マガジンのカバー画像

安良の小説

18
これまでに書いた小説があります。ジャンルは、歴史・逆噴射小説・銀英伝二次創作などです。
運営しているクリエイター

#逆噴射小説大賞2021

星のこえ響かば

 ドルジ星系ヘラの地表でテラフォーミングプラントが煙を吹いて停止したのは、ミゥナ女史がカフェオレを口に含んで3秒後のことだ。 「残念、また失敗」 「うまくいきそうにありませんよ」  弱音とともに助手は解析を始める。 「僕には才能がないようです」 「センスの塊の間違いでしょう。TFPは夢の宝箱。星を開発して新たなストーリーを紡ぐなんて実に冒険的だわ」 「冒険? お宝? この世界に?」  助手は疑いの目でボスを見た。  ミゥナは立ち上がり宇宙船の窓辺を歩き始める。 「あるわ。例

ザ ラスト ジェネラル マスト ダイ

「お喜び申し上げます。今日から貴方様は大将軍です」  髪をピシィと整えた副官の言う通り、僕は大将軍になった。  前皇后が処刑されて、妹が皇妃になったからだ。  僕は大好きな肉屋をやっていたかったのに、どこからか人生が狂った。 「肉ばかり食えた日々が懐かしいよ」 「ご自重ください。また周囲から叩かれます」  そうなんだ。堅苦しい王宮じゃ、まず香辛料がダメだと怒られる。胡椒を効かせた肉を振る舞ったら「口が痛い! 控えよ!」と来る。鉄板焼きひとつ満足にやらせてもらえない。 「とこ

ライブ絵師JIN

「よ~し生放送やるかぁ!」  音量OK、ペイントツールOK、今日もYoutubeでお絵描き配信。閲覧数はゼロだけど。ま、最近はサイバー部隊を描いてる。ネット犯罪から市民を守る隊長だ。でも武器を描くのは苦手なんだよな。手もやばい事になる。 『よう』  男前な声に続き隊長の足が動いた。 ───え?  あろうことか小さな隊長は屈伸を始めた。あり得ないだろ、ハッキングされたのか。いやさすがに無理だよな、と思い直す。 「俺クスリなんてやってないぞ」  すると画面端に黒いモヤが出現。