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生成AIがアニメーターの労働環境を変えるかもしれない理由

生成AIの登場は、アニメーターの労働環境を変える可能性があるのは間違いありません。

おそらく多くの人は、こんな期待をしたはずです。「アニメーターの労働不足問題が解決されるのは?」と。

たしかに、もし生成AIがアニメ制作における「動画」を肩代わりしてくれるようになれば、労働不足問題が解消される可能性があります。

実際に2024年6月、AIスタートアップのLuma Labsが、始点から終点までの中割りを生成する機能を発表。このような技術が発達すれば、原画と原画の間の中割り(つまり動画)を生成できるようになるのは、ほぼ間違いないでしょう。

また、すでに背景に関しては、生成AIの活用が進められています。Netflixの独占配信作品「犬と少年」や、東映アニメーションによる背景のAI加工が、その典型例です。

ここまで生成AIが進化してくると想定されるのが「AIと人間の見分けがつかない」という現象です。現在、ほとんどの商業作品では「生成AIを使用しているか否か」が発表されています。しかし、これほど違いがわからなくなってくると「生成AIを使用していない」というのは悪魔の証明になりかねません。

このような時代で、ワンチャンで普及しそうなのが「アニメ制作の透明化」です。ソフトウェア開発におけるオープンソースのように、アニメ制作のプロセスを完全にオープンにすることができれば、生成AIを使用しているかどうかがわかります。

そのうえ、アニメ制作のプロセスが透明化されれば、アニメーターがどれだけの労働環境なのかが一目瞭然になるはずです。オーガニック食品における「認証」のように、アニメ作品においても「認証」が求められるようになるかもしれません。

それに加えて、アニメ制作をオープンにすることは、ノウハウの拡散にも繋がります。業界全体として、技術力が向上する可能性もあります。

一般的に、アニメ作品の原画や設定資料集は、マニア向けにそれなりの値段で販売されることがほとんどです。それはソフトウェア業界においては、内部のコードの閲覧権限を高額で販売するようなものだと言えます。

そう考えれば、業界全体とは言わなくても、アニメ制作のプロセスを完全に透明化するアニメスタジオが登場してもおかしくないかもしれません。

もちろん、制作プロセスをクローズドにして、自社特有の技術を守るのも選択肢としてアリです。IT業界でもAppleやDJIは完全にクローズドです。

一方で、制作プロセスをオープンにするのもアリなのではないでしょうか。そうすれば、生成AIを使用有無を完全に証明できるし、ノウハウも拡散されます。また、アニメーターがそれらの制作プロセスを実績にもできます。

生成AIによって、アニメ制作のプロセスがオープンになれば、それはきっとアニメーターの労働環境を大幅に改善できるのではないかと思います。


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