今のペット医療保険に足りないもの 2/3(より安価な保険料?)

今のペット医療保険に足りないものとして前回、その効率性向上の観点から、ヒト医療保険には存在し、ペット医療保険には存在しない「(保険金)審査支払い機関」を提案しました。

審査支払い機関により、迅速で公正な保険支払いが可能になり、急速に成長するペット医療保険市場の健全な成長を支えられるのではないかと考えています。(前回のnote

急速に成長しているペット保険市場ですが、現時点では加入率は約7.7%と9割以上のペット(の飼い主)が加入していません。ペット医療保険というもの自体は約6〜7割の方は知っているとされています。

知ってはいるが、大半の方が加入していないのです。

加入していない理由として「保険料が高いから」をあげている飼い主も多くいます。

今回は、この高い保険料をどのようにすれば多くの方が入りやすい保険料にできるのか?そもそもこの保険料は本当に高いのか?安価にする必要はあるのか?を考えてみたいと思います。

年間約30,000〜60,000円のペット医療保険料

現在は、比較サイトが充実していますので、ペット保険料がどれくらいかかるのかをネットで簡単に知ることができます。

今回は価格.comさんの比較サイトでさくっと調べてみました。

7歳・オス・トイプードルの場合の、補償(通院・入院・手術カバー、70%補償)商品の保険料をみてみました。

※商品によって補償内容が異なりますので一概に保険料だけで比較することはできないことに注意。

ザクっと月額約3,000円〜6,000円、年間にして約30,000円〜60,000円が標準的な価格帯のようです。(被保険動物、保険商品によってこれ以外の場合も当然あります。)

若干補償内容が異なることを考えても、なぜこれだけ保険料が異なるのでしょうか?

ペット医療保険料は純保険料と付加保険料で構成される

この年間約3〜6万円の保険料ですが、ペット医療保険も保険料の中身は他の保険と同様に、想定支払い保険金額から算出される純保険料と保険会社が事業として保険を営むための費用を賄う付加保険料で構成されています。

純保険料と付加保険料の詳細な説明は一般社団法人損害保険協会のFAQを参考にされてください。

純保険料引き下げ方法

純保険料の決定には「収支相当の原則」という大原則が存在しています。

保険契約者から集めた保険料の総額(収入)と、保険会社が支払う保険金の総額(支出)を等しくし、妥当な保険料水準になるようにしているのが「収支相等の原則」です。(出典:一般社団法人損害保険協会)

つまり、保険会社は多くの純保険料を集めたら、その分多くの保険金を支払うことになる、逆に言うと、多くの保険料を支払うため(より幅広い補償を行うため)には多くの保険料を集めなければならないということになります。

そのため、純保険料を下げようとするのであれば、支払い保険金を下げることと同義ですので、補償内容を絞ればよいということになります。

今回調べた(比較した)保険料は補償内容が大体同じものを比較していますので、この保険料の差は純保険料に由来するものでは無いと考えることができます。

保険料を構成するものは純保険料と付加保険料しかありませんので、この保険料差は付加保険料の差だと考えられます。

付加保険料引き下げ方法

付加保険料は大きく分けて、社費(保険会社を維持運営する費用)・代理店手数料(保険商品を販売してもらうこと支払う対価)・利潤の3つで構成されています。

つまり、この3つを削減すれば保険料自体(付加保険料)は下げることができます。

もちろん、ペット保険会社がより大きくなり、発展し、ペット医療の発展そして飼い主の幸せに寄与していただくためには、利潤の低下はあってはならないことだと考えます。

利潤を増大させつつも、社費、代理店手数料を下げることで、付加保険料の引き下げは可能です。

安価なペット保険料だけでペット医療保険は発展する?

ペット保険に加入しない理由として「保険料が高い」を挙げている人がいる以上、これまで以上に多くの方にペット保険の補償を受けてもらうためにはペット医療保険料の引き下げは必須であると考えます。

前述した通り、ペット保険料を今よりも安くしつつペット保険会社が発展する方法は

・純保険料を下げる(補償内容を絞る)

・付加保険料(社費・代理店手数料)を下げる

しかありません。

補償内容を絞り純保険料を、コスト削減によって付加保険料を下げることで、今よりも安価なペット保険商品は作ることはできます。

しかし、損害保険の代表格である自動車保険の価格弾力性は非常に小さいとされていること※から、ペット医療保険においても、保険料が安ければそれだけで多く売れる(爆発的に多くの人が加入する)というわけではないと思われます。

※Cummins, D. J. and B. Venard, 2008, “Insurance Market Dynamics Between Global Developments and Local Contingencies,”

ペット医療保険自体の価値向上こそが加入者を増やすためには重要

では、どうすればペット医療保険の恩恵をより多くの人が受けることができるようになるのでしょうか?

我々がサービス提供しているように、ペット医療保険をデジタル化をし利便性を高めつつ、データ活用していくことは必須ですが、それだけでは十分ではありません。

今よりもより多くの方がペット医療保険により大きな価値を見出してもらえるようにすること、つまり、ペット医療保険を医療保険のペット版と捉えるのではなく、ペット医療保険が解くべき課題(飼い主のニーズ)に対応していくことが何よりも重要だと考えます。

ペットの飼い主がより大きな価値と感じるもの(ペット医療保険に対するニーズ)は何か?

その答えを探すために、引き続きペット医療、ペット医療保険を考えていきたいと思います。

皆様からも忌憚ないアイディアをいただけたら嬉しいです。

次回

次回は、ヒト医療では当たり前のように存在している医療の標準化(診療報酬制度)について、ペット医療保険に生かすことができる箇所がないか考察してみたいと思います。

前回のnoteで述べたように、ペット医療保険の支払いを第三者機関が迅速に公正に行うためには医療の標準化が寄与すると考えられますが、果たして本当にペット医療にヒトの医療と同様の制度(標準化)が必要なのかでしょうか。

もっというと、現在の日本のヒト医療における診療報酬制度よりも良い仕組みをペット医療で構築することはできないか?を考えていきます。

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