『3653日目』によせて その2

その1の最後に震央分布図を引きました。ちなみに、地震用語ですが、震源というのは破壊の始まった点を指します。

気象庁の特設ページはこちらです。

この中に余震活動の領域についてというページがあります。こちらを見て頂くと赤いラインで囲まれたエリアがわかります。つまり、余震域とは壊れたエリアと思って良いでしょう。こんなに広い範囲が壊れたのです。マグニチュードは放出されたエネルギーの関数ですから、マグニチュードの大きな所はそれだけ歪みが溜まっていたと言うことになります。

ついでながら、震度というのは観測点に於ける揺れの大きさを気象庁が10段階で示しているものです。これは最大が7です。今は震度計というもので計測しています。具体的には以下のように決められています。ご興味があればご覧ください。明治17(1884)年に震度の計測が始まりましたが、職員の体感によるものでした。平成3(1991)年、震度計を開発し、平成8(1996)年4月からは、震度観測は全面的に震度計で行われることになり、体感による観測は廃止されました。

本震は2011年03月11日14時46分に三陸沖で発生しました。深さ24kmでモーメントマグニチュード9.0、最大震度は7(栗原市築館)でした。昔の理科の教科書にマグニチュード9以上は無い、と書いてあるものがありました。これは気象庁が昔採用していた地震計の記録からの計算方法では算出出来なかったからだそうです。とにかく、従来の方法では大きすぎて計算できず、違う方法で計算したら9になりました。確か速報値は8台だったと思います。あとから9に訂正され、驚いた記憶があります。

マグニチュードは地震記録から計算されて、様々な計算方法があるようです。知りたい方はこちらをご覧になってください。

この地震では津波の被害がすさまじかったのですが、津波については稿を改めて書くことにします。

津波が来なかった地区でも揺れによる被害はかなりありました。地割れの歌も見られます。つくば市のわたしの職場でも建物の配管がかなり被害を受けたり、建物と建物を繋ぐ渡り廊下が落下してしまったり。食器棚が倒れたりスチールラックを固定していたL字金具が引きちぎられていたのを見たとき恐ろしかったです。これで、うちの職場でけが人が出なかったのは運が良かったとしか言いようがありません。薬品管理等も格段に厳しくなりました。

ところで、地球の形を聞かれたら「まる!」でOK程度のざっくりさですが、地震についてもう少し書きます。

まず、地震とは何か。教科書によれば「地震は地下の岩盤に蓄えられた歪みエネルギーの一部が断層という「ずれ破壊」に よって急激に波動エネルギーに変わる現象。」とあります。地震が起きるメカニズムを簡単に言うと(専門家に叱られそうですが)

地下の岩盤に力がかかる(ぎしぎし)

地中にひずみがたまる(ひえ~)

ある点から境界面(断層面という)がずれ始める(も~だめぇ!バキッバキッ)

断層面が大きくずれる→ひずみが解消される
地面が地震波で揺れる(グラグラ)

こんな感じでしょうか。

では、なぜ地震が起きるのでしょう。また、きわめてざっくりとした説明ですが、地球の表面はプレートと呼ばれる厚さ数10kmほどの10数枚の岩石の板に覆われ、これらはマントルの上に浮いていると思ってください。

図1


https://www.hinet.bosai.go.jp/about_earthquake/part1.html より

プレートはゆっくり動いていて(太平洋は10cm/年)それぞれのプレートが違う動きをするので境界周辺はひずみがたまります。ちなみにプレートには大陸型プレートと海洋型プレートの2種類あります。海は陸よりも重い岩石でできています。だから海と陸がぶつかると海は陸の下に沈みます。日本やフィリピン、インドネシアなどはこのタイプです。陸と陸がぶつかったらどちらが重いということはないので互いに盛り上がってしまいます。ヒマラヤ山脈はこのタイプです。プレート境界には大きく3種類あって、いま紹介したものは収束型(convergent)境界(集まる(海溝:oceanic trench)沈み込み帯)と言います。大西洋が拡大していくような場所は発散型(divergent)境界(離れる(海嶺:oceanic ridge))といいます。代表的なのはアイスランドです。またもうひとつ、プレート同士がすれ違うタイプは平行移動型(translational)境界といい、トランスフォーム断層(:transform fault)を形成します。有名なのはサンフランシスコ周辺です。

図2

http://pubs.usgs.gov/gip/dynamic/slabs.htmlより

例えば、2011年3月に起きたM3以上の地震の分布をみると多くの大きな地震は偏って起きていることがわかります。

図3

日本付近は4枚(3枚という人もいます)のプレートの境界部になっているので、地震が多くなっています。世界の陸地の0.3%未満である日本周辺で世界の地震の10%が起きているのです。

調子に乗ってもう少し続けます。そもそも地球の表面で変動が起きるのはなぜか?一口で答えると地球内部に発生した熱を排出するためと言えるでしょう。水を入れ、下から熱したとします。下の部分の水は熱を受け取って軽くなり上昇します。→表面で冷やされて、熱を外へはきだします。→冷たくなった水は再び下へ帰っていきます。このようにして水は、自らが運動することによって熱の運び手となり、効率よく熱を運搬し排出します。このような熱の輸送を対流と呼び、地球の中でもまさにこのような対流が起きているのです。

