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晴れときどきマサラ #2 情熱とジュヌーン

おはようございます。楽しいインド案内人アンジャリです✨

2021年は毎週月曜日にブログの更新をしていきます。今日は第2回。前回の『晴れときどきマサラ #1 中堅インド女子の想いとは』はこちら。

人生の中間管理職

少し前のことになります。アラフォーを過ぎ、「そろそろ次のステージに進むように」との指令を受け、外資系証券会社で中間管理職となったころ。上からも下からも押しくらまんじゅう、自分のマネジメントもままならないのにチームのマネジメントにも挑戦するという最大の難関が訪れました。

明るく前向きに、みんなが気持ちよく向上心を持って目標に向かっていくにはどうしたらよいのだろう? そんなことを真面目に考えるよい機会ではありました。

とはいえ、生来、団体競技が苦手な私です。

デキる人たちのなかで切磋琢磨するのは刺激的でやりがいのあるものではあったけれど、成り行きで証券会社に入社した身としては(その顛末は『やがてマサラ#18 跳んで下克上』をどうぞ)、いつも心に「私の居場所はここではない」という意識がありました。

人生折り返し地点、不慮の事故や病気で亡くなる友人知人もちらほらと増え、私自身、明日のことは分からない。

この情熱、そろそろインドに注げないだろうか。

長期の休みのたびにインドに通い、インド映画やインド舞踊にのめり込み、仕事と家庭の隙間にわずかに確保した自分の時間はすべてがインド一色です。

すこしでもインドに関わりたいと、毎年「インド駐在希望」と人事に提出してはいたものの、諸々の事情によりその道は限りなく閉ざされていました。

そんなこんなを経ての退職。

なにをしたらいいか分からない

サラリーマンを辞めてつくづく思ったのは、それまでの自分がどれだけ会社に守られていたかということです。会社の看板があればこそ可能だったことがたくさんありました。個人の看板でなにかを始めるには私はあまりにも非力で、ものを知りませんでした。

家計は傾き、心の平穏は揺らぎ、正体の分からない焦りが生まれていくなかで、それでもタイミングをはかってはインドへの渡航を繰り返す。

なにをしたらいいのだろう。のんきにインドで映画を見たり旅をしたりしているようで、この時期は先の見えない不安に駆られていました。

前職の会社の企業理念は"Passion to Perform(熱意あるあなたに情熱をもってお応えする)"。この場合のPerformは『使命を果たす』とか『業務を遂行する』という意味で、そのためのPassion、すなわち情熱を持つというのがいわば全社挙げてのスローガンだったわけです。

私はこの言葉がとても好きで、退職後に完全に迷子になっていた時期も、この理念だけは持ち続けていたいと思ったものです。

路地裏の情熱

話は変わって2019年。『ガリーボーイ』という映画が公開されました。

Gully Boy=路地裏の少年というタイトルのこの映画は、インド随一の商業都市ムンバイーのスラム出身の青年がラップを通じて登り詰めるというサクセスストーリーです(DVD&Blu-rayほかAmazon Primeでも視聴できるのでぜひご覧くださいね)。

そのなかで富裕層の女性が主人公の青年にいう言葉があります。

"Passion follow karo, paisa aayega"(情熱に従えばお金はついてくる)

これは夢を見られるだけの余裕がある富裕層からしか出てこない言葉だと思うんですね。インドは、もちろん社会はどんどん変わってはいますが、夢を追うとかなにかに情熱を傾けるとかそんなことよりも、その日を生き抜くことで精一杯という人のほうが多くいる国だと思います。

映画では、この言葉に対してスラム出身の主人公が『インド人なのにヒンディー語を知らないのか』と返します。インドの(特に)中上流階級の人々はヒンディー語の会話でも頻繁に英単語を織り交ぜるので、ラップという表現のなかで自らの言葉であるヒンディー語を扱う青年は"passion"は英語じゃないかと突っ込むわけです。

『じゃあヒンディー語ではなんというの』と聞き返す女性に『junoonだよ』と答える青年。ジュヌーン、と繰り返す女性。

さらっと流れる会話なのですが、このシーンがとても印象的で。

情熱を追える環境にない青年に対してはきれいごとにすぎないかもしれない言葉に、美しい響きの言葉が返される。情熱とは従うものではなく湧き出てしまって従わざるを得ないものである、俺には俺のプライドがあると言わんばかりに。

普通なら決して交わることがない「上流」と「スラム」が、どこかひりひりとしながらも交わる、そんなシーンに思えました。

情熱とジュヌーン

そんなこんなの流れがいくつかあって、今後、私が自分の仕事や(大げさにいうなら)生き方にキャッチフレーズをつけるとしたら、この『ジュヌーン』という言葉を入れたいなと思いまして。

JUNOON, Passion to Make a Move

そんなスローガンを掲げてみることにしました。

Make a moveには「行動を起こす」という直接的な意味のなかに、たとえば「今日こそあの娘を口説くんだぜ」といったニュアンスも入る言葉。

この厳しい情勢のなかで、ともすれば停滞し守りに入りがちな気持ちに喝を入れたい。たくさんの人を口説いて回ってなにかの行動を起こし大きな変革へとつなげていきたい。

平穏に暮らしていく方法はたくさんあって、そちらにいきたい気持ちもあれど、おそらく私はどこかで退屈を持て余してしまうと思うのです。どうせインドに振り回されるなら自らすべてをぶん回す。

そんな野望が私の情熱、そしてジュヌーンという次第です。うふふ。

ニヤリと微笑んだところで、今週もはりきってまいります。それでは、また来週!



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