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第110回日本エスペラント大会に行ってみましたレポ

はじめに

去る2023年10月21日と22日、神奈川県川崎市で行われた第110回日本エスペラント大会に行ってきました。

普段こういうリアルイベントに行かないわたしですが、VRChat上での知り合いに会ったり、リアルのエスペラント普及活動ってどんなのかな?と興味はあったので参加してみることにしました。

VRChat上でエスペラントについていろいろお手伝いしている身ですから、「一回くらいは行っておかなきゃなぁ……」とは常々思ってはいたのですが、昨年以前に参加されていたフレンドからはあんまりポジティブな感想を聞かなかったのでどことなく尻込みしていました(まあコロナ禍でオンライン主体のイベントでしたし、なかなか運営が難しかったのでしょう)。今回は首都圏近郊でのリアル・オンラインハイブリッド開催ですし、VRChat上のフレンドも参加するということだったので、オフ会がてらいろいろ見に行ってみる、という体であんまりなにも考えずに参加することにしました。

日本エスペラント大会について

エスペラントというのが「なんだかよくわからないけどなんらかの言語で、個人が作った人工言語」くらいのことをぼんやりと知っている方はそれなりにいても、エスペラント大会について知っている方はそこまで多くはないのではないでしょうか。

簡単に説明すると、エスペラントを普及したりその有用性をアピールしたりするために、各国のエスペラント話者が集まっていろんなことを話すというエスペラント大会がいろいろなところで定期的に開かれています。その日本版が日本エスペラント大会で、初回は1906年と100年以上の歴史を持つ日本最大のエスペラント関連イベントです。世界大会も1905年から始まっているので、エスペラントの歴史と共に歩んできたイベントと言えるでしょう。

大会前まで

大会への参加は、エスペラント協会が用意する申請ページにてあらかじめ申請が必要です。ちょっと面白いな、と思ったのは別名での申請が可能であることです(参加費振り込みもありますので本名は別途入力します)。これにより本名を晒すことなく参加することができます(おそらく意図とは違う運用だとは思いますが……)。人によっては本名とは別にエスペラント名を用意していることがあるので、そのための措置なのだと理解していますが、わたしのように仮想現実でエスペラント活動している人間にとっては、VRChat上の名義がほとんど本名のような運用なので、これをありがたく活用させてもらいました。

参加者票。このように別名のみで参加することができます。

参加申請した証明書などはとくに必要なく、当日は身ひとつあればだいじょうぶです。新幹線や宿の手配はお忘れなく!(1敗)

大会当日

写真を撮影してもいいのか全く分からなかったので、当日の写真はありません!

大会式典

いわゆる開会式にあたるものです。大会のあいさつや功労者表彰など、いたって普通の進行がエスペラントで行われます。まあエスペラント大会なので当然ですね。といったところで突然La Esperoを斉唱することになります。

この歌はエスペラントの国歌(国ではないんですが)みたいな扱いで、どこで覚えるのか知りませんが気合の入ったエスペランティストはちゃんと歌えます。式次第をまったく確認していなかったので、完全に虚を突かれました。Projekto BabelでLa vojoを歌うことがあるので、ついでにこれも覚えていましたがこんな形で役立つとは……。

ふらふらお散歩(オンライン文化祭・交流サロン・立ち話)

プログラムはいろいろあったのですが、まずは会場全体を見ておきたいなと思い、いろいろ回っていました。

まずはオンライン文化祭。多目的室に椅子があり、その先にある画面にZoomの配信がずっと流れていました。事前に募集した動画が流れていたようです。わたしが見たときは原爆被害者の物語が、もの悲しげな音楽とともに流れていました。偏見なんですが、日本のエスペラント関連の活動はこういう非核反戦や左派的文脈とよく関連付けられている雰囲気があり、ノンポリのわたしはちょっと引いてしまいます……だいじなことなのは分かっているんですけどね。

つぎは交流サロン。サロンとは言っても、 参加者がそれぞれエスペラントにちなんだ冊子やグッズといったものを頒布したりしていて、同人誌即売会のような雰囲気でした。とても安心する空気感! 書籍の出張販売があったり、地方のエスペラント学習会の紹介があったり、百合ノベルゲーム「ことのはアムリラート」の宣伝ブースもあったり、いろいろあって飽きませんでした。開発元Sukerasparoさんのブースでは、キャラクターのタスキを付けた「勇者」が、ポストカードをもらうべくエスペラント会話ミッションに赴いていました……。

