【英語無手勝流】:助動詞の否定文

中高でちょっと英語を習ったくらいの我々は、大抵の場合、助動詞(do, can, will, may, mustなど)の否定文を、その助動詞そのものを否定している文だと思いがち。だが、それは違う

(例によって、ネイティブが本当はどう思い、どう感じてるかは、知ったこっちゃない、という立場で書いてます。無手勝流ですから)

そもそも助動詞って結局何かって言えば、(無味無臭の「do」以外は)主語なり話者なりの「腹積もり」を表す言葉。つまり、「〜のはず」とか「〜するつもり」とか「〜かもしれない」とか「〜に違いない」とか。

助動詞の否定文を「助動詞そのものを否定している文」だと誤解すると、日本語訳が、「〜のはずはない」とか「〜するつもりはない」とか「〜かもしれなくはない」とか「〜に違いないことはない」などになってしまい、なんだか意味がボヤける。下手をすると「一体何を言ってるんだ?」という事態に陥る。英語学習に出てくる例文くらいならそれでもなんとかなるが、英語の原書を読むとなると、もう、あちらこちらで、意味が取れなくてオロオロしてしまうこと間違いなし。

英語の「not」の機能は、「後ろに続く内容を否定する」ことだと分かっているくせに、「cannot (can not)」「won't (will not)」「may not」「must not」が出てくると、なぜか、その「not」は、「can」や「will」や「may」や「must」を否定しているように思えてしまう(くっついてるからね。でも違う)。

例えば、「I will go there(私はそこへ行くつもり)」の否定文「I will not go there」の「無手勝流の厳密な解釈」は、「私はそこへ行くつもりはない」ではなく、「私はそこへ行かないつもりがある」ということ。will以外の助動詞も同様。だから、「I will not go there」を、強引に分割するなら「I will」+「not go there」。

なんだか気味が悪いが、助動詞がそばにいない時の「not」は、誰でもそうやって理解している。一番わかりやすいのが「to不定詞」の否定文。

「動詞〜ing形との違い」でおなじみの例文、「He stopped to smoke.(彼は、タバコを吸うために、立ち止まった)」。これを、「He stopped not to smoke」と変えても、「彼」は依然として「立ち止まった」ままだ。否定されるのは、「not」から後ろの「to smoke」の方だから。つまり、(一体どういう状況かは分からないが)「彼は、タバコを吸わないようにするために、立ち止まった」ということ。

そもそもなんでこんなことを書き始めたかというと、「must」と「have to」は肯定文のときは、どちらも「〜しなければならない」の意味なのに、否定文になると途端に意味が違ってしまい、「must not」は「〜してはいけない」になり、「don't have to」は「〜しなくてもよい、〜する必要はない」になる、その「本当の理由」に、さっき気づいたから

「not」は、自分より後(向かって右側)は否定するが、自分より前(向かって左側)には影響を与えられないので、「don't (do not) have to」は「have to」が否定されているが、「must not」は「must」を否定していない。「本当の理由」は、つまり、これだけ。日本語に直すと、前者は「〜しなければならない」自体が否定されているが、後者は、「〜しなければならない」は否定されていない。だから。

要するに、「must not」の文は、「〜しなければならない」文のままなのだ。ただ、その「〜しなければならない」対象が、否定的内容になっているだけのこと。これは、英語独特の「I have no money(私は、無一文を、持っている)」と同じ言い回し。なのに、「must not」文を、日本語訳にするときに「〜してはいけない」とするから混乱が始まる。たとえば、「You must not eat and drink here」は、日本語ではどうしても「ここで飲食してはいけません」としか言えないが、本当は「あなたは、ここで飲食しない、をしなければならない」ということ。

因みに、この話は、be動詞でもイケる。だから、「He is not happy」は、「He is」+「not happy」であり、これもまた、「I have no money」と同じ。




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