ。
 過酷な環境でも楽しみを見出す。それが探検隊に必要なことなのだ。そう受け取った隊員たちは見えた動植物に指をさし、それぞれ会話を膨らませるのだった。

 船を降り、道なりに二時間歩くとついに村が見えた。我々はターカハッシが滞在していたという村長の家に向かうのであった。
 村長の家は見慣れぬ竹細工が並び、ほかの家とは違う格式の高さを思わせる。

「村長、この写真に写るものを知っていますか?」

 隊長は単刀直入に写真を見せた。

「コレについて語ることはない」

 いったいどういうことであろうか!?村長は口を閉ざし、我々を追い出してしまった。
 今回の探検はここで終わってしまうのか!?隊長は考え込み、ふと村の地面にある穴を指さした。

「チャン、そこの穴を調べてくれないか?」

 蛇使いのチャンが腕を穴に入れた。チャンはタイの随一の蛇使いである。タイで放送された探検隊を見て、感動し我々に志願してきたのだ。彼に指示したということはこの穴の正体は!

 手を出すとそこにいたものは!緑色の蛇!バンブーコブラである!
 竹林を住処にするバンブーコブラが何故ここに!?チャンは袋に慎重にバンブーコブラをいれる。
 今は首を掴んでいて咬まれる心配はない。だが手を離した瞬間に咬まれる危険性があるのだ。熟練の蛇使いも咬まれるときは咬まれる。
 皆が見守る中、チャンは手を素早く離し袋を閉じた。 

「みんな、穴のコブラを取れ!」

 隊長の指示が飛ぶ。その意図は定かではない。だがチャンは素早く蛇取り用のフックのついた棒を隊員たちに渡し、コブラ捕獲作戦を開始した。
 いたるところにある穴。元はネズミが作ったものであろうか。ネズミを追って蛇が穴に入り、そのまま住処にする。そうして村中にコブラが住み着いたのだろう。
 コブラを取る様子を村人たちはじっと見ている。隊員たちは見守られながら一匹一匹と確実にコブラを取っていく。そのうちコブラ取りに村人たちも加わった。コブラの被害は村中に広がっており、村を離れる者が出てくるほどの問題になっていたのだ。
 村人と協力してコブラを取っていたその時である。

「うわぁ!」

 隊員の一人が叫ぶ!コブラに噛まれたのだ!藤川隊長は噛まれた隊員に早急に駆け寄り、傷口を確かめる!

「血清、持ってこい!」

 隊長の怒号が飛ぶ!毒が全身に回れば命はない!一刻を争う状況である!少しでも毒を遅らせるため隊長は傷口から毒を吸い出そうと試みる!
 毒を吸い出してる内に血清が届いた。隊長は慎重に隊員の腕に注射し、やがて村長の家へと運ばれていった。
 チャン曰く、牙は深く刺さってないため命に問題ないという。しかし藤川隊長は苦しむ隊員を寝ずにずっと看病していた。

 次の日、咬まれた隊員は元気になっていた。隊長の適切な対応と看病のおかげである。我々探検隊は今後の調査方針を決めるための会議を開く。すると村長が現れたのである。

「まずアナタたちにお礼を言いたい。命を省みずコブラを駆除してくれた。いくら感謝しても感謝しきれない。そして藤川隊長、アナタの誠実さに心を打たれた。アナタたちならこの村の秘密について教えても良いと思う」

 我々探検隊は再び村長の家に訪れた。そこにある竹細工に指をさす。

「これはバンブーエルフから賜ったものだ」

 衝撃の事実である!村長がいうには、この村とバンブーエルフに交流があるのだ。彼らは時折現れ、ここで獲れた作物と彼らのタケノコや竹細工と交換していくという。だが彼らはいつ現れるか、どこから来ているのかは一切わからない。そして村長は古びた屏風を見せた。
 それはかの有名な長篠の戦の絵である!武田軍を織田・徳川軍が破った戦いであり、武田の騎馬軍団を抑えた馬防柵が有名である。しかし我々のよく知る絵と似ているが違う部分が一点。そこには竹で出来た馬防柵を作る耳の長い人が描かれていた。バンブーエルフのように見えるが、これは一体どういうことなのか!?村長もこの意味はわからず、ただコレは真実であるから失ってはならぬと代々受け継がれていったという。

 我々は再び会議に戻り一つの答えを出した。
 バンブーエルフの住処はわからない。だが彼らが竹林に住んでるのは間違いない。そして竹林に生息しているはずのバンブーコブラがここにいるということは、この近くに竹林があるのだ。我々はドローンを飛ばし、空から竹林を探すことにした。

 ドローンは上空500mを飛び、大森林を見下ろす。グンマー大森林はアマゾン次ぐ森林地帯として知られ、そこには果てしない緑が広がっていた。ここにならどんな生物でもいるのではないかと想像を掻き立てる。

「おい、アレを見ろ」

 ドローン画面を見ていた隊長が何かに気付いた。

「竹じゃないか?アレは」

 広葉樹が広がる大森林に突如として現れた竹林地帯、ここがバンブーエルフの住処ではないか?ドローンを竹林に向かわせた。だがその時である!

