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【珍騒動】シンガポールの蟹料理高し


1. シンガポールの日本人ツーリスト蟹事件とは?

2023年夏、事実上のコロナ収束となり日本入国へのハードルが撤回され、日本国民の観光大ラッシュ、そして外国人からの観光大ラッシュにおけるオーバーツーリズム状態の中、その事件は起きた。話によると8月19日、まさにお盆休みの最中。

家族、友人たちと観光ツアーの後に訪れた、ちょっぴしファンシーな海鮮レストランでの話。ウェイターにおすすめ料理として案内された料理はアラスカンキングクラブ。シーフードが有名な海鮮料理屋だけに蟹の種類のラインナップもすごい。

第一報はシンガポールをベースにするアジア情報を発信するニュース発信サイトであるAsian Oneから発信される。

値段が時価だというが、金額を聞くと$30シンガポールドルと説明されたそうだ。日本円では約3300円だろう。そして会計時の値段に驚愕する。$30とは1匹の値段ではなく100gあたりの値段だった。食べられるわけのない大量の蟹を出てきて残してしまったという話だった。(※1後に日本人観光客側の「食べ残した」という主張は虚偽であると店側が証拠として監視カメラ写真を公開。)

その時出されたアラスカンキングクラブは1匹7.7パウンド(大体3492g)。蟹の総額の値段は$938シンガポールドルとなった。約10万円の蟹というわけだ。

ここからがこの事件の騒動が世界中に知れ渡ることになる。その金額に納得行かなかった日本人観光客はウェイターに警察を呼ぶとレストランにて騒動を起こす。すると店側も警察に全面協力をする。ん?

この珍騒動をおかしく紹介したNY PostはCrabby Touristというタイトルをつけている。Crabbyとは、怒りっぽい等の意味があり、なんというか蟹事件と上手にかけられている。

しかし、その後の第二報(※1)でレストラン側から事実と激しく異なる事から大いなる遺憾の念が発された。真実とは一体?

2.レストラン側の主張

記事では'Being charged'という表現も使っている。約10万円の海鮮料理を請求された観光客が警察を呼ぶという話だ。

そもそもの話になるが、Crab(蟹)の値段はすべて100g単位であり、もちろんの事だが店側は客に繰り返し説明していると主張している。むしろ間違いを未然に防ぐために念のためスタッフはアラスカンキングクラブまるごと持ってその大きさを見せているそうだ。

“To prevent any miscommunication, the staff even brought the whole Alaskan King crab to the table before preparation,” they said.

実際にレストランのメニューを見ると以下のように記載されている。

Scotland Snow Crab / $26.80 每100克 PER 100G
Alaskan King Crab / Seasonal Price (時価)
Mud Crab / $10.80 每100克 PER 100G
Dungeness Crab / $10.80 每100克 PER 100G

中国語で每は「あたり」克は 「グラム」を意味する。
英語でPerと100G とも記載されている。

これを見るだけでも1匹あたりの値段ではなく、100グラムあたりの値段である事が明白である。もちろんおすすめ商品として紹介されたかもしれないが大きな蟹の値段が1匹3000円くらいだと聞いたら、耳を疑い念のためメニューで値段を確認するだろう。

海鮮好きの人なら周知の事だが蟹は鮮度が命である。生きている蟹を見せているのだから、当然の事ながらこれから新鮮な蟹を提供するという店側の説明も受けているはずだ。

改めて、このCrabの料金表を見たら100グラムあたりの値段であるというのは見てとれる。そして100グラム分の蟹では1人前の料理すらできないという事も簡単に想像できるだろう。

3.日本人観光客側の主張

会計時のトラブルによりお店に駆けつけた警察の介入により双方が話し合う事になった。日本人観光客は最初に30ドルだと言われたのだから、こんなに請求するなんてボッタクリだと主張をする。それに対してレストランは他の人も同じ金額を払っていて明確な料金体制である事を見せ、人によって値段が違うわけではない事を証明する。

結果としてたらふくに平らげたアラスカンキングクラブが当然ながら3300円になる訳がない。しかし、その場を丸く収めたい店側としてはOut of Goodwillという「善意の気持ち」として$107.40シンガポールドル(約12000円)の割引を提案して、結果として持ち合わせがなかった今回の騒動の本人である日本人観光客女性(50代)の代わりに友人がクレジットカードで支払いを承諾し店を出たとの事。

