続・「マ・クベ問題」

今週の岡田斗司夫ゼミもオモシロク視聴した。特に、『DAICON FILM版/帰ってきたウルトマン』に関する色々は、興味深く、愉しく聞いた。そして、「ガンダム講座」でのドズルの悪魔についての解説も見事だった。個人的には、ドズルの悪魔は、小さめの「イデ」(=「そのときであった。イデが発動したのは…」)だと思ってるけど。

――で、愉しい「マ・クベ問題」。「脱出ロケットを回収するために、艦隊全部が速度を落とす必要などないのではないか? 回収艇か何かを派遣すれば済むのではないのか?」という(ここでも前に書いた気がする、誰でも思いつく)反論・疑問に対して、岡田斗司夫は、〔ゼナ(ドズルの嫁さん)の乗った脱出ロケットなのだから、旗艦グワジンで回収する(お迎えする)しかない。それは政治的な理由でそうするしかない。旗艦が速度を落とすのだから、当然、指揮下の艦船も全てそれにならうしかない〕と、きっとその場で思いついた言い逃れをしていた。その場で思いついた言い逃れとしか思えないのは、それが、一つの問題を解消しようとして出した回答が、更に厄介な疑問を生み出すものだから。モノをよく考える岡田斗司夫が、思いつきで口からでまかせを言ったのでない限り、そんなマヌケな回答をするわけがない。この、岡田斗司夫の不用意な言い逃れが生み出した〔更に厄介な疑問を生み出すもの〕を名付けるなら、「マ・クベは脱出ロケットの乗員がゼナ(とミネバ)であることを予め知っていたのか、いなかったのか、どっち?」問題となる。

岡田斗司夫の説では、マ・クベは、ゼナ(の乗った脱出ロケット)は旗艦グワジン直々にお出迎えしなければならない対象だと見なしていた。それはいい。そのとおりだと思う。問題は、であるなら、彼は何故、脱出ロケット発見当初、その回収に反対したのか? ということ。識別信号とか、そもそもソロモンからの脱出ロケットはザビ家専用だとかの理由で、そこにゼナ(マ・クベが崇拝するキシリアにとっての義理の姉妹)が乗っていることを知りながら、「脱出ロケットなぞ構わずに」などという大不遜を、マ・クベは何故、言えてしまえたのか? 脱出ロケットの乗員がゼナであることがマ・クベに分かっているのなら、当然、バロムやジオン兵Aにも分かっていたはずだし、もっと言えば、あの艦隊の多くの将兵にも分かっていたはずだ(グワジンだけが脱出ロケットの探知装置を備えているわけでもあるまい)。発光信号とか識別信号とか、そもそもザビ家専用だということで、脱出者の正体がわかるということは、そういうことでしょう? すると、マ・クベの「脱出ロケットなぞ構わずに」が、もし実践されてしまっていたら、当然、その所行(悪行)は、あそこにいた全員どころか、キシリアやギレン、いずれは、ジオン国民の知るところとなる(マ・クベの野郎、ゼナ様とミネバ様を見殺しにしやがった!ふてえ野郎だ!)。そんな「政治的悪手」をマ・クベが打つとは到底思えないのだけど?

いやそうではなく、脱出ロケットに誰が乗っているかは、発見当初は、マ・クベはもちろん誰にも分かっていなかったので、マ・クベは、見なかったことにしようとした、というのなら、今度は、最初の岡田斗司夫の言い逃れが怪しくなる。どこの馬の骨が乗ってきたのかもわからない脱出ロケットの回収を旗艦グワジンで(=全艦隊を巻き添えにして)行う必要があると、マ・クベはなぜ判断したのか? 岡田斗司夫の説だと、〔脱出ロケットの回収などしていると、艦隊のソロモン到着が遅れる〕とマ・クベは判断したので、バロムの指示に反対したことになっている。つまり、この場合、「大佐、ソロモンの戦いは深刻のようだな」とほのめかした時のマ・クベのアタマには〔たとえどこの誰が乗ってるかもわからない脱出ロケットであっても回収は旗艦グワジンで行わなければならず、それは全艦隊のソロモン到着の遅れにつながる〕という奇妙な(というか馬鹿げた)思い込みがあったことになる。しかし、こんなことは、およそ「優秀」なマ・クベらしくないことである。

①脱出ロケットの乗員がゼナだと知っていたから、グワジン(全艦隊)を「止めて」回収したのなら、最初に回収を渋った理由がわからない(ドズルの嫁や娘を助けないなんてことを、あのマ・クベが選択するか?)。

②脱出ロケットの乗員がゼナだと知らなかったから回収を渋ったのなら、〔グワジンで回収しなければならない=艦隊のソロモン到着が遅れる〕と判断した理由がわからない。

――まあ、大マケにまけて、最初に脱出ロケットの回収を渋ったのは、崇拝するキシリア様の「潜在的政敵(ゼナとミネバ)」を都合よく抹殺する絶好のチャンスと思ったからかもしれないが、上で書いたように、それは、マ・クベにとってあまりにリスクが大きすぎる。(そして、後で書くように、マ・クベのキシリアに対する崇拝は磯の鮑の片思いでしかないので、やめといて正解)

こんな、ドツボにハマってしまうのは、そもそも〔マ・クベが脱出ロケットの回収を渋ったのは、そんなことをしていては、ソロモンへの到着が遅れるとマ・クベだけが気づいていたから〕などと余計なことを考えるからで、あの場面は、単に、ドズルとマ・クベの対比、或いは、ドズル的な戦争(への取り組み方)とマ・クベ的な戦争(への取り組み方)の対比を描いているに過ぎない(いや、ま、「過ぎない」ということもないけど)。マ・クベの戦争にとっては、戦場から脱出してきた非戦闘員など、どうでもいい存在(=その重要性が全くピンとこない存在=虫けら)なのだ、ということを描いている場面だと理解すれば、それで充分。で、嫌々助けてみたら、なんと大当たり! ゼナとミネバじゃねえかよ! と。

で、ようやく本題。キシリア絡みで見ればよく分かる「マ・クベ問題」――と思ったら、もう結構な文字数なので、それはまた次回に。

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