分数同士の割り算の面妖さを祓う

数学嫌いだった小学生のサトウマイ(統計のおねえさん)が分数の割り算、(例えば$${\frac{1}{2}}$$÷$${\frac{1}{3}}$$)の「意味が分からなすぎて」泣いてしまったという動画を観たきっかけで、「数学嫌い生涯現役」の自分も考えた。つまり、「分数の割り算」言い換えるなら「分数を分数で割る」って、結局、何言ってんの? について。

ただ、「数学嫌い生涯現役」と言っても、算数レベルのことはわかってないと、にっちもさっちも行かないので、一応、確認がてら、次の段取りを踏む。

①$${\frac{1}{2}}$$×1。これを「正しい日本語」にすると「$${\frac{1}{2}}$$が1個」。だから、ただの「$${\frac{1}{2}}$$」。

②10×$${\frac{1}{2}}$$。これは「10を半分にする」ということ。つまり「5」

③$${\frac{1}{2}}$$×$${\frac{1}{2}}$$。これは①と②から、「$${\frac{1}{2}}$$を半分にする」ということだと分かる。具体的なイメージ例を出せば、最初に半分に切りわけたピザを、また半分にするということ。半分にしたものをまた半分にしたのだから、要するに$${\frac{1}{4}}$$。とんがった部分の内角が90度の「扇形のピザ」の一切れが頭に浮かんでいればOK。この流れでついでに進めば、$${\frac{1}{2}}$$×$${\frac{1}{3}}$$は、最初に半分にしたピザを、更に3つに分けたうちの一切れなのだから、計算なんかしなくても丸い大きなピザの$${\frac{1}{6}}$$の大きさのピザ一切れが頭に浮かぶ(よね?)。

では本題の、小学生のサトウマイを泣かせた「分数同士の割り算」。③の掛け算を割り算に変更してみると④$${\frac{1}{2}}$$÷$${\frac{1}{2}}$$。これ。この面妖さ。小学生のサトウマイが泣いてしまったのも無理はない。つまりここには、「最初から割り算要素が含まれている分数で更に割るなんて、わけがわからん!」という「不条理」が現れているのだ。

もちろん、たまにいる怠惰な小学校教師は、ここで、「分数で割るときは、割る側の分母と分子をひっくり返して、掛け算にする」と、機械的に教えてくれるだけ。$${\frac{1}{2}}$$÷$${\frac{1}{2}}$$は、機械的に$${\frac{1}{2}}$$×$${\frac{2}{1}}$$、輒ち、$${\frac{1}{2}}$$×2となり、その答えは$${\frac{2}{2}}$$、つまり「1」となる、ってなふうに。二回言おう。怠惰。そして怠慢。

これでは、小学生のサトウマイはやっぱり泣くことになる。ピザの話で言えば、最初半分($${\frac{1}{2}}$$)しかなかったピザが、分数($${\frac{1}{2}}$$)で割ると、あら不思議、一枚に戻ってしまう。「分けた」はずなのに、増えて元に戻った! これが意味不明分で泣いているのだから(多分)。

ピザの喩えは、すごく分かりやすいので、これでガンガン行くと、何かを分割するときに、1で割るときと$${\frac{1}{2}}$$で割るときの「違い」ってなにかっていうことが分かる。

一枚の丸いピザを「一人前のピザ」だと認識しているオトナたちの集団がある。このオトナたちが、一枚のピザを分けて食べようとするとき、たとえば、二人で分けるなら、「一人前の$${\frac{1}{2}}$$(半分)」ずつを受け取ることになり、三人で分けるなら「一人前の$${\frac{1}{3}}$$」ずつを受け取ることになる。

ところが、ここにコドモたちの集団が現れる。このコドモたちはさっきのオトナたちよりも体が小さいので、一枚の丸いピザの「$${\frac{1}{2}}$$(半分)」が、「一人前」になる。言い直せば、オトナの半分の量が「一人前」のコドモが、一枚のピザを貰えば、それは「二人前」のピザになる。つまり、「分数で割る」とは、ここでいう「少食なコドモ」の頭数で割るようなことなのだ。だから、「1÷1=1」は一枚のピザを一人のオトナで分けている式で、「1÷$${\frac{1}{2}}$$=2」は一枚のピザを一人のコドモで分けている式になり、どちらの式も得られる答えは「何人分になるか」。

ピザ一枚が一人前であるオトナたちが一枚のピザを分け合えば、それぞれが受け取れる量は、一人前よりも少なくなるが、ピザ一枚が二人前になるコドモや、三人前になるコドモや、四人前になるコドモにとっては、そもそもの一枚のピザが、二人前であり、三人前であり、四人前なのだから、自ずと事情は変わってくる。

例えば、$${\frac{1}{2}}$$÷$${\frac{1}{4}}$$という式は、「半分のピザを、一人前の量がオトナの$${\frac{1}{4}}$$のコドモで分けたとき、それは、そのコドモたちにとって、何人分のピザになるか」ということで、その答えは、

$${\frac{1}{2}}$$÷$${\frac{1}{4}}$$=$${\frac{1}{2}}$$x$${\frac{4}{1}}$$=$${\frac{4}{2}}$$=2

即ち、二人分のピザである。オトナの$${\frac{1}{4}}$$しか食べられない($${\frac{1}{4}}$$が一人前)のコドモにとって、オトナにとっての「半分」のピザは、二人分のピザになる、という至極当たり前のことを言っているだけの式。

分数同士の割り算を、ピザと少食なコドモを例にして、「正しい日本語」で表せば、〔切り分けられたピザの大きさ〕を〔一人前の量がピザ一枚よりも少ない少食なコドモが食べる量〕で割って、その少食なコドモにとって何人前のピザになるかを求めているのである。

トドメ的に、例えば、$${\frac{1}{6}}$$÷$${\frac{1}{2}}$$は、$${\frac{1}{6}}$$の大きさのピザは、オトナの$${\frac{1}{2}}$$しか食べられないコドモにとっては、何人前になるか、ということ。答えは、$${\frac{1}{3}}$$。いくら、オトナの$${\frac{1}{2}}$$しか食べないコドモであっても、$${\frac{1}{6}}$$の大きささしかないピザは、$${\frac{1}{3}}$$人前にしかならない、という、これまた極当たり前のことを言っているだけ。

はい、お疲れ様。


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