2003年地学A(固体地球分野)

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問1で、大陸斜面に形成される地形は、海底谷だから、答えは5。

カール:山地において、氷河の源流部で形成された谷のことで、氷河の侵食作用によって形成された地形の1つである。

河道:川の流れ下る道筋。 堤防がある場合は、堤防と堤防に挟まれた区間を指すことが多い。

海溝:海底地形の名称としては、「細長く、特徴的に非常に深い、非対称断面を示す海底の凹地。比較的急峻な斜面を有する。」と定義される。

横谷:谷は広義には周囲より標高が低くなっている地形であり、細長く溝状に伸びた低所の総称をいう。地図においては、尾根とは逆に等高線が凹状になって表れる。ただし、広義の谷は谷底が一方向に向かって低くなっている必要はない。山脈に沿って流れる谷を縦谷(じゅうこく)、山脈を横切る谷を横谷(おうこく)という。

海底谷:海底の大陸斜面に存在する渓谷である。海底谷は一般に大陸からの大河川の延長として海底へ連続的に伸び、最大距離数百km深度1kmに及ぶ。

問2で、大陸棚斜面を下って深海底に至る流れを表しているものは、地震などによって土砂と水が混じること。答えは2。海流によって流されるのではない。嵐の影響は海の表層で大きいから、嵐で流れるものではない。陸上の地滑りというより土石流に近い。

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問3では、三角州の形成について答える。大量の砂や泥が必要だから、1と2は×。外洋に面さないところにも三角州は発達するから4も×。ゆえに答えは3。

問4で、堆積作用を考えたとき、砂にかかわる場合が多い。この中で、リアス式海岸はせまい湾が複雑に入り込んだ沈水海岸のこと。リアス海岸という言い方が最近一般的になってきている。この場合の答えは4。

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問5で、選択肢から選ぶ。イ)まず人の爪でも容易に傷がつくのは?、ウ)硬い鉱物は?、エ)ダイヤモンドのような硬い鉱物が使われるのは研磨剤。という知識から探ると答えは3または5。ウで研磨剤に使われるのはコランダム。そうすると答えは3。よって、やわらかい鉱物はタルクとなる。

問6で、ダイヤモンドはキンバリー岩の中から出てくる、という知識は欲しい。答えは4。

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問7で、ウィキペディアによれば、モースの硬度計とは、主に鉱物に対する硬さの尺度の1つ。硬さの尺度として、1から10までの整数値を考え、それぞれに対応する標準鉱物を設定する。ここで言う硬さの基準は「あるものでひっかいたときの傷のつきにくさ」であり、「たたいて壊れるかどうか」の堅牢さではない。モース硬度が最高のダイヤモンドであっても衝撃には弱く、ハンマーなどである一定の方向からたたくことによって容易に砕ける。また、これらの硬度は相対的なものであるため、モース硬度4.5と示されている2つの鉱物があったとしても、それらは同じ硬度とは限らない。これは、蛍石で引っかくと傷がつかず、燐灰石で引っかくと傷つくということを示すのみである。

数値間の硬度の変化は比例せず、硬度1と2の間の差が小さく、9と10の間の硬度の差が大きいことも特徴的である。一見すると不便な見分け方のようでもあるが、分析装置のない野外においては、鉱物を同定するために役立つ簡便で安価な方法である。

モース硬度の「モース」は、この尺度を考案したドイツの鉱物学者フリードリッヒ・モースに由来している。

「滑石方(かっせきほう)にして蛍燐(けいりん)長く、石黄鋼(いしおうこう)にして金色なり」という語呂合わせの覚え方がある。

滑石、石膏、方解石、蛍石、燐灰石、正長石、石英、トパーズ(黄玉)、コランダム(鋼玉)、ダイヤモンド(金剛石)の順に硬くなる。

以上のことより答えは1。

問8は、上の順番に従うと答えは2。

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◎問1はウラン鉱床について。ウラン鉱床のでき方は、鉱山によって異なる。

