これからアニメ好きになるかもしれない人に勧める35本
2022年5月3日、クイック・ジャパン・ウェブに掲載された以下の記事がネットを賑わせた。
アニメ評論家、藤津亮太が執筆した20歳のアニメファンが観るべき作品リストということで、「日本でメジャー流通するアニメが、現在のような形になっている背景を知ることができる」ことを目標に、日本の商業アニメ黎明期の1958年から2018年まで幅広く選出されている。
ターゲットとなっている20歳のアニメファンに適当なチョイスなのかはやや疑問があるものの、目標としている日本の商業アニメの在り方への理解を深めることについては的確なチョイスをしているのではと思う。とはいえ、こういったリストに対しては物言いが入るのが常であり、ネット記事というアクセスのしやすさもあってか、大量の「意見」が執筆者の藤津に殺到した。アレがない、コレを入れろ、お前は分かっていない・・・等々。SNSに溢れるそういった発言に対する筆者の見解と、藤津の回答は同じだった。
「自分で選べばいいじゃないか」
だから、選んだ。35本。
選考基準を示しておく。メインターゲットは20代ぐらいのアニメに興味のある人。アニメファンと言えるほどに熱心に作品を追いかけている人は対象にしておらず、想定しているのは「アニメも見るけど詳しくはない、映画は割と好き」といったタイプの方となる。例えば、知人・友人・職場の同僚に何か面白いものはないか?と尋ねられた時に「実はこういう作品がありまして」と紹介でき、なおかつ見た人をアニメ好きにするような吸引力とキャッチーさのあるリストを目標にしている。
既にアニメに興味がある人を前提としているため、誰もが見たことはなくともタイトルや概要を知っている『エヴァンゲリオン』や『涼宮ハルヒの憂鬱』は除外した。毎年テレビ放送されているジブリ作品も対象外となる。『ドラえもん』や『名探偵コナン』はどうなんだ?と疑問に思われるだろうが、リストに挙げた作品は過去の劇場作品のため、過去作を追う努力をしていなければまず観ることはないと判断した。今も続く人気シリーズ作品を含めることで鑑賞者の心理的ハードルを下げ、過去作を追うきっかけとする狙いもある。
作品の選定は筆者が所属するコミュニティ「game game」の一部のメンバーと相談して候補を選出、意見を集約して最終的に筆者がリストに入れる作品を決定した。選考に際して年代は平成(1989~2018)、日本の商業アニメ作品に限ることとしたより幅広い年代の作品を選出することも検討したが、あまりに対象が膨大になってしまうこと、メインターゲットが若いことを考慮して、今の感覚で見てもヴィジュアル面での違和感が少ないものは平成以降の作品と判断した。
当初、海外作品やPV・CM作品を含めることも検討していたが、そこまで対象にしてしまうと散漫な印象のリストになってしまうだろう。そもそもターゲットはまだアニメファンではないのだから、いきなり海外作品やアート色の強い作品を勧められても面食らってしまうというもの。国外にも面白い作品はたくさんあるので、アニメファンになったあかつきには、リスト外の作品を掘ってみてほしい。本リストではアクセスのしやすさも考えて、デジタル配信による視聴が可能なものを極力選んだ。有料レンタルのものも多いが、タイトルで検索してみれば視聴可能なサービスは出てくるはずだ。
選定の際にはなるべく作品ジャンルの偏りがないように心がけた。ややシリアスな内容のものが多くなってしまったものの、コメディ・恋愛・魔法少女・メカ・西洋風ファンタジー・学園もの・サスペンスなどバラエティーが富んだ内容を選出をできていると自負している。中には非常にショッキングな暴力描写やハードコアな性描写のあるアダルトアニメも含んでいるが、いずれも作品としての力強さやクオリティを保証できる素晴らしい作品で自信を持って勧めることができる。中でも「A KITE」や「エルフェンリート」は個人的にベストアニメに挙げたいほどに好きな作品である(当然、子どもには勧めないが)。
もうひとつ心がけた点として、鑑賞前に前提となる知識や「お約束」の把握が不要なものを意識した。多くのシリーズ作品は鑑賞者が内面化している一定のルールや風習があることを前提に製作される傾向があるが、なるべくフラットな感覚で見て面白くみられるものを選んでいる。パロディだらけの「ケロロ軍曹」も実は元ネタを一切理解していなくても楽しく見られる良質なコメディ作品である。
過去作を振り返るきっかけとなるように作品の監督もバラエティ豊かにした。出崎統、細田守、押井守、今敏、片渕須直、山田尚子、山崎みつえ、今石洋之・・・リストに掲載された作品を見た後に興味があれば、彼らの他作品を追ってみることもオススメだ。
35本も選んだわけだが、漏れてしまった作品も多い。迷った末にリストから外した作品には以下のようなものがあった。
個別の作品について触れ始めると長くなってしまうのでこの記事では控えるが、いくつかの作品については別途簡単な紹介文を書くことも検討しているので、準備ができれば追って記事化するつもりだ。そこでは選出した理由や見どころについても書くことができるだろう。
今回のリストの作成にあたって、裏テーマ(書いてしまっているが!)として筆者が生まれ育った平成という時代を俯瞰することを考えていた。テロ、戦争、災害と様々な出来事があった30年だが、アニメ業界に注目するだけでも波の大きい時代である。
デジタル技術の発達でセル画からデジタル制作に切り替わり、映画もフィルム上映が消えていった。CG技術の進歩が作品作りに与えた影響は大きい。2000年代半ば頃からは急激に深夜アニメが増加。制作本数の急増がアニメ市場規模増大に貢献はしたものの、作り手不足・育成不足に悩まされる事態にもなった。ネット配信の一般化によって見る側の環境が大きく変わり、テレビ放送の重要度はかつてほどではなくなっている。軽く挙げるだけでも大きなトピックがたくさんある。まさに激動の30年。今回のリストの作品を順に見ていけば、時代の流れを体感することもできるだろう。
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