新クトゥルフ神話TRPGハウスルール「残機制」の紹介

 お久しぶりです。アノマロです。

 先日ツイッターでCoC(クトゥルフ神話TRPG)に残機制を導入していることを話したところ、思わぬ反響があったので、noteでこのハウスルールについて詳しく説明したいと思います。

残機制の目的

 クトゥルフ神話TRPGはとてもプライヤーキャラクター(探索者)が死にやすいデザインのゲームです。
 もちろんシナリオによりますが、特に本国アメリカでChaosium社が公式に刊行しているシナリオは、ゲームの序盤や中盤でも油断をすると一瞬で命を落とすような罠があるものが少なくありません。

 探索者が途中で死んだり永久的狂気になったり(以下、これらをまとめてロストと呼びます)した場合、ゲームの実際としてはデメリットが数多くあります。

・新しい探索者を用意するのに時間がかかる
・愛着のある探索者が死んでプレイヤーのモチベーションが下がる
・急きょ加入した探索者はシナリオとの接点が薄い(導入となるイベントに参加していないので)
・etc…

 これらを個別に解決する方法もあります。NPCを使ってもらうとか、探索者の死を受け入れてもらうために死に際のロールプレイの時間をたくさんとるとか、新しく導入をやるとか……

 しかし、もっと根本的に解決する方法があります。そうです、探索者を殺さなければ死んだときの問題は発生しないのです!

残機制の解説

 残機制と言っても、わたしのハウスルールは探索者が死んだときに新たなクローンが運ばれてくるといったもの(パラノイアのやつ)ではありません。
 探索者が一定回数(例えば5回)までならロストするような状況を回避できるというものを便宜上“残機制”と呼んでいます。
 順にやり方を説明していきます。

①バックストーリーを埋めてもらう

 まず、探索者作成の際にプレイヤーには記入できるすべてのバックストーリーを埋めてもらいましょう。(傷痕や恐怖症は作成時には書きません)

②死や永久的狂気の替りにバックストーリーを歪める

 ダメージロールの結果、探索者がロストするような状況になったときに、替りにバックストーリーの1つを致命的に歪めてください。

 例えばNPCの狂人が38口径リボルバーを探索者にぶっ放し、運悪くロールがイクストリームだったとします。
 貫通によるダメージロールの結果は「15」、探索者の耐久力は「10」。これでは即死です。

 ここで探索者が血を流して絶命する描写をする前に、歪めるバックストーリーを選びましょう。
 例えば探索者の「秘蔵の品」に“恋人にもらった懐中時計”があったとします。これを歪める描写をしましょう。

「探索者は死を覚悟しました。しかし、一向にそれは訪れません。違和感を覚え、自分の胸ポケットを探ると、弾丸を受けて粉々になった懐中時計が見つかりました……」

 このように描写し、バックストーリーの「恋人にもらった懐中時計」の記述をプレイヤーに修正してもらいます。

 永久的狂気になるような正気度喪失の場合も同様です。
 例えば「重要な人々」に“母親”がいるとして、その母親が毎晩探索者の首を絞める悪夢を見ることにしたらどうでしょう。バックストーリーにそう追記し、その替わり正気度を回復させましょう。

③クライマックスではきちんと殺す

 上記のようにしてロストを回避すれば、おおかた同じ探索者でゲームのクライマックスまでプレイすることができるでしょう。
 クライマックスではこのハウスルールを撤廃し、探索者がロストする可能性を復活させます。
 このシーンが終わればエンディングだ、という状況なら新しい探索者を用意する必要はありませんし、死に際の探索者のロールプレイを大いにやってもらうのがいいでしょう。
 探索者を即死させる必要はありません。死は確定しているものの、少し会話ができて別れの言葉を交わす、というのは映画や漫画でよくあるシーンです。

運用上の注意

 ロストを回避する残機制は、探索者の命が軽くなり、ゲームの緊張感を損なう恐れがあります。

 これを避けるため、バックストーリーを歪めるときは致命的な歪め方にしましょう。
 探索者が手足を失い、大事な人やモノへの見方がゆがんだものになってゆくようにすれば、後戻りできない緊張感が持続します。

 場合によっては探索者が死ぬよりも憐れな状態でゲームを続けていくことになるでしょう。

実際の運用例:ニャルラトテップの仮面

 「ニャルラトテップの仮面」は6つの国を回って巨大な陰謀に立ち向かうキャンペーンシナリオですが、理不尽で致命的な罠が非常に多く、油断すれば何度もロストしてしまいます。

 このシナリオを現在プレイ中ですが、残機制を採用することによって、キーパーであるわたしは一切ちゅうちょすることなくシナリオ通りに探索者を罠にはめることができています。

 別のグループではハウスルールを採用することなく通常通りにプレイしていましたが、そこでわたしは罠を警告するために再三ロールを促したり、敵の狡猾さを軽減させたりしていました。そうしないと理不尽なロストが多すぎてプレイヤーのモチベーションがなくなってしまうからです。

 しかしこのハウスルールを採用してからは、シナリオの魅力的な罠をそのまま描写しつつ、探索者の冒険も継続させることができます。

終わりに:ハウスルールは全員の了解を取りましょう

 ということで、わたしのハウスルールとしての残機制をご紹介しました。
 よろしければ、皆さんも参考にしてみてください。もちろん、ご自分のグループに合うように、必要に応じて改変しましょう。

 ただし、これは他のハウスルールにも言えることなのですが、採用する場合は参加者の了解を取りましょう。

 残機制の場合、どのように運用に気を付けたとしても、探索者の死をなかったことにするハウスルールであることに変わりありません。そういった遊び方を絶対に受け入れられないという人もいるはずです。

 また、慎重に慎重を重ねた探索で罠を未然に回避することが好きなプレイヤーは、同卓プレイヤーの慎重さが損なわれかねないこのルールをよく思わないかもしれません。

 なるべくプレイヤーにあなたの意図を説明し、ハウスルールを受け入れてもらうようにした方がいいでしょう。そして、それが無理なら採用を見送りましょう。
 プレイヤーにこのハウスルールを説明するとき、新クトゥルフ神話ルールブックのP210「探索者の死」を引用するのがお勧めです。

 “だが探索者の死は、新しい探索者が創造され、物語にデビューするまで、ゲームからプレイヤーを除外してしまう。他に面白い選択肢があるのなら、すぐに死を与えようとしてはいけない。全員がゲームを楽しい経験になるよう努力することは、リアリティーの奴隷になるよりはるかに重要なのだ”

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