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洋服の一生モノとは

「これは一生モノですよ」
そんな接客文句は誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

わたくしも10代の頃から洋服の接客をしてきましたが、未熟だからこそつい口にしてしまう言葉だったような気もします。
一生モノなんて、そうそうあるものではないのです。
世の中に名品と呼ばれるモノは数あれど、それが全ての人の一生モノになる訳でもありません。

10代でファッションに目覚め、30代までに色んな洋服を着て、40歳を過ぎてからは流行りというよりは自分らしさを考えるようになっていく。
そして、50歳からは着てきた洋服を思い返しながら余裕ある洋服選び。

積み重ねてきた洋服たち・・
「あっ、40手前で買ったあのコート・・」
久々に袖を通してみると意外と新鮮なシルエットだったりする。

そう、もう着ないかと思っていたけど何故か処分出来なかったモノたちの中にこそ一生モノが隠れていたりする。
買ったときは勧められるがままで、正直に良さも今一つわからず、着こなそうとしても自分がどこか追いついていなかったりしてそのまま・・。
それでも処分しなかったのにはきっとそれなりの訳がある。
どこか潜在意識の中でモノとしての愛着があったり、いつか格好良く着たいと思っている証なのかもしれません。

わたしのクローゼットにもそんなモノがいくつかある訳ですが、毎年使っているというよりは何年かの周期で着ているというのが現実かもしれません。

「これ格好良いよな」と時より眺めるくらいでほとんど袖を通していなくても、きっと着たくなる時がくることをどこかで確信している、そんな表現が正しいかもしれない。
それは、与えられた価値観ではなく、あくまで自分自身で見出すもの。

つまり、一生モノはその洋服がどうと言うよりは自分自身のスタンスということ。大げさに言えば洋服に対するポリシーがあるかないかだ。

「これ、着るかなー?」と迷うのではなく、「これ着たいな」と自らが感じることから始まるのです。
何に合わせたら良いかはいつかの自分が教えてくれるはず。
「自分はこれが好き」、このインスピレーションこそが一生モノをつかむ第一歩なのです。

手前味噌ではありますが、自分のデザインするanother 20th centuryもそんな洋服たちの仲間入りをしている。
満足感と共に、明日から生み出す洋服への責任感にも繋がっている。

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