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海外企業による日本の土地購入

※2023/03/04時点

上海電力による土地の買収に心配の声が上がっているんですが、外国企業による土地の取得を禁止することはできないんですか?

残念ながら今の法律ではできません。
私は10年以上前の平成23年に自民党の中に勉強会を立ち上げました。
外国人とか外資系の企業による土地や建物の取得を規制する議員立法をしようと思って、安全保障土地法案の策定に取り組んでおりました。
ずいぶん苦労してたくさんの議員が集まってくれて何度も何度も会議をしたんですけれども、結論として様々な省庁を呼んで意見も聞きましたができませんでした。
つまり取得規制・取引規制というのは、現在の法制上無理だろうというのが結論です。

なんでかというと、GATSがあります。
これはWTOのサービス貿易一般協定のことです。
このGATSですとか日本が結んでいる一部の経済連携協定ですとか二国間の投資協定において、日本は残念ながら土地取得について留保せずに締結をしてきたということなんです。

例えば私たち日本人が中国で土地を買うことはできません。
これは中国もWTOに入ってGATSのメンバーですが土地取引は留保している。
だからこれは自由貿易の対象じゃありませんよ、自由な取引の対象じゃありませんよということにして入っている。
日本の場合は留保せずに入っておりました。

ですからそういう国は外国人に対して内国民待遇という義務を負います。
つまり土地取得に関しても国籍を理由として内外差別的な立法を行うということは国際協定との関係において認められません。
日本の法体系は国内法より国際法の方が上位にきますので、このGATSやこれまで結んでしまった二国間協定がある限り土地取得の規制を国籍を理由に行うということはできません。

もう一つ土地取引の規制というのは憲法が定める財産権の侵害になるという声が当時も多くありました。
つまり日本人が土地を持っていて、たまたま外国人が買いに来て、その日本人にとってはもういらない土地、例えば使わない山だったりしたら、高いお金で買ってくれるって言ったら売りたいですよね。
でもそれを国がダメって言ったら財産権の侵害になるということで、憲法にも抵触するだろうということで立法化は困難でした。

日本人と外国人の両方対象として平等に何か規制をかけるということは合理的な目的と手段でかけるということはできるので、重要土地等の法律、要は重要土地の利用規制の法律というのはできあがったわけです。
この土地取得の規制というのは、もしもあのまま法整備を進められたとしても、結局ダミーの日本企業が買いに来たり、それからある国が自分の国の国民の一人だけを帰化させて日本人にして買いに来たりしたら結局ザル法になっちゃいますので、これも要は実質的にはあんまり規制の効果がないんじゃないかという結論になりました。
だから今の法体系というのは土地取引規制じゃなくて、土地利用規制が精一杯ということになっています。

これからどうしてもやっぱり外国人にこれ以上土地買われていったらどうしようもない、安全保障所も怖い、ということになっていったら、これは外務省に頑張っていただいて、WTOのGATSをもう一度土地を留保して締結をし直す。
参加国全部が同意してくれなきゃいけませんから大変な作業ですからそういうことをしていただくとか。
近年は外務省も様々二国間で協定を結ぶときに土地取引は留保して結んだりしていると聞いていますので、そういう取り組みを進めていくということしかないと思います。

上海電力ですが、それはまた別の機会に詳しくお話をしたいと思っています。
ただ上海電力が今発電をしている。
ある時にその発電を全部止めちゃったら周りに住んでいる人達がその発電に全て頼っていたら大変なことになります。
でも今発電の許可をしている経済産業省に聞いてみますと、それを全て発電を止められたとしても他の大手電力からの融通によって、たちまち周辺の人が困らない範囲、そのレベルでの許可をしているというようなお話でした。

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