この景色
今ここに現れている文字を打ち込んでいるパソコンの奥にはこの景色がある。もう10ヶ月もそうだ。時には暗くなったり、雨が降ったり、雪が降ったりもしていた。でも凡庸な目をしているからなのだろうか、僕には同じ景色に見えた。同じというのは、異国性、日本ではないという点にあるように思われる。
10ヶ月も日本を離れると日本語が自分にとって扱いやすい言語という感じになる。日本人でずっと日本に住んでいる人は日本語を使うのが当たり前なので、扱いやすいなどとは思わないだろう。扱いやすいというのは相対的な話で、自分はここにくる前に比べて日本語が下手になったと思う。英語はどうだろうか。来る前よりは馴染んできている。しかし、まだ上手くなれない。下手のままだと思う。とすると、僕には下手な言語しか残っていないことになるのである。
日本に帰ったら言語にもう少しちゃんと向き合おうと思う。そこではあえて小学生的な言語の練習を積んでみようと思う。単語・漢字を書く。例文を覚える。音読する。動詞の変化を書いて覚える。時々暗記テストをする。少し長めの文章を書いてみる、など。
自分は10ヶ月で自分の可能性を広げたが、自分の能力は下げてしまったと思っている。簡単に言えば、短期的な視点では失敗に、長期的な視点では成功になったということである。二兎を得ることもできたかもしれないが、マイペースを大事にすることだけは忘れてはいけない。「二兎よりもマイペースを」、というわけだ。
この景色を自分の目で見ることは2度とないだろう。しかし、異国の匂い、空気感は自分の中に深く眠って、時々目を覚ましてゆくことになるはずだ。この経験をどうやって持ち帰ろうか、それは帰りの便でゆっくり考えることにしよう。Don't haste, keep your pace.