なぜ今もガンマで歪まされた画を見ているのだろうか

前回こう締めた。

「しかし何故ブラウン管からLCDやOLEDといったデバイスになった今もそういった補正がのこっているのだろう?
LCDやOLEDもそういった出力特性の癖があるからだろうか?
これは明確にNOである。LCDやOLEDであればリニアな出力をすることは十分できる。」

そう。もうガンマ補正を使う意味はない。
にもかかわらず今もガンマ補正は残っている。
それは人の視覚の特性が理由である。
一般的に目の特性として
・明るすぎるところよりも暗部~中間輝度に対して階調を感じやすい
・見え方は「リニア」よりも「対数」に依存する。
 つまり輝度が二倍になっても二倍明るく見えるわけではない。
・好ましい明るさの範囲が存在する
ということが挙げられる。このうち前2つはガンマ補正があったほうが好ましい。

先の記事で参照させてもらった記事を今一度見てみよう。
https://qiita.com/yoya/items/122b93970c190068c752
メリット~の項目にあるが、リニアであれば50cd/m2までの表示を0-128の階調で表現する必要がある。しかしガンマ補正を行うと0-50cd/m2の範囲に対しデータ上では200近い階調をもたせることが出来る。ガンマ補正を行うことでより低輝度~中間域を細かく描く事ができるのである。
階調を感じやすいところをより細かく、階調の判別が難しい高輝度側は多少荒くても仕方ない、目の見え方に沿って限られた階調表現を有効に活用しよう、というのがガンマ補正を行う最大の理由である。
もちろん、ガンマ補正の有無を急に変えてしまうと、ガンマ補正が前提であった表示機器での表示が大きく崩れてしまう、というのもあるだろう。

ちなみに近年の映像制作やシアターではより強いガンマ補正を想定している。bt.1886はガンマ2.4を、ST428-1では2.6を採用する。
これは近年の表示機器における黒側の表現能力の向上や、シアターでは屋内照度が低いことでより視覚の黒側における認識能力が高くなることに対応したということだろう。

しかし、注意しておきたいのは、こうした補正により高輝度域の階調表現が大きく損なわれる、ということである。
参照の記事でも言及している通りで、視聴だけを考えると良いのだが、映像制作者の視点ではこれが問題となる。これについては何れ別の機会で触れよう。

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