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短歌52(夜の新宿に行く人の歌)

「心の花」2022年4月号

落ちている椿は持って帰ってもいいと綺麗な人に言われる

自分への誕生日プレゼントには花瓶を買ってあなたを待とう

ひとの死を心より乞うことのある自分と知れば睫毛の重し

拾うことわたしもせずに新宿の雨に打たれている鍵の束

緑茶ハイに向かって話す五ミリずつ傷ついてゆく口癖のこと

賑やかにわたしの弱み溜まりゆくバーテンダーの携帯の中

〈三丁目のコーヒー屋〉にて聴いている生姜焼きやく音の美し

「常連」と呼ばれセールの話きく旅立つ町の靴修理屋に

5・6首目不採。

先日、金色のビキニを着てマツケンサンバを踊った。
氣志團の「One Night Carnival」も。

いつも行っているバーの女の子の誕生日イベントだった。
その女の子は高露出でSMイベントに出演していることが多く、誕生日イベントもSM系DJイベントとして行われた。
女の子は、普段働いているバーのオーナー「てんぐちん」を尊敬に尊敬している。
そんなわけで、誕生日イベントにはてんぐちんのショーステージの時間が設けられていた。
てんぐちんは「エロにならない裸」「女でも裸で笑わす」という志しで、何年も前からパフォーマンスをしている。
私は彼女と知り合って6年、いまでは大の友達だ。

誕生日イベントはSM系のため、お客さんも露出度が高い。
特にオムツ姿のM男達がたくさんいた。
四つん這いの男の尻を鞭で打つ女王様や、素人ながら楽しそうにM男を足蹴にする女の子の様子を見ていたら私も興が乗ってきて、履いていたスカートを脱いだ。
その日はロングTシャツだったため、「下着は見えないしいいや」と思ったのだ。

「見てみて〜〜私には珍しく露出しちゃった」と友達に見せて回った。
てんぐちんにも。
そうしたら彼女は言ったのだ。
「金色の水着、6着持ってきたけど着る⁉︎」

私は金色の水着を着ることになった。

てんぐちんのステージが始まった。
マツケンサンバからのスタート。
私は着ていたロングTシャツを脱いで、水着姿で客席で踊った。
2曲目と3曲目は客席からてんぐちん達を応援していたのだが、4曲目の直前、客席にいた友達に押し上げられる形で私はステージに上がった。
てんぐちん、誕生日の女の子、あともう一人S嬢さん、三人によるステージ。
そこに私も混ざって氣志團の「One Night Carnival」を踊った。
四人とも金色のビキニである。

たしかに水着は借りたものの、ステージにあがる許可までは取ってなかったので、周りから押し上げられた形とはいえ混ざってしまって大丈夫か不安だった。
しかしながら、誕生日ガールはステージ上でマイクを通して「一緒に踊ってくれてありがとうーー!!」と言ってくれた。

おひねりタイムはまたしてもマツケンサンバ。
てんぐちんが客席にダイブしに行ってしまったので、その間しっかりステージを守っておいた。
そしてちゃっかりおひねりも頂いた。

離婚のこと、お金のこと、その他人間関係のことで疲れ切っていた私であったが、「誕生日だから」とこの日はちょっと頑張って新宿に向かった。
結果的に普段は脱がないのに脱ぎたくなるほど楽しかったし、誕生日ガールにも喜んでもらえた。
入場料と飲み代にトントンになるくらいのおひねりもいただいたので、お財布にも響かなかった。
行ってよかった。
いつだって新宿はなんだかんだ「行ってよかった」と思える場所だ。
イベント公式カメラには私の弱みがまたしっかりと収められた。

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