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準天頂衛星システム

日本初の宇宙安全保障構想が6月13日に宇宙開発戦略本部で決定され、同じ日に宇宙基本計画も閣議決定した。
決定した宇宙安全保障構想のポイントは?

宇宙安全保障構想のポイントは3つのアプローチ。
第一は宇宙からの安全保障。安全保障のために宇宙システムの利用を抜本的に拡大する。
第二は宇宙における安全保障。宇宙空間の安全で安定的な利用を確保する。
第三が宇宙産業の育成支援。安全保障と宇宙産業の発展の好循環を生み出していく。

①宇宙からの安全保障
・隙のない情報収集ができるようにすること。
・通信需要が増えてきているので、妨害行為に対してしっかりと衛星通信が行えるようにすること。
・弾道ミサイルや極超音速ミサイルなど、捕捉と追尾ができるようにすること。
・抗たん性の高い位置や時刻の把握ができること。
・自律的な宇宙へのアクセスの確保ができること。

②宇宙における安全保障
・他国の衛星の活動やデブリの位置を把握できること。
・燃料補給をしたり、軌道上サービスと言われているが衛星の寿命を長くすること。
・通信衛星コンステレーションの構築や量子暗号通信網で高いセキュリティ通信を実現すること。

宇宙基本計画では、スペースデブリ対策の他に地球観測と衛星測位も盛り込まれたが、これらの分野は日本に競争力がある?

地球観測については、災害時に早期の状況確認によって迅速な対応ができ、情報収集力というのは有事の際に何よりも重要な要素になる。
日本が誇る合成開口レーダー、この技術を活用した日本のレーダー衛星、いわゆるSAR衛星だが、悪天候の時や夜間でも被災状況を広範囲かつ詳細に把握できるもの。

今、大型衛星が1機上がっているが、大型衛星1機では撮影指示から撮影場所に到着するまで12時間ぐらいかかることもある。
衛星コンステレーションだったら、災害場所に最も近い衛星が短時間で到着して、早期に被災状況の情報を提供できる。
3時間以内に何が何でも、というのが大事な要素となる。
そのため、大型の衛星と小型の衛星コンステレーションの両方の組み合わせで、迅速で効果的な対応を実現したいなと思っている。

日本がすごいのはスタートアップ。
QPSやシンスペクティングが、2025年までに30機程度の小型衛星コンステレーションの完成を目指している。

それからもう一つ、衛星測位。
日本の準天頂衛星は誤差6センチの測位ができる。
アメリカのGPSは誤差約10メートルで測位ができる。
これから自動運転やスマート農業、インフラ管理を考えると、センチメーター級の測位ができるというのが好ましいということは言うまでもない。

ただ、日本の準天頂衛星は今は4機だけ。
だから最低1機が日本の上空にあるという状況なので、アメリカのGPSと組み合わせて測位をしている。
これを7機体制にするという目標を掲げている。
7機体制にすると、測位サービスに必要な4機が日本の上空にあるという状況が実現できるので、アメリカのGPSに頼らなくても日本の準天頂衛星のみで測位サービスが提供できるようになり、誤差6センチのサービスが展開できるようになる。

故障したときに備えたら世界水準のバックアップ機能を備えるということは非常に重要なので、11機体制にするということが好ましい。
今年度と来年度で何とか7機体制を目指していこうと取り組んでいる。

それから準天頂衛星のシステムの利用を日本だけでなく、アジア、オセアニア地域にも広げていくことで、日本にとっては大きなビジネスチャンスになると考えている。

宇宙分野における日本の課題は?

残念ながら衛星をどんどん打ち上げてコンステレーションを作ろうにも、肝心のロケットが上がらないとどうにもならない。
だから、日本にとっての課題は宇宙輸送。
つまり、機関ロケットであるH3の打ち上げ成功、これを一刻も早く実現すること。
ロシアのロケットが今使用できないという中で、世界的に衛星の打ち上げ需要というのは急増している。
宇宙輸送へのニーズというのは非常に高い状況です。
他国に依存することなく宇宙へのアクセスを確保するということによって、将来にわたって日本の自律的な宇宙活動が実現できるので、何としても頑張りたいところ。
機関ロケットで政府衛星を優先的に打ち上げるわけだが、国内の民間衛星や安定的に打ち上げが連続して成功していくという状況に持っていけたら、海外の衛星も打ち上げていく。
それから民間でも小型ロケットが頑張って開発されているので、民間の小型ロケットも十分に活用していく。
海外から受注を受けて、安定的に海外の衛星を打ち上げることができるようになれば、日本にとっては大いに儲かるビジネスチャンスになっていくと思っている。

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