『水ダウ』放送禁止用語4発回:メモ

先週の『水曜日のダウンタウン』で、ビートルズの来日公演のときに気絶した人を探し出して、今でもビートルズの熱狂的なファンかどうかを確かめる「説」を検証していた。

検証VTRの中で、当時(約50年前)のテレビ番組(モノクロ)の映像が流れた。その番組の中で、所謂、識者(老人)が、ビートルズに熱狂する若者をキチガイ呼ばわりした瞬間、現在(2024年)のスタジオにいたタレントたちが「わ〜、言っちゃったよ」みたいな感じになった。その後、よく、昔の漫画の中に出てくる「現在ではふさわしくない表現が含まれますが〜」的な「ことわり文」が画面に表示され、結局、件の識者の老人が3回、若者(若い女)の側も「キチガイなんて失礼ね」的な反論の形で1回、合計、4回、「キチガイ」という単語が令和のテレビで放映された。

それはいい。「キチガイ」や「メクラ」のような、今では差別感ムンムンの言葉(という烙印を押されている。特に放送業界において)も、「発明」された当時は「婉曲表現」だったのだから(輒ち、「気が狂っている」とは言うかわりに「気が違っている」と言ったのだし、「目が見えない」と言うかわりに「目が暗い」と言った)。

画面のこちら側で観ていて本当に「うわ〜」と思ったのは、令和のタレントたちの〔キチガイという単語に対する、或る種、病的とも言える反応〕の方。まるで、中世の聖職者が神を冒涜する言葉を聞かされて、慌てて十字を切っているようなテレビ業界人たちの反応に、業界人ではないこちらは唖然としてしまった。要するに「職業病」なんだろうけど、その驚きように驚いて、ちょっと引いた。

いや、テレビ業界人だけの「病気」ではない。そもそも、見逃していたあの回をTVerで確認した理由が、ネット上で、「放送禁止用語が4回も流れた」「さすが『水ダウ』」「神回!」などと「騒がれて」いたからだ。どんな「禁忌」な禁止用語(うかうか文字にも書けない、言葉は数多くあるからね)が流れたのかと思って見てみたら、ただの「キチガイ」だったわけ。この程度のことで、「神回」だの「さすが」だと騒いだり喜んだりしている「世間」の方も、言葉に対して相当に「神経症的」。

なんだろう? YouTubeの「伏せ字」だの「垢BAN」だのも同様の「病気」なんだろうけど、全部、嘘臭いんだよね。八百長感を覚える。言葉に対する〔嘘の「正しさ」〕とか〔偽の「正しさ」〕とか〔偽の「上品さ」〕が蔓延していて、かえって不誠実に思える。口先だけの「寄り添い」や「共感」と同類。

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結局、ビートルズの来日公演で失神した人は存在しないことが判明し、この「説」は、実は前提から成立していなかったにも関わらず、これが実際に放送されたのは、番組の意図が、ビートルズ云々ではなく、令和のテレビで「キチガイ」という「放送禁止用語」を流すことの方にあったのは間違いない。

その場合に、番組が伝えたかった主張は2段構えになっている。

まず、ビートルズに熱狂する若者たちをキチガイ呼ばわりした50年前の識者(老人)も、50年後の令和の時代から見れば、非常識極まりない人間にしか見えなくなる。つまり、価値観や常識というものは、完全に時代ごとに変化していくものだから、今の自分が持っている常識というものを過信するな、用心を怠るな、ということ。

その上で、放送禁止用語に対して神経症的に反応する、2024年のタレントたちの様子を流し、ここにもまた、「今の常識」に毒された者たちがいることを示して見せて、「ほら、でもやっぱり、人間は何も変わらない」と。

2024/01/17 穴藤

追記:検証VTRが終わったあとで、松っちゃんが披露した「ロケ中に絡んできた一般人に対して本気で切れる浜ちゃん」エピソードは好かった。

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