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この個人アニメーターに注目!2021

今アニメが激激熱い!今回ご紹介する作家は大人数で作るTVアニメではなく、自主制作アニメーションのクリエイターが中心です。個人だからこそできるミニマムながらユニークな手法がSNSを中心に人気が拡大中。Twitterでもアニメーション関連ハッシュタグ「#indie_anime」や「#作画王グランプリ」は大いに賑わっています。今回はそんなネットを中心に注目される個人アニメーターを筆者の独断と偏見でご紹介します。

湯久田 風

とんでもない才能。キャラクターもそうだけど、背景も含めた画面隅々にまで渡るアニメイトがすごい。どこまで浸透してる言葉かわかりませんが、Lo-fiなループがエモーショナルな世界観と相まっている。ループを使いつつ、ストーリーを進める手腕。短いながらも考えられたカラースクリプト、でも一番良く感じるのはデザインと筆致。ここまでざっくりしたラインなのに完成度が高く見えるのは構図が物語に伴っているからだと思います。単純な絵のように見えて細かい繰り返しやシルエットに絶妙な立体感をつけており、そのこだわりに作家のセンスを感じます。

はなぶし

これまでもアニメーターとして業界内では注目されていたはなぶし氏ですが、2020年にはオリジナルキャラクター「ピギーワン」が大ヒット。キャラクターデザイナー、アニメーション作家としても存在感を出し、オリジナルPVも手がけています。これまでも数々のヒットアニメを手がけていたこともあり、クオリティは抜群に高く、個人アニメーターとしての技量はもちろん、監督としての才能も遺憾なく発揮しています。2021年1月に公開されたずっと真夜中でいいのに。のMV『暗く黒く』では主線無しのストーリーアニメを4分間という長尺で描ききり、まるで一本の映画をみたような余韻の仕上がりとなりました。

見里朝希

2021年上半期の大ヒット作品『PUI PUI モルカー』の作者です。モルカーはキャラクターデザインの可愛さや独自の展開でも人気ですが、なにはさておきアニメーションが素晴らしい。羊毛フェルトをストップモーションの手法で撮影されたものですが、キャラクターの表情やエフェクトなど細かい演出が非常に豊かです。アニメーションの本場でもある東京芸術大学出身ということもあり、確かな力量は短い物語を肉厚にしていくための強力なエッセンスになっています。自主制作作品『マイリトルゴート』も素材による質感の差が面白く、非常に丁寧なアニメーション。シナリオについてはモルカーとは別の方向性で、最初から最後までスリリングな展開です。こちらは元気な時に視聴することをオススメします。

こむぎこ2000

ここ2年で最も注目される若手アニメーターでしょう。自身が主催する「#indie_anime」はアニメ制作の閾を大きくさげ、SNSでのアニメコミュニティを若手はもちろんベテランにも拡大しました。こむぎこ2000氏の手法は作画からアニメーションまでをすべてiPadで完結しているところ。画面作りやキャラクターの表情などがラフなタッチながら見事にツボをおさえた構成になってます。すでに多くの作画フォロワーが生まれていますが、今後さらに力をつけていくでしょう。クリエイティブとしてのアニメーションを盛り上げてくれるとても頼もしい存在です。

玉川 真吾

個人的には2020年最も衝撃を受けた作品が玉川真吾氏の『PUPARIA』でした。この表現はアニメーションでなければできないと思うし、なぜこれを作ろうと思ったのか?(いや、作るしかなかったんだろうな)という凄まじい情念というか、力を感じました。畏怖といってもいいかもしれない。本人もインタビューで「自主制作でしかやれなかった」と仰ってますが、作者の伝えたい事が画面に大きく反映されていると思います。こういう作品が拝めるのは何年かに一度で、リアルタイムに遭遇できることは本当に貴重な機会だと思ってます。出自がサンライズで作画監督の経験もあり、商業アニメーターとしても一級のキャリアを持っています。その中で硬派な自主制作に至るというチャレンジに感動します。もちろん商業アニメ的なノウハウや力量がバックにあるからこそ、単なるサブカル作品として終始しているのではなく、多くの人の心を打っているのだと思います。

Anded

「イラストレベルのクオリティでアニメーションさせる」というのは特にSNS以降のアニメーターの欲求になって来ていると思います。まさにその延長で作られたような作品がAnded氏が手がけたsaiBのMV『偶像崇拝』でしょう。やりたいことが画面全体に溢れており、個人制作とは思えないほど凄まじいサービス精神で派手な画面を作り上げてます。過去には同じくSaiB氏の別楽曲のファンアートとしてMVを手がけていますが、『偶像崇拝』は公式タッグということもあり、気合いの入り方がすごい。SaiB氏は個人的に大好きなアーティストなので、お二人がコラボレーションしてくれたのはとても嬉しいです。

