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サイエンスアゴラ2021どうぶつたちの眠れない夜に 実験動物編<質問・回答集>

こんばんは。

11月5日に
「どうぶつたちの眠れない夜にスペシャル 実験動物編」と題して、サイエンスアゴラに出演しました!

内容はこちら→You Tubeリンク

そのときに頂いたご質問に回答しましたので、どうぞご覧ください!

①事前アンケートより【動物実験のご経験がない方からのご質問】

1:ペンギンの飼育をしている人から、個体数の管理のために生まれた卵を潰すこともある、という話を伺ったことがあります。その方は〝科学者〟なんだなあと感じました。同じ人間の形をしていても、私にはその人のようにはなれないと思います。彼らはどういう時に心を動かされるのでしょう?

⇒ まず、悲しい気持ちを抱えないまま卵をつぶしているスタッフはいないことをお伝えしたいです。飼育スタッフは毎日ペンギンと向き合い、愛情をこめて飼育を行っています。しかし、動物園は限られたスペースで動物を飼育しています。動物たちが生活するのはその限られた空間です。限られたスペースでたくさんのペンギンを密で飼育するのは、1匹1匹にとって幸せとは言えません。

中には、野生に返せば?産ませなければいいじゃない?という声もあるでしょう。しかし、飼育下で育った動物たちは、本来ならば、親や仲間たちから教わるべきであった生活の方法を全く知りません。なので、無責任に野生に返して死なせてしまうようなこともできないのです。

また、動物達にとっては、繁殖のための行動も、大事な「自然に近い」行動です。繁殖行動も健康でなければすることは難しいでしょう。また、ペンギンがどうかはわかりかねますが、多くの動物には恋の季節があり、その時期にきちんと繁殖行動ができないと、体調を崩してしまうこともあります。毎日ペンギンと向き合う飼育スタッフも、様々な矛盾や葛藤を抱えながら、責任をもって飼育できるだけの数を維持するために、しかたなく卵を潰しています。

科学者も人です。皆さん、熱い思いや、世の中をよくしたい優しい気持ちや強い気持ちで日々研究に取り組まれています。実際に科学者に会ってお話をされてみると、その深い人間臭さにびっくりされるかもしれませんね。そんな人間臭い優しさから、探求心がうまれ、科学者が生まれるのでは、と、私は思っています。そうでなければ昼も夜も無く続く研究を何年も、何十年もやっていけないでしょう。(わたなべちえ)

2:どの製品の実験が、どこでどのように行われているのか。その情報を公開する義務は、メーカーにありますか?

→動物実験をしていないことを公表するメーカーはあると思いますが、動物実験をしていることを公表する義務はメーカーにはありません。ただし、医療用医薬品の場合は添付文書(医療者への説明書)の中にどのような動物実験を実施したかを記載する必要があります。(大沼)

3:実験動物はどのようなルートで集められるのか。

→自施設で繁殖させている場合を除いて、基本的には業者(ブリーダー)を通じて購入します。たまに言われる野良犬や野良猫を捕獲してきて実験に使用することはありません。(大沼)

4:なぜその種類(動物/品種)が選ばれているのか知りたいです。
→実験目的から逆算して、その病気を再現するのに都合のいい動物はこれ、という感じで決めていきます。また、データの信頼性のためにも、なるべくイヌやサルなどたくさんの数を扱うのが難しい動物は用いず、マウスやラット、さらには魚など、一度にたくさんの数で行える動物で実験できないかは常に考えています。(大沼)

5:実験で使われた後も生きている動物の扱いについて。何度も同じ、また別の実験に使われるのか、いづれは実験動物から引退出来るのか知りたいです。

→基本的には1匹の動物に対してひとつの実験を実施します。しかし、イヌやサルなど入手するのが難しい個体に関してはウォッシュアウトと呼ばれる、薬が体内から抜ける期間を間に挟んで、複数回、実験を実施することもあります。引退に関してはリホーミングの項目を参考になさってください。(大沼)

6:亡くなった動物をどのように扱っているのか知りたい。身動きできなくしたり痛みや苦痛を与えたりしていないのか。

→亡くなった個体は基本的に焼却処分しています。動物実験においては動物福祉の5つの自由のいずれかを制限してしまう場合が多いですが、痛みや苦しみが最小限になるように努力しています。(大沼)

