アイドル—抽象と具体

序文

 まず、本稿の性格について触れておくと、これは僕のたれごとなので、全く正確性に欠けるところがあるかもしれない。印象論に終わるかもしれない。でも、今はただ印象論を書いてみようと思って書いているのだということを述べておきたい。

抽象と具体

 思考ってどこか抽象的になりがちな気がするのだけど、で、それ自体には何の文句もないのだけど、抽象ってやっぱりぼんやりとしているところがあって、だから具体が必要になってくるんだと思う。ある抽象にとってのある具体が一個あろうが三個あろうが、結局言いたい抽象には影響ないんじゃないかと思われるのだけど、一個から三個に増えることでぼんやりとしている抽象がより深みを増す感じがある。だって、具体が増えた分、その具体から導かれる抽象の作用の仕方が具体の地点では別物に分かれていくということが分かるんだから。これは実は大きい。だから、具体を知ることは大事で、具体を知るというのは勉強する範囲を広げてみるというのが単純に効果的。なぜなら、同じ領域の議論だと具体の差異が本当に微かになってきてしまい、その微かな差異を把握して頭に蓄えておくのはなかなか難しいから。これとは反対に複数分野の議論だと具体の差異がはっきりするから、その分だけ脳が蓄えやすくなる。まぁ、プロというのは同じ領域の類似議論の差異を把握できてなきゃいけないのかもしれないけど。

アイドル—抽象と具体

 現代のアイドルに関して、大体のイメージはみんな重なるところがあるかもしれなが、その多様性ゆえに「アイドル」の一言ではとても何かを語りづらい時代になったように思える。例えば、ラフ×ラフというアイドルグループがいて、個人的には応援している*1のだけど、このグループは既存のアイドル像を揺さぶらせに来ているグループの代表例と言える。このグループはプロデューサーの佐久間さんの考えなのだろうけど「大喜利×アイドル」をテーマに活動している。実際に、『考える時間をください』*2という曲では、曲中に大喜利をやるという特殊な試みをしている。で、このアイドルの前に大喜利をしているグループがなかったかというと、既にあって、有名どころでいうと日向坂46の冠番組である「日向坂で会いましょう」という番組の中では、幾度となく大喜利企画が行われてきた*3。でも、個人的な感覚として、大喜利とアイドルの割合で考えるならば、日向坂46は大喜利:アイドル=3:7くらいのイメージであるのに対して、ラフ×ラフは大喜利:アイドル=6:4くらいのイメージである。つまり、この数字感覚を基に考えると、どちらかというと芸人よりなのである。もちろん、彼女たちがアイドルであることに疑いはない。そこで、ラフ×ラフや日向坂46という「アイドル」の具体例を踏まえて、抽象としての「アイドル」を考え直してみる。
 アイドルであるないを判断するにはどうしたら良いのか、この問いは抽象的な言葉としての「アイドル」を僕含むオタク*4がどう使っていくか、換言すれば、アイドル論の射程に関わる話なので、重要である。この点に関して、アイドルの割合が1(小数点以下は切り落とす)あればアイドルなのではないかと思う。そして、その尺度は「(自分たちの楽曲を)歌って踊る」ことであるように思う。こう僕なりに一旦定義してみたことで、じゃあ他のグループの楽曲をコピーして歌って踊るだけの存在はアイドルにならないのかとか、歌って踊らずに大喜利を含めたバラエティの活動しかしないけどファンもグループ名ないし個人の活動名を持つ存在はアイドルにならないのかとか、様々な疑問が惹起される。そういう観点を持っている人には具体例と共に語ってほしい。抽象的に語ることだけではぼんやりとした状態からなかなか脱却できないので、具体例と共に熱く語ってほしい。そして、オタクが頭の中でこういう要素があればアイドルだと考えることもあって良いのだが、実際に運営の方がこういうグループのアイドルを作りました!と言うこと、大人が幾ばくかであれ本気になってアイドルをプロデュースすること*5、そのような実際の動きがないと「アイドル論」は展開していかないので、アイドル論に興味を抱く人全てにとってプロデューサーの存在は欠かせないものである、ということを少し強調して本稿を締めたい。

末注

*1:Youtube動画のおすすめは、ビンゴカラオケ企画とjk口喧嘩の動画で、曲のおすすめはデビュー曲である『100億点』、『ワタシイロ光る』、『laughing!』である。
ビンゴカラオケ企画のリンク
 前編(https://www.youtube.com/watch?v=nO_vEbgfT1w)
 後編(https://www.youtube.com/watch?v=hkiEIT7HwH4&t=799s
jk口喧嘩のリンク
https://www.youtube.com/watch?v=KRSnzLqGeG8
*2:『考える時間をください』のMVリンク
https://www.youtube.com/watch?v=QsKNi90a1IU
*3:例えば、直近で思いつくのは2023.10.08深夜放送の「芸術の秋!新たな才能発掘バトル!」にて、画像を見てタイトルをつけるというIPPONグランプリのお題のような大喜利が行われていた。
*4:若干派生する話なのだが、オタクという時、「オタ」もっと言えば、「ヲタ」という語を使う方がより「オタク」らしさが出るように思える。このことを僕は興味深く感じている。この点に詳しい方や、関連書籍などをご存知の読者がいれば、是非ご教示いただきたい。あるいは、単に読者諸賢の意見をお聞かせ願いたい。
*5:本気でプロデュースしていない人がいると言いたいというよりは、プロデューサーはそのアイドルの人生を活動期間(にとどまらないかもしれない)の間預かることになると思うので、せめてアイドルに挑戦している間だけは本気で取り組んであげてほしいという一オタクの願望である。当然、僕にはプロデューサーの経験がないので、何が本気なのか・どれだけプロデューサーが大変なのかは分かり得ないものであるので、僕の言葉には重みがないといえよう。


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