図5

地球の内部の大部分は、マントルという岩石からなる部分で、固体です。マントルは固体ですが、地球の中は温度が高いので、ゆっくりと運動します。(地球内部が溶けているのではありません。)ただし地球のマントルが水と違うのは、下から熱せられるというよりは、マントル中にあるウランなどの放射性元素の壊変によって熱が供給されていることです。地殻やマントルを構成する岩石は固体ですが、長い時間をかけたり、強い力を受けると粘土のように元に戻らない変形(塑性変形)を起こします。このため、力学の目で見ると、岩石も水や空気と同じように流れる物体(流体)として扱うことが出来るのです。マントルの対流運動は、岩石は粘りけが非常に大きく、ゆっくりとしか動けません。また、岩石は熱伝導率がとても小さいです。そのため、マントル対流は、熱伝導だけで輸送できる熱より数10倍くらいも多くの熱を地球内部から運び出しています。

図4

http://pubs.usgs.gov/gip/dynamic/unanswered.htmlより

さて、日本付近に戻ります。日本では太平洋プレート(海洋プレート)が日本列島が乗っているユーラシアプレート、あるいは北米プレートという大陸のプレートの下に沈み込んでいます。

画像6

その結果、日本列島はぎゅうぎゅう押されます。海にも陸にもひずみがたまります。

図6

https://www.hinet.bosai.go.jp/about_earthquake/part1.html

補足:最近気象庁の記者会見で、発震機構まで解説するようになりました。発震機構
地震は、一般的には地下で断層がずれ動いて発生するものです。「発震機構」とは、地震を起こした断層が地下でどのようになっているか(断層がどちらの方向に伸びているか、傾きはどうか)とその断層がどのように動いたかを示すものです。 発震機構は地下の断層の状態を表すと同時に、地下で地震を起こす元になった力がどのようであったかも教えてくれます。これは、断層と地下の力の向きがある一定の幾何学的な関係にあることが分かっているからです。
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/mech/kaisetu/mechkaisetu.html

そして、それともなって正断層型地震、逆断層型地震という用語を使うようになりました。ざっくりいうと、正断層型地震は引っ張る力が卓越しています。また逆断層型は押す力が卓越しています。力の向きは発震機構を求めることによってわかります。

画像11

画像12

https://www.ajiko.co.jp/yomimono/imamura02.html

力のかかり方は、地震が起きる場所によってある程度予測されていて、日本付近やアメリカ西海岸付近など、海洋プレートの両端部に起こる地震は、次の四つのタイプに分けられます。

(1)大陸プレートが海洋プレートに押されるために、日本列島付近で生じる圧縮ストレスが原因するもの(内陸性直下型地震、すなわちプレート内地震)
(2)海洋プレートが沈み込むために、折り曲げられる際に生じる引っ張りに原因するもの(海洋性浅発地震)
(3)大陸プレートと海洋プレートがすれ合う部分で、大陸プレートが海洋プレートに引き込まれたあと、元に戻る際の“はね上げ”で生じるもの(プレート境界性巨大地震)
(4)一度、折れ曲がった海洋プレートが再度引き伸ばされることによって生じるもの(深発性地震)


最近のニュースで、アスペリティーという言葉を聞いたことがあるかと思います。解説はこちらをお読みください。

https://www.nhk.or.jp/sonae/column/20121201.html

画像8

かいつまんでいうと、プレート境界は平らな面ではなく、凹凸があったり、構成岩石の種類や含有水分の量が違ったりしています。地下の100km程度より深部では温度が高いため、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む時、境界部はほとんど摩擦力を受けずにスルスルと沈み込んでいきます。このため、深いプレート境界では、地震は起きません。しかし、浅いところでは二つのプレートはくっついている部分があり引っかかっているので、陸側のプレートも引きずり込まれていきます。その結果、陸側、東日本の場合には東北地方が太平洋プレートが西へ動いているのに伴って東西方向に圧縮されています。

陸側のプレートの変形がたまってくると最後には堪えきれなくなって、大きく東に向かって跳ね返ります。これが、2011年に東北地方太平洋沖で起きた地震発生の仕組みです。年間 約8cm程度のプレートの沈み込みが500年続くと40m程度変形し、これがM9.0の地震によって元に戻りました。地震時の大きな滑りは、大変長い間の変形の結果です。

画像9

https://www.hinet.bosai.go.jp/about_earthquake/part1.html

さて、日本列島では海溝型地震のほかに内陸型地震と呼ばれるものも起きます。陸側プレート内の浅いところに発生する内陸型地震は、プレート同士の押し合う力を受けて地殻内にたまった歪みが、岩盤の破壊強度を超えることによって生じます。 地下における力の加わり方は複雑で、力の働く向きの組み合わせの違いによって、様々なタイプの断層運動が発生します。また、いったんこのような断層を生じた場所は、繰り返し地震を発生させることが知られています。このように繰返し地震を発生させてきた断層は、とくに「活断層」と呼ばれています。兵庫県南部地震や熊本地震はこのタイプです。放出されるエネルギーは海溝型地震よりも小さいですが、震源からの距離が近いので、揺れによる被害は大きくなります。


画像10

https://www.hinet.bosai.go.jp/about_earthquake/part1.html より

少し長くなってきたので、その3に引き継ぐことにします。

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