【TRPG雑記】名探偵コナンに学ぶシナリオの導入

皆さんこんにちは、アノマロです。
ゴールデンウィークも終わりましたね、5月病になってしまっていませんか?
美味しいものを食べて乗り切りましょう!

さて、唐突ですが私は最近名探偵コナンにハマっています。
今年の映画、黒鉄のサブマリンが話題になっていて、ユーチューブやアマプラで過去作も見られるので見始めたのですが、止まらないですね!
原作は小学生の頃から見始めて40巻くらいまでは追っていたんですが、いつしか読まなくなっていました。大人になって見返すと、その完成度の高さに驚かされます。

 そんな長寿作品のコナンですが、アニメ初期は1話完結ものとして作られていたため、1つ1つの事件がかなりギリギリの尺の中に詰め込まれていました。今見るとかなり早口で間もつまっており、恐ろしいテンポの良さを感じます。ただ、とは言っても溜めるところは溜め、緩急のついたプロの演出の凄みもあります。
 名探偵コナンの事件の導入から解決までを決められた尺の中でやり切るという技術は、TRPGのゲームマスターやシナリオ作りにおいても学べる点があるかもしれません。今回は、その中で特にTRPGの導入に活かせそうな点を挙げてみます。
 なお、今回はバスの中で適当に書いている雑記なので、あまり構成をしっかりさせてませんし見出しもありませんが、ご容赦ください。

 例として取り上げたいのは、シーズン1の「霧天狗伝説殺人事件」です。
 この回は、コナンと蘭、小五郎が3人で休日に山桜を見に山の中へとやってきたところから始まります。3人は見事な満開の山桜を堪能したあと、帰ることになるのですが、途中で道に迷ってしまい、車もパンクしてしまいます。山奥で一晩を明かすはめになりそうなところ、一行は山寺を見つけ、なんとか泊めてもらうことになりました。
 ここまでで導入の半分です。もう半分は寺に入ってから殺人事件が発生するまでです。

 先程も書いた通り、名探偵コナンは尺がカツカツです。この回は1時間スペシャルですが、それにしたって使える尺は40分強だと思います。そんな中で、コナン一行はのんびりと山桜を見るシーンを導入に入れているのです。
 このあと事件が起こって警察が来て現場を調べて推理して解決して、と本編はめちゃくちゃスピーディーに進むのですが、最初の花見をする導入なんかなくても話は成立するので、別に入れなくてもいいんですよ。山寺に迷い込んだところからスタートしてもいいんです。
 ところが、アニメには山桜でお花見をする導入が入っています。なぜなら必要だからです。

「霧天狗伝説殺人事件」の序盤でお花見をするのは、実際のところ完璧な導入だと思います。
 理由の1つは、事件に巻き込まれることになる主要なキャラクターに日常を演じさせてキャラクター性のゼロ補正をしているという点です。人間は基本的に物事を相対的に捉えるので、寺に入ってからの非日常を非日常と捉えてもらうためには、日常がどのポイントにあるのかを最初に示す必要があります。
 アナログの重量計は、毎回使う前に何も載っていない状態で針がゼロに合っているか確認しますよね? そして、合っていなければ調節しますよね? そうせずに小麦粉が載った状態で「100g」と表示されているのを見ても、あやふやでよくわからないのです。だからゼロ補正が必要なんですね。
 日常のシーンを十分演じることで、コナンは普段こんな調子なんだ、蘭ねーちゃんは父親に対してそういう感じの話し方なんだ、小五郎いい保護者だな、などとゼロ位置を合わせることができます。そのあと、寺に入ってからのオッチャンの頼りなさや、蘭の怖がりで意地を張るところや、コナンの聡明さがぼやけずにくっきりとするのです。
 このことは、TRPGのセッションにおいても同様に考えられると思います。プレイヤーキャラクターが導入で依頼を受けるにしろ、事件に巻き込まれるにしろ、調査が始まってしまえばそれは非日常です。なので、その前に日常のシーンを演出することで、そこをゼロ点として非日常のロールプレイをすることができます。恐ろしいものを見て悲鳴を上げたり、悪辣な敵に怒ったり、NPCの結末に悲しんだりするロールプレイを、全てゼロ点からの相対的な差分でとらえることができるのです。逆にゼロ点があやふやだと、日常からの相対ではなく絶対でロールプレイしなければなりません。これだとキャラクターに統一性を持たせるのが難しいですし、輪郭があやふやになってしまいます。

 霧天狗伝説殺人事件の道入が素晴らしいもう1つの理由は、一見何気ない日常のなかに事件のカギを握る重要な伏線を混ぜ込んでいることです。
 事件は終盤、山桜の花びらが決定的な証拠の1つとなって解決に導かれます。それこそ、コナン一行が導入の花見で見た山桜と同じ種類のものです。
 この山桜は、一見何気ないもので、事件に関わっているとは到底思えないものです。だからこそ、道入に登場しても日常を非日常に変えてしまうことなく、成立するのです。かつ、伏線として回収されることで、後で視聴者の満足感をブーストする無駄のない効果があります。
 TRPGでもこの手法は使えます。ファンタジー系のTRPGなら、たとえば導入でパーティーが酒場にいたとします。そのときに、何気なく壊れてしまったバーカウンターの描写をします。プレイヤーは、荒くれ者の多い酒場の一部が壊れていても気にはしないでしょう。しかし、実はそのカウンターを壊したのは冒険者が追うことになる盗賊団だったと後に判明します。プレイヤーは「あー! あのカウンターか〜〜っ!」と思うでしょう。この、伏線だと思っていなかった伏線の繋がりは、プレイヤーを楽しませてくれます。

そういうわけで、2つのポイントから霧天狗伝説殺人事件の回の導入前半が完璧だったということを雑語りして参りました。
この回は公式でYouTubeに公開されているので、気になった方は見てみてください。
そして、40分という尺でこの導入にどのくらいの割合を割いているのか、何を見せて何をカットしているのか、そういったところを確認してみると、自分のゲームマスターやシナリオ作りに役に立つかもしれません。

それでは、今回は散文駄文にて失礼しました。
コナンの映画、最新作も面白かったので是非劇場も行かれてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?