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何故日本は 遺伝性疾患が多いのか?

以前の記事で「無秩序な繁殖」を日本のペット産業の問題の1つとして挙げました。環境省令にも「遺伝性疾患等の問題を生じさせるおそれのある組み合わせによって繁殖させない」と明記されているにも関わらず、無秩序な繁殖のせいで日本は世界でも突出して遺伝的疾患が多いと言われています。
現代の科学医療の成果で原因遺伝子を特定できる病気が年々増えているにも関わらず遺伝性疾患が多いと言われるのはおかしいと思いませんか?

1 半致死遺伝子

毛色の種類に「マール」(ダックスフンドの場合は「ダップル」)と呼ばれる毛色があるのをご存知でしょうか?

この毛色は皮膚や毛の色素合成に影響を与える遺伝子の変異によるものです。この遺伝子は目や内耳の発達にも深く関わっていることが分かっており、死産の可能性が高いとも言われ別名「半致死遺伝子」とも呼ばれています。当然マール同士を掛け合わせた場合そのリスクは更に高くなりその行為はタブーとされています。
このマールやダップル、いろいろなところで人気色として紹介されているのですが、半致死遺伝子とも言われるこの毛色を犬種標準として扱っていること自体が不思議でなりません。

2 どの犬種でも犬のカラダには色素が必要

色素による遺伝的疾患についてもうひとつ、フレンチブルドッグの例を挙げたいと思います。
現在日本で人気な犬種のひとつであるフレンチブルドッグですが、クリームやパイドといった毛色が特に人気があります。ただ、このクリームやパイドに遺伝的疾患のリスクがあるのです。

色素の役割のひとつは犬も人間と同じで紫外線などから身体を守るものですよね。なので当然、色素の薄い犬の方が皮膚疾患を抱えるリスクは高くなります。また前述の通り犬は色素と神経細胞が深く関わっているため、色素が不足することによっての視聴覚疾患や内臓疾患などを抱えるリスクも高くなります。

こういったことを考慮し普通フレンチブルドッグの交配には片親を必ずブリンドルにする「ブリンドル基礎」という方法がとられます。(そうすると子犬は殆どブリンドルになる。)

ただ先にも述べたようにクリームやパイドが人気色とされている今日、多くの販売店でブリンドルよりも高価格が付けられている現状があります。そうなってしまうと利益優先の繁殖業者や知識の少ない素人繁殖者はクリームやパイドの子犬がたくさん産まれるようにブリンドルを入れずに交配させるようになってしまいます。

個体の健康を守るため秩序ある繁殖を行うのか、
または利益を優先し好き放題に掛け合わせるのか。

優良ブリーダーを判断するときのひとつのポイントとすることができます。
ブリンドルと比較するとどうしても遺伝的疾患のリスクが高いクリームやパイドですが、どうしても家族として迎えたいというなら片親にブリンドルがいるかどうかを是非確認してください。

悪徳なブリーダーから子犬を迎えるということはそのブリーダーの行為を容認しているということになります。

左:パイド 右:クリーム

3 14年連続人気猫種1位のスコティッシュフォールド

不動の人気猫種 スコティッシュフォールドですが、その人気の理由の1つ折れ耳は骨軟骨異形成症という病気からくるものだということをご存じでしょうか?
その症状には段階があり軽度なものから、歩行が困難になる重度なものもあります。どちらかの足首に骨瘤ができてしまうと脚を引きづりながら歩くようになり、手術で取り除くことはできますが根治は厳しいと言われています。

折れ耳のスコティッシュフォールドは皆その骨軟骨異形成症を発症しているのですが、私が調べた多くのブリーダーサイトで折れ耳の子猫がたくさん販売されていました。

ブリーダーが、その種の遺伝性疾患について分からない訳がないと思うのですが遺伝性疾患を発症するような組み合わせで交配しその個体を販売する、今の日本のペット産業はそんな信じられないような現状なのです。百歩譲って知らなかったとしても、そんな知識の無い人にはブリーダーの資格はありません。

骨軟骨異形成症に関しては原因遺伝子が特定されていて、遺伝子検査でその個体が保因しているかどうかを調べることができます。繁殖者の意思があれば病気自体を根絶できるはずなのですが、どうしてそうはならないのでしょうか。

4 どうして無秩序な交配が行われるのか

理由は、ニーズがあるから。一言で済む話です。
人気な毛色 人気な外見 他よりも高値で売れる そういったことから悪徳なブリーダーは利益を優先させるがために動物福祉を顧みない繁殖を行うのです。

もちろん悪質なブリーダーが一番悪いのですが、需要が変われば供給も変わります。私たち消費者が命の重みや日本で起きている悲しい現状をしっかりと理解し、問題のある繁殖業者からは迎えないという選択をすることが大切です。

私たちの選択一つ一つが積み重なれば遺伝性疾患で命を落とす子や、生涯苦しむような命を救うことができます。

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