古い記憶 半分に

不登校になる直前の日記が出てきた。体育館の床とシューズが擦れるみたいに、きゅっと軋んだ。授業だるいと言いながら、教師の悪口を言いながら、本当に学校がつらいことは誰にも言えなかった。日記も英語のワークも中学3年生の5月で止まっている。
勉強が全くわからなくて、中学の英語のワークをもう一度開いた。悔しかった。なにも変われてないって、前に進めてないって言われてるみたいだった。ひとつ前のページにはあの頃のわたしの几帳面な文字が並んでる。悔しくて涙が出てくるよ。こんなはずじゃなかったもん。ペンケースにはまだ、大好きだったバンドの缶バッジがついてる。中学一年生の冬、定期テストで1桁取れたから、どきどきしながら一人でライブハウスに行った。かっこよかったなあ。最近の曲は全然聴けていない。今日、そのバンドきっかけで仲良くなった友だちに会った。その子ももう聴いてないって言ってた、けど、そのとき大好きだった曲のことは覚えてたし、そのときの気持ちも覚えてた。真面目でいっこもはみ出せない優等生だったわたしと、学校も行かずにバイトも飛んでのらりくらりしてるあたしが、同じ曲をそれぞれの気持ちで聴いてる。あたしはもう、そのまっすぐな歌詞に純粋に感動することはできないかもしれないけど、ちょっと悪態吐きながらすごく愛おしく思うよ。泣きながらでも中学のワークをやるよ。その音楽が、あたしに降り注ぐ光の中でいちばん眩しいから

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