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Think clearly ロルフ・ドベリ

そもそも、世界は複雑で人生を好転させる究極の方法なんてあるはずがない。この本は、よい人生を送るために必要な「思考の道具箱」として、著者が集めた「52の思考法」が書かれた本である。その中から、興味深いものをいくつかを上げよう。

1、境界を知る

世界を完全に理解している人はいない。世界はあまりに複雑すぎる。投資家のバフェットは「能力の輪」と、表現している。「能力の輪」の内側にあるものはよく理解でき、外側にあるのは理解できないか、できたとしてもほんの一部だという。欠点より「能力の輪の内側」の方が1000倍も能力を発揮する。境界を知り、能力の内側に目を向けよう。

2、避ける

著者は、人生のマイナスを避けることを特に強調している。解決より予防。激しい競争から距離を置く。避けることの重要性を伝えている。

3、現実を受け入れる

人生には不公正さがつきものである。公正であるべきと、いくら訴えても、不公正さは生じてしまう。世界の不公正さは現実としてそのまま受け入れたほうがいい。また、好ましくない現実こそ受け入れることも説いている。例えば、失敗。素直に現実を受け入れて、失敗の原因を突き止めよう。そして、失敗の原因を徹底的に取り除くのが大事だ。

こんなことを思い出した。中学、高校生のころの水泳部の思い出だ。私は、「400メートル自由形」を得意としていた。コツコツと泳ぎ続ける泳ぎ方を得意としていたからだ。無意識の選択であったが、私は、能力の輪の中の種目を選び、花形の種目から距離を置きただ、中距離を泳ぐことだけに没頭した。時にはレースに負けたが、負けた原因をひたすら考え、排除した。水泳大会においては、大会の上位陣はスイミングスクールに通っている人たちで占められるのが常である。しかし、気が付けば、東北大会あと一歩までの力をつけることができた。

以前、なぜ、花形の100メートル自由形を選ばず、中距離の種目を選んだのかと、聞かれたことがあった。自分は、100メートル自由形から逃げた意気地なしだったのではないか?消去法で種目を選ぶのはカッコ悪いのではないか?と、思い悩んだ。けれど、この本を読んで、自分の選択は正しかったと、自信になった。

4、現在を楽しもう

うっかりすると、記録に残すことに注力し目の前にあることをおざなりになりやすい。例えば、子供の学芸会では、カメラをまわすことに集中し、子供の緊張した息遣いやしぐさを見逃してしまう。高校生の夏、夜の明かりは月明りしかない合宿場で真夜中まで夜空を眺めた経験がある。おそらく、何かの流星群の時期であったのであろう。いくつものいくつもの流れ星が、降るように流れていた。ただただ、いつ流れるかわからない夜空の「今」を眺めていた。私にとってこの経験は宝物であり、今でも思い出すたびに心が温かくなる。もしかして、カメラを持ち合わせていたらこれほどの充実感は得られなかったのではないであろうか。

52もの思考法とは、少し多すぎやしないかと思いながら読んだものの、なるほど、人生が好転した時は、この思考法にのっとっていたし、うまくいかなかったときは、この思考法から離れていたことが多かったようだ。一度読んで終わり、という本ではなく、道具箱の中身を何度も確認するようにこの本を読むことをおススメしたい。

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