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高校数学を振り返る(1):数学Ⅲ極限の問題+テイラー展開、近似精度

※ この記事は作成途中の記事です。今後も加筆、修正をしていく予定です。出来たところまでを公開しています。

今年の夏季連休中に実家に帰省し、自分の部屋の片づけをして、大学受験生の時に使用していた参考書の処分をした。(ただ捨てるより1円でも売れれば良いので)綺麗なものはブックオフで売った。学生時代(大学院修士課程在籍時)は大学院生としての研究を第一優先としながらも、教育関係のアルバイトをしていた。片づけをしている際に、アルバイトノートに書いたことや関連事項などをもとに、Note記事を作成したいと思い、不定期で「高校数学を振り返る」シリーズを作成することにした。本シリーズは、大学で習う数学の内容を必要に応じて利用しながら、大学で数学、物理、工学などを習ったからこそ気づくことができた(自分は受験生時代に気付いていなかった)、高校数学の「本質」、問題を解く際の視点などを自分なりにまとめたものである。


本記事で扱う問題

本記事では、『厳選! 大学入試数学問題集 理系272』(河合出版)の数学Ⅲの章の問題161(2)を取り扱う(この書籍は最近発売されたものである。最近の入試に関連する記事を書きたいと思ったため、私が受験生の頃に使用していた参考書の最新バージョンをいくつかAmazonで購入して、問題をピックアップした)。問題161(2)は以下の通りである。

等式

$$
\lim_{x\to 1} \frac{\sqrt{2x^2+a} - x-1}{(x-1)^2} = b
$$

が成り立つような定数$${a, b}$$の値を求めよ。

1. 問題を解く

私は$${f(x) = \frac{\sqrt{2x^2+a} - x-1}{(x-1)^2}}$$とおいて、$${f(x)}$$を以下のように変形した。

$$
f(x) = \frac{1}{(x-1)^2} \frac{(2x^2+a) - (x+1)^2}{\sqrt{2x^2+a} + (x+1)}
= \frac{x^2-2x+(a-1)}{(x-1)^2 (\sqrt{2x^2+a} + (x+1))}
= \frac{(x-1)^2 + (a-2)}{(x-1)^2 (\sqrt{2x^2+a} + (x+1))}
$$

$$
\therefore \ f(x) = \frac{1}{\sqrt{2x^2+a} + (x+1)} + \frac{a-2}{(x-1)^2 (\sqrt{2x^2+a} + (x+1))}
$$

このように変形したとき、第1項は$${x\to 1}$$の極限で有限の値$${\frac{1}{\sqrt{a+2} + 2}}$$をとる。第2項は$${a-2\neq 0}$$の場合、分母の$${(x-1)^2}$$により発散する。そのため、$${x\to 1}$$の極限が有限となるには、$${a-2=0}$$で第2項がなくなるように$${a}$$を設定する必要がある。この必要性から$${a=2}$$と決めることができる。

$${a=2}$$の場合、$${f(x) = \frac{1}{\sqrt{2x^2+2} + (x+1)}}$$であるため、

$$
b = \lim_{x\to 1} f(x) = \lim_{x\to 1} \frac{1}{\sqrt{2x^2+2} + (x+1)} = \frac{1}{4}
$$

と$${b}$$も決まる。

私はこのように解いたが、この方法は解答に記載されている方法とは違っていた。解答には、$${b}$$が有限値であれば、

$$
\lim_{x\to 1} \left( \sqrt{2x^2+a} - x-1 \right) = \lim_{x\to 1} (x-1)^2 \frac{\sqrt{2x^2+a} - x-1}{(x-1)^2}
= b \left( \lim_{x\to 1} (x-1)^2 \right) = 0
$$

となることから、$${\lim_{x^\to 1} (\sqrt{2x^2+a} - x-1) = \sqrt{a+2} - 2}$$が0をとるように$${a}$$をまず決めるという方法が記されていた。このようなパターンの問題の王道は「分母が0に近づくので、分子も0に近づくことが必要」という条件から、いくつかの文字を確定させていくということらしい。この考え方はもう忘れているなぁ~と感じた。この考え方に関連する内容が大学の解析学、微分積分学の教科書にどう記されているかを確認したくなった。今後確認する機会があった時に、このNote記事を更新したい。

2. テイラー展開を利用した解法

この章では大学の解析学、微分積分学の講義で登場する「テイラー展開」を利用した解法を記す。大学受験の際は、高校数学の範囲内で論理的にも問題ないはずの参考書に記載の方法をまずは習得するべきと私は考える。もし、高校生がこの章を読もうとしているなら、「大学で学ぶ数学を使用すればこんな別解も考えられるのか~~」と読み流して、進学後にこういう別解も考えられるように目の前の受験勉強に励んでほしい。

テイラー展開を利用した解法は、$${\sqrt{2x^2+a} - x-1 = b(x-1)^2 + O((x-1)^3)}$$と変形して$${a, b}$$を決定する方法である。ここでのポイントは定数項や$${x-1}$$(の1乗)に比例する項が含まれてはならないということだ(もし含まれていると、$${(x-1)^2}$$で割ったものの$${x\to 1}$$の極限が発散してしまう)。ただ、$${x=1}$$のまわりで展開するのは少々面倒なので、$${t=x-1}$$と変数変換をして、$${t=0}$$のまわりで展開することを考えることにした。

