ミュージカル「SIX」の「No way」を訳してみた(試訳:ご意見ご感想叱咤お待ちしています)

SIX訳出シリーズ第四弾は、ヘンリー八世の最初のお妃、キャサリン・オブ・アラゴンのテーマソング「No way」です。
あえて「ないわー」と軽い感じに訳してみました。

[CATHERINE OF ARAGON]
N-n-n-n-n-n-no way
There's no way
You must agree that baby
In all the time I've been by your side
I've never lost control
No matter how many times I knew you lied
Have my golden rule
Got to keep my cool
Yeah, baby

[キャサリン・オブ・アラゴン]
ないわー
本当にないわー
認めなさいよ、ベイビー※1
いつだってあなたの傍に居たのは私だってことを
あなたが嘘をついたことに何度気づこうとも、私は一度たりとも自制心を失ったことはない
私の金言を守りなさい
そして私を冷静にさせておくことね
ベイビー

※1 最初のお妃、キャサリン・オブ・アラゴンはヘンリーよりも6歳年上。なので「ベイビー」呼ばわりなのだろう。


[ENSEMBLE]
You know she's got to keep her cool

 [アンサンブル]
ご存知の通り、彼女は常に冷静

[CATHERINE OF ARAGON]
And even though you've had your fun
Running around with some pretty young thing
And even though you've had one son
With someone who don't own a wedding ring
No matter what I heard
I didn't say a word
No, baby 

そして、あなたが可愛くて若いお嬢さんたちの周りを飛び回ってお楽しみに耽ろうとも
結婚指輪もしていない誰かさんと息子※2を設けていようとも
あなたについて何を耳にしようとも私は何も言わなかった
何にもね、ベイビー

※2 ヘンリーはキャサリンの侍女、エリザベス・ブラントとの間に婚外子のヘンリー・フィッツロイを設けている(1519年出生)。婚外子のうち唯一認知され、1525年には初代リッチモンド公、サマセット公およびノッティンガム伯に叙爵されている。しかし、庶子のため王位継承権はなかった。

[ENSEMBLE]
You know she never said a word

[アンサンブル]
ご存知の通り、彼女は決して何も言わなかった

[CATHERINE OF ARAGON]
I put up with your sh—
Like every single day
But now it's time to shh
And listen when I say
Woo!

私はあなたのク○ぶり※3に毎日のように耐えてきた
でも今、あなたは黙るときよ
そして私の言うことをお聞きなさい
※3 キャサリン・オブ・アラゴンは王妃に相応しく上品で節度をわきまえた人物(という設定)なので、例え独白の歌の中でもFワードは自粛するのである。

You must think that I'm crazy
You wanna replace me?
Baby, there's n-n-n-n-n-n-no way
If you think for a moment
I'd grant you annulment, just hold up
There's n-n-n-n-n-n-no way

私の気が狂ったって思ってるのね
王妃の座から引きずり下ろしたいの?
ベイビー、「ないわー」
少しでも(冷静に)考え直すんだったら
離婚してやってもいいから、まあちょっとお待ちなさいよ
ほんっと、もう、ないわー!

No way
No way
There's n-n-n-n-n-n-no way

No way
No way
There's n-n-n-n-n-n-no way

There's no way

So you read a Bible verse that I'm cursed
'Cause I was your brothers wife
You say it's a pity cause quoting Leviticus
I'll end up kiddy-less all my life
Well daddy weren't you there
When I gave birth to Mary?

それで、私があなたの兄さん※4の妻だったから呪われてるとかっていう聖書の一節を読んだのね
あなたは、レビ記を引用しつつ※5お前は一生子供は産めないから残念だ、なんて言うのね
へえ、じゃお伺いしますけど、私がメアリー※6を産んだとき、あなたそこにいませんでしたっけ?
ねえ「お父様」?

