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赤色巨星

生活のややこしい問題に思い悩んでいるとき、死んだ父が夢枕に立ち「サイゾー」のバックナンバーに解決策があるというのだ。「サイゾー」という雑誌は本屋の店先で見かけたことがあり、知ってはいたが、何の興味もなく手に取ったこともない。古本屋の棚から「サイゾー」のバックナンバーを次々引き出して捲ってみるが、それらしき記事には行き当らない。その日、赤色巨星が地球に最接近し、夜になっても町が暗い赤色に染まっていた。シグナルなどの赤色灯のような赤色である群れを成して歩く人々の肩も街路も。屋内も赤に染まっているその廊下を折れ曲がった影を曳いて気落ちした様子で靴先に視線を落としてこちらに向かって進むエフ。すれ違いざまの彼女に声をかけても無視。


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