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ウェアにみる侘び寂び

使っていくことで味が出てくるものこそ愛着がわく。
つまり、その愛着は付き合ってきた月日が長ければ長いほど深くなるのだ。

木や革に汚れや汗が付着して黒ずんでいく様、生地がくたびれてヨレやほころびる様、またそれを磨いたり修復する様すべてに美しいと感じる。
どれだけ着たり使ったりしても新品のように長持ちする・・って、経済的には良いかもしれないけど何とも味気ない。

皆さんにも身近なデニム、ご存知の通りもともとは作業着です。
その用途からも丈夫さが必須であり、縫製も綺麗さではなくしっかりと強いことが問われました。
仕事着ではなく日常着に変わった今でもその存在は高くも低くもない丁度のところにあるから良いのです。
日々、技術の進歩により高性能な素材や付属が開発されています。
伸縮性や耐久性、さまざまな気候に対応し、それに防水や防臭…、仕事をする人には快適なことかと思いますが、日常着としてみれば明らかに美しさを欠いています。
今までも進化した?デニム素材や商品をいくつか目にしてきましたが、新たな機能性やデザインはほとんど受け入れられなかった気がします。
やっぱりデニムはデニムであり、素朴さあってのものなのです。
ワークウェアというものの本質はやっぱり変わらないのだ。

素材が経年変化して行く美しさにはやっぱり魅力を感じるし、その変化は月日を要するという意味では信頼の上になりたっているともいえます。
ハイテクな素材やウェアは機能的で便利かもしれないが、何年経っても無表情なその様は有限である以上は経年劣化でしかない。
木味の出たテーブルや手の油分が染み込んだ革製品が色褪せないのは、流行り廃りを超えた愛着からなのでしょう。

10年程前に手に入れたヴィンテージのシャツ。
ベージュ地にブラウンボタンの組み合わせがとても魅力的です。
70年以上経っているこのシャツは、所々に擦れやほつれ、穴があります。
その一つ一つを単にマイナスと捉えるのか、それとも味と捉えるのか・・。その見方次第で見える世界や様々な可能性が大きく変わってくる気がします。

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