7:飼育環境、苦痛・恐怖削減のための工夫。その他特別なケアなど。全体的なシステムの流れとそれに伴う動物への配慮がどうなされているか知りたいです。

→動物実験を実施する者には、海外の情報も含め、最新の情報を入手することが求められています。コストの関係上の制約もありますが、例えば手術後の動物には回復が早まるように、温かくなる電気マットを敷いたり、高カロリーのゼリーなどを与えたりすることもあります。動物福祉に配慮して実験を実施しています。(大沼)

8:実験が始まる前の仕入れ管理状況、実験が終わった後の管理、実験動物に関する仕事に要求される特性

→施設にもよりますが、電子システムを用いて実験を管理する場合が多いと思います。お仕事に向いている方の特性に関しては特にこれというものはありませんが、実験に対して素直で真摯に取り組める方が良いと思います。(大沼)

9:実験動物の心身に著しい危害を加える実験をおこなう実験者の心理的負荷(素朴に想像すると、特に最初の頃は心理的負荷が大きく、徐々に訓練によってそれが小さくなるのではないかと思う。というか、慣れない人は辞める。けど、長く続けたからこその心理的負荷とかもありそう。)

→CFに関しては感受性の豊かな、若い方が特に影響を受けると言われています。また、実験内容によっても心的負担の大きさは異なると考えています。心を殺して実験に取り組むのではなく、動物実験のありかたなどの教育を通じて、従事者が動物福祉に根差した動物実験に積極的に取り組むことが出来るよう、管理側も学んでいく必要があると考えています。(大沼)

10:人の治療方法の発展のために行われる治験も、動物実験の一種だと思うのですが。

→本来、動物実験は人間での有効性・安全性を担保するために行うシミュレーション実験ですので、そういった意味では人間で行う治験も患者さんに対する動物実験のひとつと呼ばれるかもしれません。(大沼)

11:中には楽しんでる人もいるのではないですか?

→いないとは言い切れませんが、動物福祉上、問題がある行動が見受けられた場合には実験停止なども含め、ペナルティを課している施設も多く存在しています。(大沼)

12:動物実験の境目

→境目は時代の移り変わりによって変わってきています。哺乳類はもちろんのこと、魚類を用いた実験も動物実験とみなすところもありますし、最近ではイカやタコの実験も動物実験として審査するところもあります。(大沼)

13:回避できる方法はないのか

→「回避」という言葉をどうやって考えるかによりますが、現代社会において動物実験の恩恵を受けてきたものから完全に回避するのは難しいと思います。その一方でヴィーガンの方々は出来る限り動物を利用したものから避けた生活を送っていますので、参考になるかと思います。(大沼)

14:学校の授業でまでやる必要はあるのかな?といった印象です。

→個人的には高校までの授業での動物実験は選択制で良いと思っています。(大沼)

15:麻酔を義務付ける法律はどこまで守られているのでしょうか?

→義務付ける法律はありませんが、動物実験審査において、なぜ麻酔を使用しないのかは確実に問われると思います。(大沼)

16:実験される側の心理について著された書籍はありますか?

→不勉強で申し訳ありませんが、分かりません。(大沼)

17:実験に人間を使わないのは何故ですか?

→現在でも治験(臨床試験)という形で人間を対象に試験を行っています。(大沼)

18:ケージ、水瓶等マウス飼育器材の洗浄滅菌供給を仕事にしています。研究室は動物の飼養管理に予算を割かないのが普通で、動物の飼育についてごくごく基本的な部分(適切な飼育頭数、床敷の量、ケージ等の交換頻度、などなど)すら知らないのではないか(ネズミはテキトーに飼っても問題ないと考えている)と思われる利用者(研究者)も多いです。施設の管理者(獣医師)いわく「実験動物の飼養管理について細かいことを具体的に定めた指針が出されてないので、各々のモラルに頼るしか無い」そうですが、実験動物を飼育する施設への第三者による抜き打ちの査察などは実現不可能なのでしょうか。研究者にとって大事な実験のデータを取るのに、なぜこんないい加減な飼育環境の管理で満足できるのか、30年前から不思議に思い続けており、その間何も進歩が見られません。実験動物が、意識低い系の研究者にまともに扱われる日は来るんでしょうか?

