犬猫のお薬辞典Vol.6〜呼吸器のお薬編〜
獣医さんにもらったお薬、どんな作用があって、どんな副作用があるのか、詳しく知りたいなと思ったことはないですか?
インターネットで調べると、添付文書のような堅苦しい説明書きしかヒットしないし、効能書きを見てもナンノコッチャ・・・?って感じで結局よく分からない。
そんな飼い主さんのために、「獣医さんからもらった薬が分かる本」を作りました。
Vol.6は「呼吸器のお薬」です。
その他のお薬辞典は以下のマガジンからご参照ください。
このnoteを作った理由は、飼い主さんのアドヒアランスを高めてもらうためです。
先日、以下のようなツイートをしました。
アドヒアランスとは、簡単に言うと「飼い主の治療に対する理解と積極性」です。
獣医師にすべてお任せするのではなく、飼い主さん自身がペットの病気に対して深く理解し、治療に積極的に関わることを、「アドヒアランスが高い」と表現します。
愛犬や愛猫の治療は、基本的にアドヒアランスが高い飼い主さんほどうまくいきます。
だからこそ、私のnoteでは、「飼い主さんが病気や治療を理解するための材料を提供すること」を目標にしています。
アドヒアランスを高める上で非常に重要な課題の1つが、もらった薬を理解すること。
正直、一般的な一次病院では、獣医師がインフォームドコンセントの過程で薬の解説を行う時間までは確保できないことが多く、できたとしても浅く概要を説明する程度で終わってしまうことがほとんどです。
このnoteを辞書代わりに持っておいていただくことで、いざ動物病院でお薬を処方されたときに、
どんな目的で処方されたお薬なのか
どんな仕組みで効果を発揮するのか
今、愛犬愛猫の体の中では何が起きていて、それを薬でどう改善しようとしているのか
服用中、どんなことに気をつければよいのか
など、知りたいこと(+α)が分かるようになります。
このnoteの特徴
薬の効能と、その薬が効果を発揮する仕組みを、飼い主さんにも分かるように噛み砕いて解説しています。
できる限り詳しく、かつ一般の方でも理解が追いつく程度に内容を厳選し、複雑な部分には図解も加えてあります。
副作用や注意事項の書き方も工夫しました。
どの薬にも副作用があるわけですが、「これは特に注意しなければいけないな」という副作用と、「こんな副作用、実際は見たことないなあ」という稀な副作用があります。
このnoteでは、添付文書の丸写しはしておりません。
臨床現場で働く獣医師がよく遭遇する副作用をピックアップし、実際に何に気をつければいいのか、よく分かるようにしています。
※稀な副作用が起こる可能性は0ではないので、「このnoteで触れていない副作用は起きない」という意味ではありません。その点は勘違いしないようにしてください。
Vol.6は「呼吸器の薬」です。
慢性気管支炎、気管虚脱、喘息、間質性肺炎など、呼吸器疾患でよく処方されるお薬を解説します。
お薬の仕組みを理解すると、その病気の病態もよく見えるようになります。
※追記してほしい薬のリクエストがあれば、TwitterのDMやnoteのコメントで教えてください。(購入者は追記分も読むことができます。)
※このnoteは「犬猫のお薬辞典シリーズ」の第5弾です。
※獣医学生さんや動物看護師さんのお勉強にも役立つかと思います。
※返金保証も付けております。内容に満足できなかった方には、全額返金致しますのでご安心ください(note運営事務局の審査が入る点はご了承ください)。
アミノフィリン(製品名:ネオフィリン)
気管支を広げるお薬、通称「気管支拡張薬」です。
呼吸器の解剖を少しだけ学びましょう。
吸った空気は、鼻から喉頭、気管、気管支を経て肺へと至ります。
気管支とは、気管から左右に分岐した管を指し、左右に別れたあとさらに細かく分かれていきます。
最終的には肺胞と言われる風船のような構造物が待っており、ここで酸素と二酸化炭素の受け渡しが行われるのです。
ネオフィリンは、この長い空気の通り道のうち、気管支を広げる薬です。
慢性気管支炎や気管虚脱、喘息など、主に咳を起こすような様々な呼吸器疾患に対して処方されます。
このような疾患では、炎症によって気管支の気道粘膜が浮腫を起こすことで、気道(=空気の通り道)が狭くなってしまいます。
気管支を少しでも広げて呼吸を楽にする(&咳を止める)ことが、気管支拡張薬の役割です。
仕組み
気管支の太さを調節しているのが、気管支平滑筋という筋肉です。
気管支の周りをぐるっと囲んでいる筋肉で、気管支平滑筋が弛緩すると気管支は太くなります。
炎症が起きた気管支は、多くの場合、炎症性物質によって粘膜が浮腫を起こし、狭くなっています。おまけに気道内に痰などが蓄積すれば、もっともっと空気の通り道が狭くなります。
気管支拡張薬は、気管支平滑筋を弛緩させることで、気管支の直径を大きくし、気道を広げてくれるのです。
アミノフィリンが気管支平滑筋を弛緩させる機序を軽く説明します。
気管支平滑筋は平滑筋細胞という細胞の集合体です。
平滑筋細胞には伸縮性があり、1つ1つの細胞が縮んだり伸びたりすることで平滑筋が収縮、弛緩します。
平滑筋細胞が収縮をする時は、平滑筋細胞内のcAMPという物質が上昇することがキッカケになります。
逆に、cAMPの濃度を低下させることができれば、平滑筋細胞は弛緩するわけです。
アミノフィリンは、平滑筋細胞内のホスホジエステラーゼという酵素を阻害します。
ホスホジエステラーゼは、細胞内に溜まったcAMPを分解する酵素なので、アミノフィリンによってホスホジエステラーゼが阻害されると、細胞内にはcAMPが蓄積します。
その結果、気管支平滑筋が弛緩し、気管支が広がるという仕組みです。
副作用・注意事項
目立った副作用はありません。
慢性気管支炎や気管虚脱などの慢性疾患で使用する場合、常備薬として処方され続けることが多いかと思います。
定期的に健康診断を受け、副作用や健康状態のチェックを怠らないようにしましょう。
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