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アニメーターの賃金が低い理由②:多重下請け構造
アニメーターの賃金が低い理由として、多重下請け構造が挙げられます。
前回の記事でも紹介した通り、アニメ制作では、まず製作委員会方式で資金が調達されて、その中で制作費がアニメ制作会社に渡ります。
しかし必ずしも、そのアニメ制作会社が全工程を担うわけではありません。大抵の場合、さらに下請けのアニメ制作会社に「動画」や「仕上げ」などの業務を外注することで、なんとか納品まで間に合わせます。そして、その下請けの会社がさらに下請けの会社(孫請け)に外注することも珍しくありません。
そのうえ、アニメーターの多くはフリーランスとして活動しているため、それも含めて、数多くの下請けのアニメーター(及びアニメスタジオ)によって、アニメが制作されている現状があります。
しかし、このようにして中間業者が出てしまうと、当然のことながらマージンが嵩みます。
この業界構造はITゼネコンでも同様であり、IT業界では、この多重下請け構造が、日本の大手IT企業が世界のトップになれない理由として考えられています。なぜなら多重下請け構造は、マージンが発生して効率が悪いだけでなく、スピード感や品質管理にも問題が生じるためです。大手銀行のシステムがバグるニュースが、記憶に新しいですね。
筆者は個人的に、この多重下請け構造が、アニメーターの賃金が低い理由として大きいと考えます。
なぜ多重下請け構造になってしまうのかというと、業界全体として、アニメ制作会社の正社員雇用が難しいためです。ただでさえ制作費がカツカツなのに、アニメを制作していない時期の人件費を賄えるキャッシュがあるわけでもないので、多くのアニメスタジオは、アニメーターを正社員雇用できません、
そういう意味では「流動性の高い労働市場」だとも言えます。アニメ業界では、必要に応じてアニメーターを確保する」というスタイルが一般的なのです。
また、多重下請け構造を改革するのは、極めて難しく、個人のアニメーターでどうにかできる問題でもありません。そのため、高待遇を重視するアニメーターは、多重下請け構造から離れて、個人アニメーターとしてコマーシャルを制作している現状があります。
もちろん、東映アニメーションや京都アニメーションのように、正社員雇用を増やして多重下請け構造を解消するアニメスタジオもありますが、これはごく少数です。
今後、取材を重ねて実態を見てみようと思いますが、多重下請け構造を解消するには、痛みの伴うハードランディングしか手段がないように思えます。
次回に続きます。
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