DEMONDICE

マルチな才能という意味ではDEMONDICE氏は本当にすごい。イラスト、アニメ、デザインはもちろん作詞作曲ラップまでこなす超人。日本在住のアメリカ人で日英ラップが格好いい。MVは自身の作品はもちろん、人気ラッパートップハムハット狂の楽曲も手がけている。日本的な(もっといえばニコ動MV的な)動画作りとアメリカ的な文脈がミックスしており、純日本語の歌詞ながら『Princess♂』の再生数は2,000万を越え、コメント欄でも英語が目立ちます。MVクリエイターとしてのDEMONDICE氏はとにかく楽曲とのシンクロ率がすごい。同じ素材の使い回しや(とはいえ相当描いているはず)、場面によっての展開が非常に上手く飽きない。とにかく楽しい映像で国内外から多くの支持を得ています。

この発想はなかった。初期プレイステーション(もっと言えばかつてのSCE)のような画面、料理番組のようでだいぶシュールな内容、落ち着くナレーション、BGMのドビュッシー……。2018年頃は個人のVTuberが多く生まれて、蟹氏もその中の一人だったと記憶してます。VTuberの活動スタイルは大きく二つに分かれると思ってます。一つ目は「ゲーム実況」や「歌ってみた」などアイドル・タレント感の強い演者、二つ目は自身の世界観をコンテンツとして発信する映像作家タイプです。蟹氏は後者であり、今でも活動を続けている希有なクリエイターだと認識してます。スタイルとしては地味ではありますが、作品のレベルが非常に高い。ネタもさることながら、カメラアングルや小ネタが上手い。今のSNS的な引きに疲れている方は是非ご覧ください。バハハイ

ちゅーたな

Twitterを中心に数秒のミニマムループアニメを投稿し続けるちゅーたな氏は、ごく短い時間軸を切り取りながらも、入れるべき情報の取捨選択が凄い。これも一つのアートの方向性というか、TVアニメ的な輪郭は残しつつも、商業文脈では絶対に生まれないであろう企画だと思います。キャラクターの演技はもちろん、背景や映り込みなどとにかく細かい細かい……。動く絵として隅々まで楽しませようとする心遣いが本当に素敵です。幸せになれるので是非、全作品見ましょう。

Waboku

MV界隈では最注目のアニメーション作家といって良いかも知れません。個々のモチーフの描写や作画的な量感がリッチなわけではないですが、圧倒的な世界観と線の強さに魅力があります。近年はアーティストのEveやずっと真夜中でいいのに。へのMV提供で一気に知名度を上げました。アニメ『約束のネバーランド』のED曲Myuk『魔法』(作詞作曲Eve)のMVでは A-1 Pictures制作の監督を務めています。短期間で大きい仕事を次々とこなしており、普遍的ながら時代のニーズをくみ取った作風で、プロフェッショナリズムを感じます。

おーくボ

めちゃめちゃクオリティの高いループアニメ。キャラクターはもちろん、背景や小物も沢山動いており、ずっと見ていても飽きません。2017年に人気を博したインディーズゲームの『Cuphead』が凄まじい作画で注目を集めましたが、まったく負けていないと思います。おーくボ氏の作品は、細かいテクニックや作画スキルの高さはもちろん実感しますが、全体設計に理屈を超えた凄まじい愛情のようなものを感じます。ループアニメ自体は近年人気になっていますが、ここまでやりきっている作家も珍しく、特に2020年のまとめアニメはどの作品も傑作です。ご本人(?)のキャラクターが随所に登場する世界観がシュールで超可愛い。本当に数秒程度のアニメで、線もシンプルだけど組み合わせることのグルーヴ感が気持ちよいです。

安田現象

これぞ自主制作!という好きが詰め込まれた作風。セルルックの3DCGで、顔のアップが美しい。なによりもアクションシーンの重量感がとても格好よく、表情はもちろん、衣装やカメラワークの細かいところまで"演技"を仕込んでいるこだわりよう。tiktokではすでにフォロワーが130万人に達しており、世界的にも注目されるクリエイターです。現在は都内にアニメスタジオを構えスタッフも募集中とのこと。興味のある方は是非アクセスしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は日本のアニメーション、キャラクターモノを中心に12名のクリエイターを紹介させていただきました。ジャンルも幅広く選定したつもりですが、まだまだすごいクリエイターは沢山存在します。気になる方は是非ハッシュタグ「#indie_anime」「#作画王グランプリ」をdigってみてください。アニメは作るのが大変な分、完成時のインパクトはとても大きいですね。

普段はイラストに記事を中心に書いてましたが、近年の熱量にあてられて今回はアニメーションをピックアップさせて頂きました。それではまた。

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