ダンジョン素潜り師 全裸のゼンジ
どこまでも通路が伸びる赤い迷宮。地面が光り、闇の中で焚火をしているような空間であった。短剣を持った骸骨はただまっすぐに通路を歩き、曲がり角へ当たれは戻る。ただそれを繰り返し、また曲がり角へ来た。
「ソイッ!」
突如降ってきた全裸の男の肘に骸骨の頭を砕く。
「見たか!これぞ現地調達!」
男は骸骨の短剣を奪い掲げた。
「短剣より服はないですか、ゼンジさん。見苦しいのですが」
ゼンジの頭の中に声が響いた。指で頭を叩きながらゼンジはいった。
「ララくん、君は私と視界を共有しているのだろう?下は見ないようにするから耐えてくれ。それに君は監視役だ。仕事だと思ってもし見えても諦めてほしい」
「私の役目は定期的な報告で監視ではありません。上もアナタがおかしいとわかってますが実力は信頼してます。それよりその短剣大丈夫ですか?このダンジョンは勇者と魔王の時代のものでしょう?100年以上前では?」
「君はダンジョンについて何も知らないね。ダンジョンの時間は独立している。たとえ外が1000年経とうと中の時間に影響はない。ただ管理されなくなったダンジョンは徐々に壊れていく。私が全裸なのはそのせいだろう。普通持ち込みを禁止する形でも最低限の衣服は残す」
「心配になる話ですね。予想外のことがありそうですが」
「それも楽しみの一つだよ。ただ異常ダンジョンはやがて外にも悪影響をもたらす。そうなる前に機能を停止させなければ」
言い終えるとゼンジは動きを止め、耳を地面に当てた。
「どうしたんです?」
「音が向かってくる、4つの足音、2人か」
壁の角に手を当てよじ登った。
「よく出来ますね、それ」
「壁さえ滑らなきゃ意外とできるよ」
ドン、ドン、大きな音が近づいてくる。
「なんですかアレ!?やばくないですか!?」
「やばいね。思ったよりガタがきてるか」
ゼンジの目線の先には、硬い鱗を纏った四つん這いのドラゴンがいた。
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