何も非がないと主張する店側からすると客から「いちゃもん」をつけられて、何とか最小限の損害(割引)で済ませたというような事故的なものでもあるが、観光客側としては30ドルと言われたのに10万円近くの請求をされた事にはよもや1万円程度の善意割引などでは納得いくものでもなかったようなのだ。

日本帰国後、改めて納得のいかなかった日本人観光客は、このレストランにぼったくり被害にあった事をシンガポール観光局に通達する。そして、その後の展開が全世界での突然のバズりにつながる事になったというわけだ。

4.実際の蟹

その前にまずは実際の蟹がどのようなものなのか確認をしたい。アメリカ西海岸、マイクロソフトやスターバックス、アマゾン等のお膝元であるテック都市シアトルの有名な観光地でありパイクプレイスマーケットでの参考価格が以下である。いつの値段か分からないが、ひとつの参考になるはずだ。

https://pikeplacefish.goldbelly.com/whole-alaskan-king-crab

4.5lbで$800(約12万円)だ。1LBは454Gなので、約2KG。シンガポールのレストランで提供された蟹は3.5KGだったとの事なのでかなりの大きさであり米国の物価であれば、高額になる事が想定される。

世界では一般的にアラスカンキングクラブで名が通っているが日本語ではタラバガニと言った方がわかりやすいかもしれない。蟹の中でも最高級の憧れの蟹だ。

日本のタラバ蟹の値段は見るまでもないだろう。またシンガポールは東南アジア諸国等の発展途上国ではない。日本の地方よりは少なくとも物価が高く、日本の国力の低下とそれにともなる円安の影響でそれは顕著に広がっている。

5.何故、全世界でバズる事になったのか?

第一報はAsian Oneからだった。その後、世界のバズニュースやビジネス経済サイト等に拡散されてしまったが、その後のUpdateを伝えるメディアはほぼ皆無に近い。なので、第一報がそのまま広がっているのが現状だ。その中、最初に報道した元となったAsian Oneはその後の進展として第二報(※1)を更新している。

ここでは名前は控えるが、本名かどうかわからない日本人女性の名前が堂々と全てのメディアにおいて報じられている。

何故かというとこの「珍騒動」自体、日本に帰国した後、この日本人観光客の女性(50代)が、自らシンガポール政府観光局へとオフィシャルにこのレストランを名指しで被害の申し出をしたと語ったそうなのだ。

記事によると会計時にトラブルになった後、1万円程度の割引を受けたがそれでも何かに納得いっていなかったのだろうか?この日本人観光客の日本帰国後の行動により、店側からは解決していた問題だったと思っていたトラブルの種が9月になって再燃したという事だった。

当然ながら店側としては納得いくわけがない。すべての客には正当な金額を請求しており、なおかつ当該の客とは警察沙汰になった末に「割引」までしたのに今度は観光局からの通達として濡れ衣を着せられたわけだからその疑いを晴らすべく全力で対抗措置にでる。

6.レストラン側からの声明

Photo by Joshua Ang

シーフードパラダイスのFacebookページから公的声明が発表され、監視カメラでの様子が出される事になった。

客側からの抗議内容に重大な虚偽があるとして、強い遺憾の念を示した上で日本人観光客側の虚偽部分について説明された。

DeepLの翻訳によるとこうだ。

1.シーフードパラダイスのスタッフは、アラスカ産タラバガニの価格がスコットランド産ズワイガニの価格と同じであると、メニューを指差しながらお客様に2度伝えました。スコットランド産ズワイガニの価格は、メニューに100gあたり$26.80と明記されています。また、アラスカン・キングクラブの総重量は3.5kgであることも告げ、誤認を防ぐため、調理前に生きたアラスカン・キング・クラブを丸ごとテーブルに運んできたほどです。客は生きたタラバガニと一緒に写真を撮ったり、自撮りもしていました。

2.お客様のグループは最初、カニの調理法を2つリクエストしました。スタッフはその日のメニューにあるカニの種類を紹介し、客はアラスカキングクラブを選びました。しかし最終的にレストランは追加料金なしで3種類の調理法でカニを用意しています: チリクラブ、塩漬け卵黄、トリュフ卵白。このため、カニは3つの皿で提供されました。

3.客はほとんどの料理を食べ終え、レストランのマネージャーに料理が美味しかったと言っています。(※1残したというのは虚偽だという店の主張)

