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山犬

私の部下のRは言動に突拍子のないところがあり、あれは発達障害ではないかなどと言う人もおり、いつの頃からか、少し毛色の変わった者が集団の中にいるとすぐに発達障害だと「診断」するような風潮があり、そんな言葉を聞かされるたびに嫌な気持がしていかがなものかと思うのだが、そのRが最近は家に帰らず職場で寝泊まりしているというので、驚いて理由を尋ねると、彼女はいつも山を越えて通勤しているのだが、その山に大きな犬が何匹も出てこわいので家に帰れないとう話であり、その犬というのが黒板に白墨で塗りつぶしたような白い影で、杉木立の合間を耳の立った犬の影がいくつも行き来するのが見え隠れするのだという。

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