そのあとはVRChatでのフレンドであるgyoxiさんやその御友人のsanzouさんとお話したり。sanzouさんはエス検1級を受験されたとのことですごいエスペランティストです。(noteに受験記があるのでぜひご覧になってください)「Projekto Babelのイベントに行ってみたかったけど、VRChatがよくわからなくて諦めた」という話を聞いて、ちゃんと動線を作っておかなきゃなと反省しきり……。

Adamさん講演

ちょっと時間が空いたので、ホールで行われていた講演に途中から聴講。インドネシアから参加されているAdamさんという方が、バンドンに伝わるAnklungという伝統楽器の音階と現代化についてエスペラントで講演されていました。伝統的な音階だと西洋音階からかなり離れていて不思議な感覚に。でもちゃんとそろった音階だと認識できるから面白いですね。Anklungの電子化の話もあり、アプリを触ってみたくなりました。最後は何人かを募って演奏体験。わたしは聞いているだけでしたが、竹の弾んだ音がとても心地良かったです。

エスペラント会話(初級)

gyoxiさんと一緒に参加しました。講師2名と一緒に、エスペラントの会話を体験してみるもので、今回は自己紹介と会話ロールプレイをしました。自己紹介は無難に居住地と職業で済ませようと思ったのですが、VRChatのことを知っているsanzouさんから「趣味はなんですか?」とツッコまれるわたし。わたわたしながらVRのことを話していました。HMDのことを一言で言えなかったのですが、平易な言いかただとVR-okulvitroj (用例)とかがあるみたいですね。他の言いかたもあったはずですが、用例を見つけられませんでした。

自己紹介のあとは会話ロールプレイ。ロールプレイとはいっても、わたしの場合は自己紹介のつづきみたいな会話をお互い質問しあいながら話すものでした。同席したのは中国から来たエスペラント学科の大学生(中国唯一の学科!最近ドキュメンタリー動画も出ていたところです)と、小中学生とその親御さんのご家族。ほかにもいろいろな国や出身の方がいて、国際色豊かな会話講座でした。

初級とは銘打っててもちょっと難易度が高いかな……?と感じたのは内緒です。内容は初歩なのですがリスニング力がけっこう必要なように感じました。

医学者・科学者会合(2日目)

ほんとうは1日目だけ見ておわらせるつもりだったのですが、帰る前にすこし時間が空いたので、「医学者・科学者」と書かれた会合に参加しました。字面から、エスペラントでなにか研究発表とか、最新技術についての発表があるのかなと期待したのですが、1時間ずっとChatGPTの話をしていて、申し訳ないのですが会合の目的がなにか良くわからなかったです(わたしの前に座っていたおじいさんがこの会合の目的を問う質問をしていて、「すごい勇気だ!」とびっくりしたり)。

大会に参加して

今回購入・入手した冊子など。本文が全部見えそうな冊子は著作権に配慮し一応隠しました。

やはりリアルでエスペラントを話す、ということそのものが貴重な経験ですので楽しませてもらいました。少ないながらも海外からの参加者もおり、少しお話しできたので行った甲斐はあったかな……と思います。

以前参加されたフレンドも言っていたことですが、やはり年齢層は気にかかるところでした。参加者の8割以上は60歳以上では?と思うくらいで、今後の大会の持続可能性を心配してしまいます。とはいえ中学生の参加者もいたりと、エスペラントの火が完全に途絶えてしまっているわけではないところに少し安心したりもしました。どことなくエスペラントティストの同窓会のような雰囲気を感じるので、その輪のなかに入っていくのは少し勇気が必要です。

VRChatでのエスペラント話者の年齢層は20-40歳くらいでわたしと近い年齢ですし、アメリカやヨーロッパのエスペラント話者と気軽にお話しできるので、これからも活動の軸足は仮想空間にあると思います。今回の大会参加で、どのようにVRSNS上のEsperantujo(エスペラント界)を盛りあげ、参加者の新陳代謝を維持していくかを考えるよい切っ掛けになりました。

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