見出し画像

今のペット医療保険に足りないもの 3/3(ペット医療の標準化?)

日本のヒト医療とペット医療、どちらも「医療」とはついていますが、大きく違う点はその診療報酬制度です。

ペット医療は100%自由診療

ヒト医療は社会保険制度に紐づき、診療報酬制度がありますので、ある特定の疾病にかかってしまった場合、標準化された(最適と考えられうる)治療・処置を受けることができます。これは、標準化された治療・処置に対して保険金が支払基金より医療機関に支払われるためです。

医療を標準化することで、医療費用(医療の値段)を国で決められるようになっているのです。

一方、公的な医療保険が適応されない治療・処置も存在し、それらは自由診療(社会保険制度とは紐づかない患者が全額負担する診療)となります。

保険診療は社会制度と紐づいていますので、国が認めた治療・処置に限定されて適応される、それぞれの治療・処置方法が標準化され、その価格も医療機関によって異ならない、という側面があります。

標準化されていない治療は自由診療となります。

ペット医療には公的な保険制度(社会制度)が存在せず、100%自由診療となります。これは標準化された治療がないペット医療の値段が動物医療提供者が自由に決めていることを意味しています。

診療報酬制度は、国がきちんとその効果を判断してくれて、点数(診療報酬)が決まっていますので、不当に高額な医療費となってしまうことはないのでいいことづくしな仕組みですね。

果たしてこの人間の医療保険制度に課題はないのでしょうか?

医療保険制度(報酬制度)の課題

日本の場合、全員が医療保険に加入することになっていますが、その医療保険には協会けんぽや国民健康保険、後期高齢者医療制度などの加入者によって加入できる保険の種類がいくつか存在します。実はそれぞれの保険の保険料や補償内容は異なっており、保険の種類によって受けられる恩恵の差が生じていることは課題とされています。

また、かなり構造として無理のある仕組み(保険者と被保険者で独立していない仕組み)であることも課題です。

保険金は保険料から支払われることは前のnoteに記載した通りですが、実は人間の医療保険は集めている保険料>>支払っている保険金という状況のため、皆さんが納めている(給与から天引きされている)保険料だけでは賄いきれず、公費(税金)を原資にしています。その補填割合は、保険料約45%、公費(税金)約55%という具合です。

※参考:医療保険に関する基礎資料

つまり、いいことづくしの人の医療保険制度ですが、裏側?ではかなり無理(保険料から保険金を賄えない時点で無理)をしているということがわかります。

人間の医療保険制度では実際どれくらいの保険料なのでしょうか?

人の医療保険制度の保険料は平均約40,000円

かなり強引な計算をします。

平成30年度の医療費が約45兆円、そのうちの約40%が保険料で賄われていることを考えると、保険料総額は約18兆円となります。

被保険者数が約4,500万人なので、18兆円を4,500万人で除すると約40,000円になります。つまり保険料は40,000円/年以上となります。(被保険者≠保険料の支払い者なので正確な計算ではありませんが、被保険者数>保険料支払い者数であることを考えると、40,000円以上と言うことは間違いなさそうです。)

もちろん、年収や加入保険の種類によって保険料はかなり異なりますので、あくまで平均値となります。

どうやら、ペット保険料の相場と人の医療保険制度の相場は同じくらいの様です。

ペット保険料は約30,000〜60,000円/年と書きました。)

ペット医療保険料は今後上がっていく(何もしなければ)

人の医療保険制度が半分以上を公費(税金)で支えられている(保険料で保険金を支払えていない)事実を忘れてはいけません。

超単純に考えると、人の医療保険制度を保険料だけで賄おうとした場合、現在の2倍以上の保険料を納める必要があるということになります。

つまり、人とペットの損害率が同様と仮定すると(ペットの人間化やペットの医療レベル向上は間違いなく、ペット医療費が人の医療費に近くなるとする)、ペット保険の原資は保険料しかありませんので、最低でも、現在の人の保険料の2倍の額(約80,000円以上)をペット保険料として納めないと成り立たなくなると考えられます。

ペット医療に標準化(医療費の共通化)は必要?

特定の疾患に対しての標準化は必要になると考えています。

より多くの人にペット保険の恩恵を受けていただくためには、保険料が上がってしまうことはマイナスでしかありません。

ペット保険の保険料が上がることを防ぎ、より多くの方にペット保険に入っていただけるようにするためには、

・保険業務効率化により徹底的な付加保険料の低減(これまで述べてきた大前提)

・損害率(ペット保険で支払われる保険金額)のコントロール

が必要です。

損害率のコントロールですが、現在のペット医療保険の多くはかかった医療費に対して計算されるものが多いため、「ペット医療費自体をコントロールする」と同義となります。

冒頭で書きましたが、ペット医療は100%自由診療であり、その値段は、動物医療提供者が自由に決めていますので、ペット医療費自体をコントロールすることは容易ではありません。

しかし、ペット医療保険の内容を工夫することで、間接的に特定の疾患について標準化(ペット医療費のコントロール)が可能だと考えています。

当然ペット医療保険の内容を工夫できるのはペット保険会社に他なりませんので、ペット医療の標準化に関してペット保険会社が重要な役割を担っていくことは間違いなさそうです。

次回

これまで「今のペット医療保険に足りないもの」を3回にわたって述べさせていただきましたが、次回は引いたテーマである「ペットと人の関係性(日本)」について過去、現在、未来に分けて書いていきたいと思います。

アニポス配信ニュースレターのご案内

アニポスからのニュースレター(2〜3ヶ月に1回程度、株式会社アニポスの事業に関わるニュースを配信しています)をご希望の方は下記フォームよりお申し込み下さい。(もちろん無料です。)

アニポスニュースレター申し込みはコチラ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?