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術後の症状(頚椎腫瘍 13)

 術後しばらくの間、毎朝看護師さんに足と手のしびれ具合を聞かれた。
 左脚のしびれは手術前より軽くなっていたが、これは寝たきりで歩かなかったせいもあるだろう。寝たきりで使わないのに、足首から先はだいぶしびれ感が残っていた。

 右腕は毎日どこかしら痛かった。二の腕が痛いと思ったら、数日後には手首が痛くなり、手首の痛みが取れたと思ったら肘が痛くなった。
 今まで痛かったところが1カ所ずつ、順繰りに痛くなってくるようだった。
 それでも、いつの間にか痛みは消えて、退院する頃にはどこも痛くなくなった。

 指は親指以外は全部しびれていたが、人差し指が一番強くしびれていて痛みもあった。
 この指のしびれは、気付かないほどゆっくりと、長い時間をかけて薄れていくことになるのだが、入院中はずっとしびれて痛かった。

 骨盤の骨を削ったところは、自分では見ることができないが、先端がややカーブを描いた傷になっているという話だった。首の骨と同じカーブなのだろう。

 腰の人たちは手術した腰の傷より、骨を削り取ったお尻の傷の方がずっと痛いと言っていた。
 手術前にその話を聞いていたので覚悟していたら、私はお尻の傷はまるで痛くなかった。
 腰の人たちは、背骨を固定するコルセットがお尻の傷に当たって痛かったのだと思う。

 抜糸するまでは毎日、首とお尻の傷を消毒してガーゼ交換してもらう。
 抜糸が済んだ頃からは傷口がかゆくなったが、掻くと痛いので撫でるだけにしておいた。

 全身麻酔の影響だろうか、手術の後で昔の手術の後遺症……喉がしびれて咳が出る、物が飲み込みにくい……が再発した。
 それに、視力も低下したような気がする。
 これらはすべて一時的なものだったが、病室でやたら咳をしていたので、同室の人たちは私が風邪を引いたと思ったらしい。
 入院患者は体力が落ちて抵抗力がなくなっているから、だれかが風邪を引いたらすぐにうつってしまう。
 自分では咳が出ても気にならなかったが、みんなを不安にさせてしまった。

 茅ヶ崎夫人は耳が少し遠いのだが、手術の後は前より聞こえなくなったと言っていた。やはり全身麻酔の影響かもしれない。
 錦糸町のおばあちゃんも耳が遠いので、この2人と話すときには大声を出さなければならなかった。
 私は喉の麻痺がぶり返して声が出にくくなってしまったので、1つベッドを隔てた茅ヶ崎夫人に話し掛けるのに、精一杯声を張り上げていた。
 それでも聞き取りにくいらしく、「ええ?」と聞き返されてばかりいた。

 私たちの病室はみんなが話し好きで、四六時中大きな声で話していたので、隣の病室にも話し声が筒抜けだったに違いない。
 洗面所で隣の病室の人と会ったときなど、「いつもうるさくて済みません」と謝っていた。
 決まって、「楽しそうでいいですね」と言われたが、やはり迷惑だったろうと思う。

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