「なんだアレは!?」

 動く竹である!いやよく見ると竹の先端に人らしきものが乗っている!巨大竹馬である!ドローンは巨大竹馬に徐々に近づき正体を探りにかかった。だが!

「映像が!」
「どうした!?なにがあった!?」

 突如ドローンからの映像が途絶える。隊長は途絶える瞬間の映像を出すことを指示した。そこに映っていたのは?

「矢か?」

 巨大竹馬を操る人物が何かを取り出し構えた。そして映像が乱れた。その瞬間をコマ送りで再生すると矢らしきものが!これは明らかな敵意である!今回の探検はバンブーエルフの保護であるが、それが困難であることを我々に知らせるには十分であった。

「話し合ってはじめてわかることもある。みんな!恐れるな!」

 隊長の檄が飛ぶ!不安な顔をしている隊員たちから恐れが消えた。まず面と向かい合ってみなくてはわからない。今までの冒険もそうであった。未知のものたちと出会ってみて、初めてどのようなものか分かったのだ。バンブーエルフと分かり合えるかどうか、その時が来るまでわからない。

 探検隊はドローンのGPSの記録から竹林の場所を割り出し、さっそく竹林に向かった。竹林を前にし、隊員たちはグンマー大森林とは違う雰囲気を感じ取りにわかに緊張していた。だが恐れずに歩き出した。その時である!

「待て!」

 隊長が叫ぶ。何があったのか!

「そのまま動くなよ」

 隊長は慎重に隊員の足元に近づく。

「見ろ、鳴子だ」

 そこには目視しづらい細い糸があった。そして糸の先を見ると竹細工が括りつけてある。隊長は糸をゆっくりと切り落とした。鳴子は音を立てずに地面へと落ちる。だがしかし!

「うわぁ!」

 隊員目掛け矢が飛んできたのである!糸を切ると矢が飛ぶ、隊長も気づけぬ二重の罠であった。矢は幸い足元に刺さり狙いが外れた。
 バンブーエルフは明らかに我々を拒んでいる。そして今の叫び声はバンブーエルフまで届いたのであろうか?
 更なる妨害があるかもしれない。隊員たちに不安がよぎったのであった。

 獣道を歩き続け、一時間。予想された妨害はなく我々は調査を続けていた。

「待て」

 突如足を止める藤川隊長、いったい何があったというのか!?

「クサーツと同じにおいがする」

 そういうと隊長は獣道を外れ、竹藪をかき分け、においの方向へと歩き出した。果たしてその先には何があるのか?隊員たちは期待と恐怖がいりまじる心情の中歩き続けた。

「やはりな」

 なんということだろうか!湖に見間違えるような巨大天然温泉である。温泉で有名なグンマーではこういった天然温泉があちこちに点在するのだ。我々探検隊は温泉へと足を踏み入れようとしたそのときである!

「かがめ!」

 隊長の突然の命令!皆かがみ何があったのか心配そうに隊長をみつめる。

「あそこだ」

 隊長が指さす方向にカメラを向けるとなんと!胸の豊満な女性と平坦な女性が温泉につかっているではないか!?もしかするとバンブーエルフかもしれない。われわれは慎重に様子を見る。
 二人の女性は何か雑談をしているようだ。そして平坦な女性が豊満な胸を掴んだ!豊満女性も平坦な胸に掴み、互いにもみ合っている!一体何が起こっているのか!その様子をさらに詳しく見ようと近づいたそのときである!

「タケヤブヤケタ!タケヤブヤケタ!」

 平坦な女性がこちらに指をさし呪詛のような言葉を叫ぶ!気づかれてしまった!こちらが引き留めるまもなく二人は女性とは思えぬ身のこなしで森の中へ消えていった。
 果たして二人はバンブーエルフだったのだろうか?そして言葉の意味とは?何もかもわからない、だが我々は未知の領域に確実に近づいているのだ!

 温泉から三時間、バンブーエルフの痕跡は見つけられず探検隊の疲労もピークに達しようとしていた。そんな時、周りに竹がない空間が現れた。竹がそこかしこに生い茂ってる中ここだけ一切竹がない。これは明らかに人為的なものに違いない。
 罠がないか。我々は足元に注意しながら入念に調査する。その時である!