礫岩型(れきがんがた) 
  南アフリカ Witwatersrand 金-ウラン鉱床      
  カナダ Blind River鉱床
不整合型(ふせいごうがた) 
  カナダ Athabasca地域 シガーレイクウラン鉱床       
  オーストラリア北部 Alligator River
砂岩型(さがんがた) 
  アメリカ コロラド高原
鉱脈型(こうみゃくがた) 
  チェコスロバキア ヤヒモフ鉱山
角礫岩型(かくれきがんがた) 
  オーストラリア オリンピックダム鉱山

安山岩、斑レイ岩の中にはなさそう。古い地質から採掘されているので、答えは4。

◎問2の原子力発電について。まず、2と3は明らかに間違いと分かる。原子力発電は、原子炉の中でウランが核分裂する時に出る熱で水を沸かして蒸気を作り、その蒸気の力でタービンを回し、連結している発電機で電気を起こす。タービンを回し終えた蒸気は、復水器で冷やされて水に戻り、再び原子炉へ送られる。水を沸かして蒸気に変えて,蒸気の力でタービンを回して発電するというしくみは原子力発電も火力発電も同じ。

4も間違い。よって残りは1となる。

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◎問3で、衛星の軌道の問題。ランドサットは、北極、南極の上空付近を回る「極軌道」を通る。「極軌道」とは軌道傾斜角が90度、もしくはこれに近い角度の軌道のことをいう。衛星が軌道を周回しているあいだ、地球が自転するため、北極・南極を含め、数日後には地球全体をカバーすることができまる。そのため、全地球の観測に適しており、多くの地球観測衛星は極軌道、あるいは極軌道に近い軌道に投入されている。一方、気象衛星のひまわりは、地上からつねに静止して見える、「静止軌道」の衛星である。「静止軌道」とは、軌道傾斜角度0度、つまり、赤道上空の高度約36,000kmの円軌道を毎秒約3kmの速度で周回する軌道のこと。衛星の周期は、地球の自転周期と同じ約24時間なので、地上から見るとつねに静止しているように見える。そのため「静止衛星」といわれる。気象衛星や放送衛星など、広く利用されている。(https://www.weblio.jp/content/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E8%A1%9B%E6%98%9F%E3%81%AE%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E7%9A%84%E3%81%AA%E8%BB%8C%E9%81%93)

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1は地球が自転しているから×。2は?。3は自由には決められないと思う。飛び続けるためには高度や打ち出し速度など条件があるはず。4は地球が赤道方向に膨らんだ楕円形であることを考えれば×。よって答えは2。

◎問4は、ひまわりの可視光画像と赤外線画像について。1の可視光より赤外線が波長が長いのは×。2では赤外線は夜間でも観測可能なので、×。3は赤外線画像から雲の高さが分かるので〇。4は地面や海面の情報も得られるから×。よって答えは3。

https://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/123.html より気象衛星「ひまわり」について

気象衛星「ひまわり」は、約36,000kmの上空の静止軌道から地球を観測している。「ひまわり」には、3種類の観測装置(センサー)が搭載されている。一つは、可視センサで雲の形や明るさを観測する。二つ目は、熱赤外センサで雲や海・陸の温度を観測する。三つ目は、中間赤外センサで、目に見えない大気中の水蒸気の分布の観測を行う。このうち、可視センサで観測した雲の明るさから雲の厚さが分かり、熱赤外センサで観測した雲の温度から雲のてっぺんの高さが分かるので、これらのデータによって雲の種類を推定することができる。また、雲の形に注目して1時間毎の雲の動きを見ることによって上層の風向・風速を推定することができる。これらに地上での観測データを組み合わせて天気の分布を推定し、天気予報に役立てている。

