見出し画像

展覧会「語りの複数性」読書会

続けてみます読書会

1.はじめに

 東京都渋谷公園通りギャラリーで10/9〜12/26まで開催されていた展覧会「語りの複数性」にあんにょんパンドが外部協力として読書会の運営をお手伝いしてきました。

「語りの複数性」は、言葉や言葉以外の方法で伝えられるさまざまな「語り」を通して、世界を捉える複数のありようを受け取り、自分と異なる他者を想像する展覧会です。普段は想像もしない誰かの身になって考える、そんな体験ができる最も身近な方法のひとつとして読書があるのではないでしょうか。そんな思いから、読書会を開催します。 同じ一冊の本を、アイデンティティや障害の有無、セクシュアリティの異なる私たちで読み、私たち自身の経験や触発された情動の、複数のままならない「語り」を一緒に体験しませんか。 半地下部屋で出会った姉妹と青年がそれぞれの声で織りなす長編小説ファン・ジョンウン『続けてみます』。生、死、暴力、性、妊娠…生きる意味とは何か考えることを私たちに突き付ける作品。 韓国文学界の旗手が静謐な文体でしたためた本作を、多様な私たちは、どう読み、どう「語る」ことができたのでしょうか。https://inclusion-art.jp/archive/event/2021/20211223-122.html

2.プレゼンターの堀内さんから

・印象に残った文章・シーンについて

・この本の魅力につい

などたくさんの論点について、グループで話し合って欲しいと提案がありました。

3.グループトーク

①心に残った場面

 一番規範的とされる範疇に属している人物であるナナの彼氏と彼の家族がむしろこの小説のなかでは最も浮いてる存在として描かれているのが印象的。『普通』とは何かと問いかけられているとかんじた。また家族の形や愛の形はみな違うし、多様であることが小説の主人公たちを通じてうかがわれた。それと、この小説では夢の話がよく出てくる。現実と夢の境界の曖昧さが象徴的。それだけでなくそら、ナナ、なぎ3人の間の境界も曖昧で、特にそらとななは状況の変化によってまるで一人のように合体したり、わかれたりする存在のようにもみえる。境界の曖昧さも小説を貫通するテーマではないかと思われる。

②この本の魅力について

 日本語の表紙が歯車なのに対して、韓国版は月が表紙に描かれているという点もあんにょんパンドでの読書会ならではの発見だと思った、という嬉しい意見がありました。また、最初は読みにくかったけどだんだんと読みやすくなり、最後の方で人は力強く生きていけるんだなという勇気を与えられたという意見もありました。それと一番誰が好きか?という質問に対してもみんなバラバラに意見が分かれて、「みんなの立場に複数性がある」というこの展覧会での読書会にピッタリくるという話にもなりました。

③その他

ソラ、ナナ、ナギ、ナナという章立ても、ナナの妊娠の物語と考えたり、ナギの生き方を考えるととてもしっくりくるし、とても良い章立てだと思った。

それにしてもナギの章での暴力性が静謐な文体で書かれていたことに驚いた。

格差社会を正油や絵具という表現を用いてあらわしているのも秀逸だと思ったし、『パラサイト 半地下の家族』を見た後だったので半地下のリアリティがとてもすごかった。

さて続けます、ではなくて続けてみますというタイトルがついたのはなぜだと思いますか?読まれる方に考えてほしい話題です。

参加していただいた皆様、美術館の皆様、スタッフの皆様、そして今回も翻訳者のオ・ヨンアさんには大変お世話になりました。お礼申し上げます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?