「みんな下がれ!散れ!」

 隊長の怒号がこだまする。なんと前方から大量の竹が転がってきてるのである!隊員は一斉に走りだす!
 竹があるところまで退避し、大量の転がった竹は、それらに阻まれ止まった。隊長は転がった竹を見る。

「かなり鋭いぞ」

 竹の断面は鋭利なもので一刀されたようである。これはバンブーエルフが竹のような硬いものでも簡単に切れることを示している。もしこれで斬られれば人など真っ二つであろう。

「あそこに人がいるぞ!」

 隊員の一人が叫んだ!竹が転がってきた先に人影があったのである。それに気づいた隊員は走り出す!

「待て!危険だ!」

 隊長が引き留めるが、すでに隊員は止められないほど先に進んでいた!

「うわぁ!」
「どうした!」

 隊長も他の隊員たちも走りだす!そこにいたのは!

「パンダか!?」

 そこには二足立ち威嚇するパンダと腰を抜かした隊員がいた!
 パンダは中国の生き物である。しかしここはグンマー大森林にある竹林、何が存在しても不思議ではない。パンダは竹を主食とする。だが熊としての闘争本能を持つ危険生物なのだ!

「こっちだ!」

 隊長は大声を上げパンダの気を反らす。その間に他の隊員が助けに向かった。

「さぁこいさぁこい」

 隊長は腰につけていた、たいまつを取り出し火をつけた。パンダは火を恐れて前に進めない!

「どうした?来ないのか?」

 たいまつを徐々にパンダに近づけ逆に威嚇する!その様子を隊員たちは離れた所で静かに見守っていた。

「ハァ!」

 踏み込む隊長!たいまつがパンダの顔を焼く!それに驚いたパンダは踵を返し竹林の中に消えていった。
 ひとまず危機は去った。安堵する隊員たち。だが隊長はすでに次の危機を察していた!

「固まれ!」

 一斉に隊長の元に集まる隊員たち。何事かと周りを見渡すとそこには弓を構えるバンブーエルフたちがいた!我々は囲まれていたのだ!

 一発触発の雰囲気の中、隊長は冷静に周りの様子を見る。矢を放たれては一たまりもないだろう。にらみ合いが続く。だが一人の老人が歩み出た。

「一人でパンダに打ち勝ったもの。それを勇者と称えるのがわれらが習わし。そのものよ前に出よ」

 隊長が構えを解き一歩前に出た。

「そなたはなぜここに来た?何を望む」
「危険な密林からアナタたちを保護したくやってきました」

隊長は相手の目をハッキリと見つめ返事をした。

「我々にソレは必要ない。いや無理なことなのだ」

 老人はバンブーエルフの歴史を静かに語った。

 かつてバンブーエルフは日本列島中に繁栄し、竹林で静かに暮らしていた。
 だが戦国時代の波がバンブーエルフたちも飲み込んでいく。バンブーエルフの一部が戦国武将として名を上げたのだ。その名は竹田、現代では武田信玄で有名な武田家である。
 バンブーエルフたちは竹林を出て戦争をする武田家を良しとしなかった。故に竹林に残ったバンブーエルフたちは信長の武田討伐に手を貸したのだ。武田家を滅ぼしバンブーエルフたちは再び歴史の闇に消えた。
 だが天下統一を成し遂げた豊臣秀吉はバンブーエルフの力を恐れた。そして日本中の竹林が焼かれた。焼け竹林を前にしバンブーエルフはいつまでも「タケヤブヤケタ」とつぶやいた。やがてバンブーエルフたちは豊臣の目が届かないグンマーの森林に移り、そこで再び竹を植え、外界との関りを最小限にし、村を作ったのだ。
 人間にとって豊臣秀吉の竹林焼きは大昔の話だが、長命種にとっては祖父が体験した話なのだ。未だに人に会ったら「タケヤブヤケタ」と呪えと言われ育つ家もある。バンブーエルフと人との間の溝は限りなく深いのだ

 隊長は話をただひたすら聞いていた。そして口を開けた。

「みんな撤収だ!」

 隊長はバンブーエルフ保護ミッションの取りやめを決めたのだ。我々は竹林を出て村に戻り、そこからヘリで帰ることにした。

 かくしてバンブーエルフ保護のミッションは失敗に終わった。だがこれで良かったのだろう。人とバンブーエルフの溝は我々が思う以上に深いのだ。だいいち人間同士ですら差別し合い分かりあうことができない。 
 そんな我々が他種族とわかりあおうなど、おこがましいことなのだろう。だが藤川隊長は勇者の証としてもらった竹光をヘリでいつまでも見つめていた。 
 今の我々で無理であっても未来の人々が無理かどうかはわからない。子の世代か孫の世代か、はたまた遥か先か。だが時代は確実にやってくる。いつかの日のために我々探検隊は世界の秘密を一つでも多く解き明かし、明るい未来を創っていかなければならないのだ。隊長の瞳はそう物語っていた。

【完】


バンブーエルフって?

探検隊って?





さぽーとすると映画館にいくかいすうが増えます