参考:https://www.data.jma.go.jp/sat_info/himawari/satellite.html

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◎問5で、燃料資源の天然ガス、石油、石炭について。まずは主成分をみると、天然ガスは、天然に産する化石燃料としての炭化水素ガスのことである。メタン、続いてエタンといった軽い炭素化合物を多く含み、その他の炭素化合物も含む。石油は、炭化水素を主成分として、ほかに少量の硫黄・酸素・窒素などさまざまな物質を含む液状の油で、鉱物資源の一種である。地下の油田から採掘後、ガス、水分、異物などを大まかに除去した精製前のものを特に原油という。石炭とは、古代(数千万年~数億年前)の植物が完全に腐敗分解する前に地中に埋もれ、そこで長い期間地熱や地圧を受けて変質(石炭化)したことにより生成した物質の総称。石炭化が進むに従って酸素や水素が減って炭素濃度が上がってゆき、外観は褐色から黒色に変わり、固くなってゆく。炭素の含有量は泥炭の70%以下から順次上昇して無煙炭の炭素濃度は90%以上に達する。これによって、候補は4または5。ただし、石炭の素は大森林であるので、先カンブリア時代とは考えにくい。よって答えは4。石油は多孔質岩中に液体として蓄えられる。

◎問6で、石油の素は生物の遺骸。ゆえに1か2。生物の遺骸が大量にたまるのは海底堆積物である。溶岩の中には普通は堆積しない。

参考:https://kids.gakken.co.jp/kagaku/kagaku110/science0274/

よって答えは1。

◎問7で、石油を資源として採掘するにはある程度たまっていることが必要。背斜構造のところにたまるので、答えは3。

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https://oil-info.ieej.or.jp/whats_sekiyu/1-2.html

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◎問8で、岩石と水の相互作用により濃集して鉱床を作るものはアルミニウム(Al)。よって答えは4。

P(リン)鉱床
リン鉱石資源として重要な鉱床は、成因により3種類に分類される。リンの採取自体は、鉱石以外に活性汚泥や鉄鋼スラグなど産業廃棄物からも技術的に採取が可能である。

・化石質鉱床
古代の動植物や微生物が起源となった比較的大規模なリン鉱石鉱床で、アメリカ、モロッコ、ヨルダンなどに存在する。現在のリン鉱石の大半はこの鉱床から供給されている。
・グアノ鉱床
別項を参照。鳥糞石、糞化石質リン鉱石ともいう。ペルーのチンチャ諸島、ナウル、アンガウル島、日本国内では沖大東島(ラサ島)などに存在していた。
・火成鉱床
地殻変動によって生じた金属鉱床などと同じ無機質のリン鉱石鉱床で、ロシアのコラ半島に大規模なものが存在する。

Zn(亜鉛)鉱床(閃亜鉛鉱)

熱水鉱床、スカルン鉱床、黒鉱鉱床などに産する。晶洞には結晶の形が明らかなものも少なくないが、塊状で産することが多い。方鉛鉱、黄鉄鉱、黄銅鉱を伴う場合が多く、特に方鉛鉱とは密接に伴って産出する。そのため鉛鉱床、亜鉛鉱床はこれらを一括して鉛・亜鉛鉱床と呼ばれることも多い。

S(硫黄)は天然には数多くの硫黄鉱物(硫化鉱物、硫酸塩鉱物)として産出する。単体でも産出する(自然硫黄)。

Al(アルミニウム)は、ボーキサイトから精錬される。ボーキサイトは、酸化アルミニウム(Al2O3, アルミナ)を 52ないし57パーセント含む鉱石である。実際には、水酸化アルミニウム鉱物の混合物であり、鉱物ではなく岩石である。

◎問9で、NiやCrの鉱床は、正マグマ鉱床。よって答えは1。

正マグマ鉱床とは、苦鉄質に富むマグマの結晶分化および固化に伴って生成されたもの。マグマだまり中において結晶分化作用の比較的初期に生成される。この鉱床においては白金族元素のほか、クロム、銅、ニッケル、チタン、バナジウムなどが産出される。

