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緊急事態条項は危険は誤解

今日は久しぶりに憲法の話で、衆議院の憲法審査会で一番盛り上がっている緊急事態条項のうち、議員任期の特例延長について解説したいと思います。

憲法の議論をすると、「護憲なんですか?改憲なんですか?」っていうイデオロギー論争になってしまって中身のことがほとんど伝わらず、憲法を議論した瞬間に「戦争を従ってる」とかって言われて、とてつもない誹謗中傷を受けるんですが、いろんな憲法の改正テーマがあります。
何もなく「憲法改正どうですか?」というと、自然と質問する側もメディアも質問される側も、憲法9条だと思って答えるという感じになっているんですが、日本国憲法はいっぱいあるので、改正すべきところは憲法9条だけではないので、そこも含めて冷静な議論が必要だと思います。

最大の争点となっているのが、かなり長く議論をしてきて、私ども国民民主党、維新の会、有志の会の皆さんと一緒に共通条文を作っているのは、いわゆる緊急事態条項です。
ただ、私はあまり緊急事態条項という言葉を使いたくないのは、緊急事態条項というと「ナチスになってけしからん」ってなって、そこで思考が止まって、そこから先に全くいかなくなるので、あえて今日は少し噛み砕いてというか、少し開いて申し上げると、緊急事態が発生したときに、長期にわたって選挙はできない時ににどうするんだ問題、これを憲法改正によって解決しなければいけないんじゃないのかというのが、我々の提案になります。

なんでこれを提案しているかというと、私一期生の時に東日本大震災が起こりました。
皆さん覚えてます?2011年3月11日だったじゃないですか。
3月でしょ?
4月って何があるかというと統一地方選挙があるんです。
3月に発災して、翌月4月の選挙ができなかったんです。
なんでかというと、選挙管理委員会にお勤めの方、役場にお勤めの方もみんな被災したり家族が亡くなったりして、もちろん選挙で投票する人もできないし、選挙を運営する人もできなかったという状況の中で、法律を通して特例的に市議会議員・県議会議員・首長さんの任期を伸ばしたんです。
仮に国会議員・衆議院・参議院が任期満了になって、「選挙だ」って時に選挙直前に同じような大規模災害が発生して、選挙が一体的に全国でできないということになった時は、同じように議員の任期延長規定が必要、と普通は考えます。
ただ国会議員の場合は地方議員と違って、衆議院の場合なら4年、参議院の場合なら6年という年限が憲法の中に書かれてあるんです。
だから特例を認めるためには、憲法を改正して特例を延長する規定を設けなきゃいけないというのが我々の主張なんです。
あえて申し上げたいんですが、緊急事態条項を作る時は何でダメかというと、一般のリベラルの方がよく言うのは「内閣が好き勝手やって、やりたい放題して、民意や国会を無視する」と言うんですが、いざという時に選挙ができなくて、議員が選ばれないと議員がいないわけです。
その時こそまさに内閣が好き勝手やるじゃないですか。
いわゆる司法・立法・行政の三権分立による権力のチェック&バランスをいついかなる時、つまり大規模災害とか戦争とか、そういった時が起こった時も、国会の持つ行政監視機能や立法機能をきちんと持たないとかえって内閣が好き勝手に、本当だったら法律でやらなきゃいけないことを、政令で済ましたりとか、国会の承認を受けずに勝手にやってしまいます。
逆に言うと国会の機能が大事だ、国会中心主義だ、立憲主義だ、リベラルだって言ってる人ほど、国会の機能は大切だと思うんです。
だから我々も立憲主義の観点から、東日本大震災の時の反省もあり、国会議員の任期延長規定を事前に憲法改正をして、いざという時には伸ばせる、そして、その時の手続きをきちんと定めておくことが必要だ、ということで有事の際の緊急事態が発生した際の議員任期の特例延長規定を設けようということを言っています。

これに対して護憲派は「憲法を改正すべきではない」という人からの反論、立憲民主党中心に行われている反論は、「地方議員と違って国会議員の場合はいざという時に憲法54条2項の参議院の緊急集会というのがあるので、これであれば十分いけるでしょう」というのが憲法改正がいらないという側の主張の主な理由です。
緊急集会って何かというと、憲法54条の2項に規定されています。

衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。
但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

衆議院は解散がありますから、解散してしまった後は衆議院いませんから、大事なことを決める時には、内閣が緊急のことを決めなきゃいけない時には、参議院の緊急集会というところで決めることができると書いてあるんです。
これ使えばいいじゃないかとなっているんですが、条文を見てもらうと分かるんですが、衆議院が解散された時、解散しても憲法上、解散から40日以内に必ず選挙をやって、そして選挙から30日以内に特別会・特別国会を開いて、新しい総理を選んでいくという手続きがあります。
要は使ったって70日がMAXの暫定的な一時的な対応です、というのが憲法上は予定されているわけです。
加えて、この緊急集会で取った措置については、次の国会開会の10日以内に衆議院の同意がない場合はその効力を失うとしてますから、決めたとしても、その後再び衆議院が選ばれてきて、衆議院が機能し始めた時に、その衆議院に国会が開いて10日以内に同意を取らないと効果がなくなるってことです。
あと、内閣が国に緊急で必要がある時は参議院に議論してくださいと言って、何を議論するか基本的に内閣が決めるんです。
かつて戦後2回、この緊急集会で使われたことがあるんですが、暫定予算であったり、本当に非常に極めて短期の一時的な案件のみで、学説でもこの緊急集会を積極的に使おうという中でも、さすがに本予算とか、あるいは相手のある条約なんかの取り扱いはできないとされています。
例えば条約を緊急集会でOKにして選挙が終わった後、衆議院ができてダメだとなった時に、アメリカとか外国との間で、緊急集会でOKしたのに後で衆議院でひっくり返したら、対外的な関係も非常に不安定になりますから、やっぱり性質上、本予算とか条約、補正予算もダメだという説もあります。
要は緊急集会という仕組みがあるんですが、あくまで一時的・暫定的・限定的です。

それに対して議員任期の延長を我々がなぜ求めているかというと、国会って基本的に衆議院と参議院が揃って大事なことを決めていく、これは衆参同時活動の原則というので、日本はそもそも両院制を取ってますから、片方でいいんだったら1個でいいんです。
でも衆と参、衆議院の優越性ということで総理大臣を選んだり、いろんなことに予算とか、衆議院の方にどちらかというと優越性を認めてますから、その衆議院を欠いた形で、2ヶ月程度の短期の決め事は参議院の緊急集会で任すにしても、例えば1年とか2年とか長期にわたって選挙できないような状況のときまで、この緊急集会に耐えるというのは無理があるだろうということで、我々としては特に70日を超えて長期にわたって一体的な選挙が難しいときには、議員任期の特例延長規定を設けてはどうかという憲法改正を提案しています。
ただこの議員任期の特例延長については批判もあって、議員さんが本当は4年の任期で終わるのに、もっと議員をやりたいから、つまり自分のお手盛りのために緊急事態を乱用して、長く議員をやりたいというようなことで国民の選挙の機会を奪ってしまうというようなことも批判として言われますので、我々はお手盛りを防止するために、果たして本当に選挙できるのかどうか、あるいは緊急事態にそもそも合致しているのかということについて、最高裁判所、つまり立法行政に加えてもう一つの権力である司法の客観的なチェックを受ける仕組みを入れて、お手盛りにならないような工夫もしているということを提案させていただいています。

有識者を呼んだ時にも「何か起こったら最後は国家緊急権という、国が持っているオールマイティな機能で全部やっちゃえばいいんだ」って言うんですけど、それリベラルの人が言うのかっていう感じです。
我々はむしろ事前にきちんと仮に特例を認める場合も、事前手続きはこういうことです、ということを前もって用意しておこうというんです。
なぜか普段リベラルという方ほど、変えたくないということが前に出るから、逆に何か起こったら「最後は国家緊急権で全部やってしまえ」みたいな、そういうことを言う方もいて、何か立場が入れ替わっているな、ということをかえって感じることもあるんですけども、私は憲法9条よりも、むしろこういったところから、統治のあり方のルールなので、ここは幅広い合意を得て憲法改正につなげていければなというふうに考えています。

今日は改めて緊急事態条項を取り上げ、議員任期の特例延長についての議論の現在地について説明させていただきました。

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