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おそらく世界一短くて泣けるアニメ:  「岸辺の二人」

何年か前、仕事の取材で「広島国際アニメーションフェスティバル」に出かけた。仕事とはいえ憧れのアニメ作家、川本喜八郎氏や山村浩二氏に、直にお会いできて光栄だった。何日間も、世界中から集まった何百ものアニメを見る事ができる素晴らしいフェスティバル。そんな時、お昼、近くの小さな食堂で食事をしていると一人の外国人が入ってきた。でも、日本語で何をどうやって注文してよいか迷っている感じだった。たまたまドイツの「オーバーハウゼン国際短編映画祭」の事務局の方と一緒だったので、彼女がドイツ語で彼に話しかけ、代わりに注文をしてあげた。その午後、授賞式でコンクールの最優秀賞を受賞されたのが、父と娘の絆を描いた「岸辺の二人」で、なんとその方がその作品のプロデューサーだったのだ。たった8分間のモノクロームの物語なのに、いつまでも忘れられない珠玉の名作だ。

話は、さらに続く。感動の気持ちを残したまま会場を離れタクシーに乗って駅に向かった。運転手さんにアニメフェスの事を聞かれたので、このアニメの話をしたら、彼が突然しんみりと亡くなった奥さんの話をし始めたのだ。何年たっても失った父を想う娘のストーリーが、彼の悲しみと重なったのだろう。思い出に残る出会いだった。

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