※ $${a}$$を任意の実数定数として、$${O((x-a)^n)}$$は$${x}$$を$${a}$$に近づけるときに$${(x-a)^n}$$と同程度あるいはそれよりも速く0に近づく(収束する)項をさす。この記事では$${O((x-a)^n) = \sum_{k=n}^{\infty} \alpha_k (x-a)^k}$$という形で表される式をまとめたものと理解しておけば十分である。収束のスピードだけに興味があり、$${(x-a)^k}$$にかかる係数自体に興味がないとき、ランダウの記号$${O}$$(ビッグオー)を使ってまとめられることがある。

$${t=x-1}$$と変数変換をすると、元の問題は以下の式が成立するように$${a, b}$$を決定する問題と等価になる。

$$
\lim_{t\to 0} \frac{\sqrt{2(t+1)^2 + a} - (t+2)}{t^2} = b
$$

さて、$${\sqrt{2(t+1)^2 + a}}$$のテイラー展開を考える。$${2(t+1)^2+a = (a+2)+2t(t+2)}$$と$${t}$$を含む項と$${t}$$を含まない項に分離してから、

$$
\sqrt{2(t+1)^2 + a} = \sqrt{a+2} \sqrt{1 + \frac{2t(t+2)}{a+2}}
$$

と変形して、

$$
(1+x)^n = 1 + nx + \frac{n(n-1)}{2} x^2 + O(x^3)
$$

という公式に$${n=1/2}$$を代入した

$$
\sqrt{1+x} = 1 + \frac{1}{2} x - \frac{1}{8} x^2 + O(x^3)
$$

を利用すると、

$$
\sqrt{2(t+1)^2 + a} = \sqrt{a+2} \left( 
1 + \frac{t(t+2)}{a+2} - \frac{1}{2} \frac{t^2 (t+2)^2}{(a+2)^2}
\right) + O(t^3)
$$

となる。ここで$${O(t^3)}$$と書いたが、$${t^2 (t+2)^2}$$を展開すると、$${t^4 + 4t^3 + 4t^2}$$であり、$${t^3, t^4}$$に比例する項を含むので、

$$
\sqrt{2(t+1)^2 + a} = \sqrt{a+2} \left( 
1 + \frac{t(t+2)}{a+2} - \frac{1}{2} \frac{4t^2}{(a+2)^2}
\right) + O(t^3)
= \sqrt{a+2} + \frac{2}{\sqrt{a+2}} t + \frac{1}{\sqrt{a+2}} \left(
1 - \frac{2}{a+2}
\right) t^2 + O(t^3)
$$

とまとめることができる。この両辺から$${t+2}$$を引くと、

$$
\sqrt{2(t+1)^2 + a} - (t+2) = (\sqrt{a+2} -2) + \left(
\frac{2}{\sqrt{a+2}} - 1
\right) t + \frac{1}{\sqrt{a+2}} \left(
1 - \frac{2}{a+2}
\right) t^2 + O(t^3)
= (\sqrt{a+2} -2) \left(
1 - \frac{1}{\sqrt{a+2}} t \right) + \frac{1}{\sqrt{a+2}} \left(
1 - \frac{2}{a+2}
\right) t^2 + O(t^3)
$$

となる。いま、$${(\sqrt{a+2} -2) (1 - \frac{1}{\sqrt{a+2}} t)}$$の部分が残っていると、$${t^2}$$で割ったものの$${t\to 0}$$の極限は発散してしまう。一方で$${O(t^3)}$$の部分は、$${t^2}$$で割っても$${O(t)}$$であるため、$${t}$$を0に近づけると0に収束する。これは、$${O(t^3) = \sum_{k=3}^{\infty} \alpha_k t^k = \alpha_3 t^3 + \alpha_4 t^4 + \cdots}$$のため、$${t^2}$$で割っても$${ \sum_{k=3}^{\infty} \alpha_k t^{k-2} = \alpha_3 t + \alpha_4 t^2 + \cdots}$$であり、$${t\to 0}$$の極限で0に収束するということである。そのため、$${\sqrt{a+2} -2 = 0}$$となるように定数$${a}$$を$${a=2}$$と決めて、$${(\sqrt{a+2} -2) (1 - \frac{1}{\sqrt{a+2}} t)}$$の部分がないようにすればよい。

上の式に$${a=2}$$を代入すると、

$$
\sqrt{2(t+1)^2 + a} - (t+2) = \frac{1}{4} t^2 + O(t^3)
$$

となるため、

$$
\frac{\sqrt{2(t+1)^2 + a} - (t+2)}{t^2} = \frac{1}{4} + O(t)
$$

となり、$${t\to 0}$$の極限値は1/4である。

以上の通り、テイラー展開を利用しても正解を得ることができる。ただ、以下の2つの理由からテイラー展開の使用は推奨しない。(注意点を記して、本章を終わりにする)

  • 計算が面倒(上に記したことから計算が面倒であることはわかると思う)

  • 近似精度を考慮して適切に処理しないと正答が得られない可能性がある。実際、この問題は近似精度を意識しないと正しい$${b}$$を得られない。テイラー展開と近似精度について十分理解していない段階では使用するべきではない。

3. テイラー展開と近似精度

※ 本章は後日作成します。

終わりに

本記事は今後も加筆、修正をしていく予定です。本記事について不備がありましたら、Noteのコメント機能でご指摘いただけますと幸いです。


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