※4 キャサリンは14歳の時、ヘンリーの兄、アーサーと結婚するも翌年彼は急逝する。その後紆余曲折あって弟ヘンリーと結婚するのだが、彼らの父ヘンリー7世は兄弟の妻との結婚を禁ずる旧約聖書の『レビ記』を理由に反対したという。但し、『申命記』においては最初の婚姻で子を成さなかった場合はレビ記の規定を無視できるとある。

※5 アン・ブーリンと結婚したいヘンリーは今度は『レビ記』を逆手にとり、彼女が兄の嫁であったという事実を以ってキャサリンとの婚約を無効にしようと目論む。
この歌詞でヘンリーが引用したという『レビ記』の一節はこれ。
「人がもし、その兄弟の妻を取るならば、これは汚らわしいことである。彼はその兄弟をはずかしめたのであるから、彼らは子なき者となるであろう」(レビ記20章21節)だからお前は一生石女なんだよ、ということなのだが、残念ながら彼らの間にはメアリー王女が生まれていたので、何をいうとんねん、という口調になっている。

※6 メアリーは勿論ご存知、後のブラッディ・メアリーである。

(spoken) Aww! Hi, baby!

はーい、赤ちゃん!

[ENSEMBLE]

Daughters are so easy to forget

[アンサンブル]

娘たちって簡単に忘れられちゃうのよね

[CATHERINE OF ARAGON]

You're just so full of sh—
Must think that I'm naïve
I won't back down, won't shh
And know I'll never leave

あなたって本当ク○の塊
私のこと世間知らずだって思ってるんでしょ
私は引き下がりも口を噤んだりもしない
絶対あなたの元を去ったりなんかしないから見ててごらんなさい

You must think that I'm crazy
You wanna replace me?
Baby, there's n-n-n-n-n-n-no way
If you thought it'd be funny to
Send me to a nunnery
Honey, there's no way

私の気が狂ったって思ってるのね
王妃の座から引きずり下ろしたいの?
ベイビー、「ないわー」
もしあなたが私の修道院送り※7 を愉快だと思ってるなら
ハニー、ほんっと、もう、ないわー!

※7 事実上の離婚後、キャサリンは何度も修道院に行くよう求められたが、彼女は断固として拒否し、自分こそが正当な女王であると主張した。

No way
No way
There's n-n-n-n-n-n-no way

No way
No way
There's n-n-n-n-n-n-no way

There's no way
Hey!
(Woo!)
(Let's go!)
(Woo!)
(Here we go!)

You've got me down on my knees
Please tell me what you think I've done wrong
Been humble, been loyal, I've tried
To swallow my pride all along
If you can just explain
A single thing I've done to cause you pain, I'll go

あなたは私を跪かせた※8
私のやったこと、何がいけなかったのかをどうぞ教えてちょうだい
私は慎ましく、忠実で、ずっと自分のプライドを抑え込もうとしてきた
もし一つでもあなたを苦しめたという私の行いを説明することができたなら、あなたの元を去ってあげるから

※8 1529年6月21日のこと、ロンドンはブラックフライアーズにおいて、ヘンリーとキャサリン・オブ・アラゴンの婚姻無効に関する教皇使節(トーマス・ウォルシー枢機卿)による裁判が行われた。
陳述の際、キャサリンはヘンリーの前に跪き、いかに自分が良い妻であったか(特に「慎ましく忠実であった」ということを強調して)を縷々と述べたという。
そして全てを語り終えた後、彼女はあなたたちは公平ではない、と言い捨てて法廷の場から走り去ったという。
(彼女の詳しいスピーチの内容はここにあります https://www.theanneboleynfiles.com/21-june-1529-god-commit-cause/ )

因みに、後に英国のカトリック教会離脱、英国国教会の設立にまで至るこの一連の離婚のすったもんだをThe King's great matter(王の偉大なる一大事)と言う。


(spoken) No?

説明できないの?

[sung]
You've got nothing to say
I'm not going away
There's no way

何も言えないんじゃない
そしたら私は立ち去らないわよ
立ち去るわけないじゃない ないわー

You must think that I'm crazy
You wanna replace me?
Baby, there's n-n-n-n-n-n-no way
You made me your wife
So I'll be queen till the end of my life
N-n-n-n-n-n-no way

私の気が狂ったって思ってるのね
王妃の座から引きずり下ろしたいの?
ベイビー、ないったらないわー
あなたが私を妻にしたのよ
だから、私は死ぬまで女王なの

No way
No way

N-n-n-n-nope n-nope n-nope no! (No way)
No! (No way)

There's n-n-n-n-n-n-n-n-n-n-n-n-n-n-no way
There's no way!

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