4.食事の最後に、客が会計を拒否したため、警察が仲裁に入りました。客の一人が、支払うお金がないと言い、どうしたらいいか尋ねてきましたところレストラン・マネージャーは善意から、107ドル40セント(生きたアラスカ産タラバガニ400グラム相当)の割引を申し出ています。

”レストランとしてては「生きた魚介類は通常1匹丸ごと売られ、提供される」という事を強調して理解を求めています。今回、レストランとしてはお客様に明確に伝えるために最善を尽くし、どんな質問も歓迎します。”

という声明とともに、レストラン運営グループの評判を維持し従業員を守る為にもCCTV(監視カメラ)映像から抜粋した写真を公開せざるを得ないとして今回の声明を終えている。

7.何故、こんな事になってしまったのだろう?

店の声明が本当だとしたら、日本人観光客女性はシンガポール観光局にとんだ虚偽のクレームを入れている事になるのだが、店側も警察側の記録も残っていれば実際には正規の値段であった事がすぐに証明されてしまう。

にも関わらず、シンガポール政府観光局に通達するというい事は、何かが納得がいかなかったのか?はたまた今もボッタクリをされているに信じて疑わなかったのだろうか?一体、何故こんな事になってしまうのだろうか?

単純に間違えてしまった事であれば、その後の「旅行失敗談」として、店側には申し訳ないが帰国後に「失礼な事しちゃったけど割引きあってラッキー」という事で終えてしまっても良いかもしれない。

そうでもなく、真っ正面から抗議に出た。しかし、そこで虚偽の抗議である事が白日にさらされた。そもそも、我々第三者には公開された映像の家族が実際の抗議者家族かどうかも分からない。何が本当で何が嘘なのか?

しかし、いずれにせよこの問題は正当な料金を提示していたにも関わらずぼったくりの容疑をかけられ警察を呼ばれ、さらには観光局にまで被害の届け出を出された事から風評被害を受ける事になったと、現状では全面的に観光客側のクラビー(怒りっぽい)態度が問題視されている。

勘違いで怒ってしまったのであれば、どこかのタイミングで事を収束させねばならないがそこは進むのだろうか?

8.グローバル教育と日本人のあり方とは一体

Photo by Ben White

こうなったら匿名&顔出しなしでアベマに出て弁明をするか、もしくは顔出しで正々堂々と謝罪をして一気に有名インフルエンサーの道を駆け上がるか?

迷惑系でいくも良し(良くはないが)だが、謝罪をして正統派として印象を良くする事もできる。人間という生き物の良さや徳というのは、こういった時に自身の非を受け止める事により成長をし、周囲もそれを見守る事により共に成長を促すものであると思う。

それが日本人として一致団結することによってグローバルで戦えるのでなかろうか?世代間でかけ離れる価値観と心が一致する日は来るのだろうか?

現状、日本人観光客女性、はパブリックではアンサーを出していないようだ。もしくは対策中なのかもしれない。

この女性からすると純粋に「本当に蟹がそんなに高いと思わなかった」という事が原因なのかもしれない。間違いであったのでれば、それを認める美徳が日本にはある。そうでなければ、単純な意地悪なのかそれとも国家間にもめ事を起こす工作員なのかという事すら疑われてしまう。ただの世代間による勘違い格差や一定世代の日本人に残るアジア人差別からなのだろうか?

もしかすると、これは日本社会そのものを映し出しているのかもしれない。当然、シンガポール観光局としてはお困りだろう。

シンガポール側としてはどう捉えれば良いのだろうか?

”日本人観光客は言葉もできないし、学もない。早とちりしても間違いを認めず、警察沙汰にして無理やりディスカウントをしてくる。さらには店の評判も観光局に向けて圧力をかけてくる可能性があるので、トラブルを起こさないよう、シンガポール中の各料理店、日本人観光客には丁重に対応してください。”と、こんな風に通達されてしまっては身も蓋もない。

日本としてはこういった事変にひとつひとつアンサーを返していくべきなのか?それとも放置する事によって弁明の機やかつての尊厳を失う事になるのか?どこかのタイミングで日本が攻勢をかける日が再びやってくるのだろうか?

いつか、その日の為に各自日々自らを鍛えあげ、チャンスの波に乗れるよう準備をするのが我々の出来る事なのだろう。

Cover Photo by: Unsplash - Frankie Lopez

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