緊急事態宣言19日目-這い寄る混沌(2020/4/27)

AM8:30
いつものように始まったテレワーク。
しかし今日はいつもと違った。

「家族にコロナの陽性反応が出ました」

ああ、遂に来てしまった。

そのご家族とは別居とのことで、当該職員氏(仮にA氏とする)は濃厚接触者との判定は受けていないとのことだったが、A氏の子供さんは濃厚接触者判定を受け、今現在PCR検査の結果待ちという。
ということは、もし子供さんが陽性だったならばA氏はもちろん彼(彼女)の濃厚接触者であろうから、結局はA氏もPCR検査をする流れになるだろう。
この場合、濃厚接触だったかどうかなどと細かく吟味している暇があったら、可能性がある人間全てにとりあえず検査をすればいいのに、ええいまだるっこしい、と苛々するのは、私がその人と同じシフトだったからだ。

とまれ、現状ではまだ何もわからないので対処のしようもない。
職場の取り決めによると、陽性反応者、及び濃厚接触者は上部への報告義務があるが、このような場合には特段決まり事はない。

さてどうする?

結局この報告が上部に入ったのは午後遅くになってからだった。
例によっていつもの決断力なし・統率力なし・情報共有の発想なしのなしなし尽くしのボンクラーズがボンクラをやっていたからなのだが、これでは本当に先が思いやられる。今更だが。

AM9:00

荷物を纏め始める。

A氏とは同シフトだったとはいえ、接触は殆どなかった。
しかし同じ職場内にいて共有物に手を触れていたことを考えると、感染の危険性はないとはいえない。
というわけでホテルや病院に隔離されたケースを想定し、引っ張り出したスーツケースに必要になるであろうあれやこれやを放り込む。
着ていた洋服やパジャマや下着は処分されると聞いたので、ゴムの伸び切ったゆるゆるの服や下着などを用意する。
もちろんこれは過剰反応なのだが、万が一の事態に備えておくにしくはない。

あとは本番(?)が来たら、ポータブルブルーレイプレイヤーとFireTVと水どうDVDと積ん読の本を忍ばせれば完了だ。
何故水どうかといえば、しんどい時に頭からっぽにしてぼーっと見るのにあれほど相応しい映像作品はないと信じるからだ。
事実、水どうをひたすら見て立ち直った鬱サバイバーは多いと聞く。
(出典はこちら。
5人目の旅人たち:「水曜どうでしょう」と藩士コミュニティの研究』)


PM1:00

先週に来ていたメールをもう一度読み直す。
内容は病院からのボランティア募集なのだが、今度はマスク制作の依頼である。
マスク。
ポリ袋防護服であればまだしも(いや、これも常時ではどうかと思うが)、それこそ無菌室で作られるようなレヴェルの「医療器具」を素人が家で作って良いものなのだろうか。
流石に軽々しく合羽がどうのとか仰る某首長などではなく、病院からの要請なのでそう荒唐無稽な話でもないのだろうし作成後のマスクは除菌でもするのであろうが、でもしかし…

材料は不織布なので、所謂サージカルマスクだ。
しかしそこに挟み込むのは美味しいことで有名※なキムタオルなので、その時点でおい大丈夫か感がいや増す。
※連日の実験で頭がおかしくなった理系のみなさんが遂にキムワイプ(タオル)を美味しい美味しいと食べだす、という都市伝説はツイッターなどではすっかりお馴染みである。

そして耳掛け部分は輪ゴム。
本体との接着はホッチキスで行うとのことである。
ホッチキス。
ホッチキスですよ。
あの文房具です。
いやほんとに。
…すみません、無理ですごめんなさい。
なんか心情的に無理ですごめんなさい。
私はおとなしくポリ袋を切り開くに留めておこうと思う。

PM5:00

お仕事終了間際に、またもや病院から通知がやってきた。
ポリ袋防護服は十分な数が用意できたので、現時点で作成しているものをもって一旦受付を終了するそうだ。
数が本当に十分揃ったのか、まっとうな防護服が確保できたのかは知らないが、後者であれば本当によかったと思う。

PM6:30

家の共有スペースにマスクマン登場。
「…てなわけで、当分ご飯は私一人で食べようと思うんだけど」
「どうしてよ」
「言ったじゃん?職場に疑いがある人がいるって…」
「あーもうそんなん今更遅い遅い。感染ってるんならとっくに感染ってるわよ。もう一蓮托生やって」
「…はあ。まあ、そうやね」

高齢の両親への懸念はあるが、確かにもう今更感はある。
夕食を食べつつ、一家罹患した際の話し合いなどを行った。
とは言えども結局は行き当りばったり、成り行き任せなのだが。
そのまま、話は家の権利書はどこにある、とかいう非常にリアリティあるものに移行したので、コロナに罹患しているわけでもないのに(多分)今宵の夕飯の味はよく分からなかった。


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