スカルン鉱床とは、熱水鉱床の一種である。マグマから花こう岩ができる場合,その末期に生じる高温高圧のマグマ水(鉱化流体)は水分,塩素,弗素,硫黄(硫化水素),炭酸ガスなどの揮発成分や珪酸,アルカリ,アルミナを含み,錫,タングステン,モリブデン,銅,鉄,鉛,亜鉛など,もともとマグマ中にあった多くの有用金属を溶かし込んでいる。この鉱化流体は普通,花こう岩体の頂部に集まり,その強力な蒸気圧によって周囲の岩石の層理,節理や割れ目(断層,張力裂罅)などの弱線に沿って浸入し,これを破りながら外部,一般には上方へ逸散する。この途中,冷却により流体は熱水溶液(熱水)になる。この熱水が石灰岩,苦灰岩などの炭酸塩岩に遭遇すれば,熱水はこれと反応して,炭酸塩岩を珪灰石,ザクロ石,透輝石,灰鉄輝石,アクチノ閃石,緑簾石などの集合であるスカルン(鉱石スカルン)に変える。このスカルンには錫石,灰重石,輝水鉛鉱,磁鉄鉱,赤鉄鉱,黄銅鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,磁硫鉄鉱,黄鉄鉱などの金属鉱物が伴われることが多く,金属鉱床となる。元素によって移動距離が異なるので,鉱物種ごとに帯状構造を示すことがある。これはまた花こう岩との接触部付近で炭酸岩塩を交代して産することから,かつては接触交代鉱床と称された。しかし,必ずしも上記の接触部に鉱床ができるとは限らず,それより離れた石灰岩中に生じる方が多いことがわかり,今ではスカルン鉱床という言い方が一般的である。(http://www.msoc.eng.yamaguchi-u.ac.jp/collection/origin_22.php)

ペグマタイト鉱床 とは、マグマの固結が進むとともに,マグマ中の錫(スズ),タングステン,モリブデン,銅,鉛,亜鉛,金などの有用金属や,リチウム(Li),ベリリウム(Be),ジルコ二ウム(Zr),セリウム(Ce),ニオブ(Nb),タンタル(Ta),イットリウム(Y),ランタン(La)などの希元素,さらにウラン(U)やトリウム(Th)などの放射性元素が火成岩には入らず,水や揮発性成分とともにマグマの残液(残留マグマまたは残漿)に集まったものが、花こう岩などと反応し,その一部を円筒状,漏斗(ロート)状に交代した岩石となるが,これがペグマタイト鉱床である。このペグマタイトの大規模のものが鉱山として採掘されている。

黒鉱鉱床は、黒鉱という鉱石の鉱床。黒鉱とは、日本海側の鉱山で採掘される外見の黒い鉱石の総称である。黒い鉱石の正体は、閃亜鉛鉱(ZnS)、方鉛鉱(PbS)、黄銅鉱(CuFeS2)などであり、それぞれ亜鉛や鉛、銅などの鉱石として広く採掘された。黒鉱は海底へ噴出した熱水から沈殿した硫化物などが起源であると考えられている。日本国内に見られる黒鉱の大半は、新生代第三紀のグリーンタフ変動に伴って生成されている。黒鉱の周囲には金や銀などが濃集することから、江戸時代には主にそれら貴金属が、明治時代に入り精錬技術が向上するにつれて黒鉱自体が注目されるようになった。また、黒鉱は金属鉱物のみでなく、大量の沸石類や石膏、重晶石などを伴う。


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地震について。

問4ではP波とS波の性質について。P波は進行方向に振動する縦波。S波は進行方向と直交する方向に振動する横波。まず4は×。縦波は液体を伝わるが横波は液体を伝わらないことから1と3も×。よって答えは2。P波はS波よりも速く伝わる。

問5で、初期微動とは観測点にP波が到着してからS波が到着するまで観測される振動。横揺れの主要動はS波。2は×。震度は計測震度計によって観測される波形を使う。P波の振幅からではない。4も×。初期微動の継続時間(P波とS波の到達時間差)から震源距離を推定できるので3は○。よって答えは3。

https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/kyoshin/kaisetsu/calc_sindo.htm

問6で、震度について誤っているものを選ぶ。上の参考例からもわかるように震度はマグニチュードから決めるのではない。よって答えは3。

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問7で、地滑りについて誤っているものを選ぶ。変質を受けていない花崗岩は崩れにくい。よって答えは3。

問8も誤っているものを選ぶ。山崩れを起こす原因は、多量の降雨、地震の揺れ、山腹斜面の勾配の増大、など。地下水のくみ上げは地盤沈下の原因。よって答えは4。

問9で、土石流は谷を流れてくる。図の中で谷の下流にあるのは4。よって答えは4。ちなみに、等高線で高い方に凸は谷、低い方に凸は尾根。



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