→管理者の方が具体的に定めた指針が出されていないのですね…。環境省の飼養保管基準には具体的な数値基準も含めた記載があります。これは法的に強制力を持ったものではありませんが、遵守すべきことであることに間違いはありません。動物福祉という考え方は、日本では十分に浸透しているとはいえません。研究者の方が動物福祉を理解していないということも多くあるのが現状です。大変難しいかもしれませんが、管理者から研究者に向けてその必要性を論じていく必要がありますし、こういったことを動物実験従事者と管理者が積極的に情報交換できる場が必要だと思います。そのために、わたしたちの学会の方でも、なにかできることがないか、積極的に考え、行動していきたいと考えています。(大沼)

19:インターネット上で見る実験動物の環境は劣悪なものがよく取り上げられていることが多いが、あのような環境の方が多いのか、それともああいった環境は一部の施設なのか。

→インターネット上で見ることのできる劣悪な環境は30~40年ほど前のものであり、現在ではあのような環境はほぼありえないと言えます。正しい情報が皆様に伝わるよう、情報発信を、少しずつではありますが、がんばってまいります(大沼)

20:彼ら(実験動物)に提供できる可能性のある、最大と最低を知りたいです。

→実験動物に提供できる最低は数値基準であり、最大は制限がありません。国内の最低基準は法的拘束力がないため、一律に決まっているものではありませんが、多くのところが環境省の飼養保管基準や米国ILARガイドの基準を遵守しています。一方で提供できる最大の動物福祉ですが、実際に土を使って飼育しているところもあるなど、許される予算によって容易できる環境にばらつきがあるのが現状です。(大沼)

21:
●人工心臓の開発において動物実験の代替として実験機械の開発をしたという話をみたが、そのような人工のもので代替可能にしようとする動きがどの程度あるのか知りたい。
●不勉強なのですが、動物実験に替わるものは、すでに検討されているのでしょうか?
●ウーパールーパーも実験生物と聞きましたが、どういう研究に使われるのでしょうか?

→(上記3つ)機械に限らず、iPS細胞などを利用した再生医療は非常に進んでいます。ウーパールーパーも再生力が非常に高い動物として注目を集めているとのことです。この研究分野では実際に細胞から臓器を作ることを目的に研究がなされており、代替法の観点からも非常に興味深い研究です。(大沼)


②事前アンケートより【動物実験のご経験がある方からのご質問】

1:3Rを実現するための技術の進歩・発展について最新ニュースがあれば知りたいです。実験動物の環境エンリッチメントの国内の現状についても!

→JALAMでも最新の論文・ニュースについて触れていく予定ですので、そちらを参考にしていただければ幸いです。エンリッチメントも出尽くした感はありますが、詳しい方が学会内にいらっしゃいますので、コラムへの寄稿を依頼する予定です。(大沼)

2:個人的にマウス、ラット以外の動物実験に疎いため、サルなどの動物実験の実態を知りたいです。

→ご自身が扱っている動物以外はみなさんどの動物も疎いと思いますので、関係者に向けた初歩的な教育コラムもJALAMにて今後、提供していきたいと考えています。(大沼)

③チャット欄のコメント

1:化粧品成分は安全性が確認されたものを組み合わせているので、代替実験が進んでいるとのことですが、化粧品でも新しい成分に関しては、動物実験が実施されているのですか?

→化粧品も薬効をのある新成分に関しては動物実験を実施する必要があります。ですが、化粧品の動物実験に対する批判の高まりを受けて、実施されていない(新成分を含むものがない)のが現状です。(大沼)

2:どのような形でどのような内容を情報公開をしていくのが良いのでしょうか。また一般の方はどのような情報公開を求めていると思われますか。

→私たち学会関係者も一般の方々がどのような情報を求めているのかを認識できていない部分があり、どのような内容の情報公開をしていくべきなのかまだ分かっていない部分が多くあります。そのような中で、イギリスのUAR(Understanding Animal Research)という団体の手法はお手本にすべき一つの方法だと考えています。(大沼)

3:リホーミングが決まった元・実験動物の、トラウマや条件付けによる恐怖などを和らげるための専門知識をもったトレーナーのような職業が必要だと感じました。海外ではそのような職業が普通だったりしますか?

→全ての事例がそうではありませんが、必要に応じて動物行動学に精通している方や獣医師など専門知識を持つ方がサポートにあたっている場合もあるようです。ただし、極端に臆病な個体など、性格的に譲渡が難しいと判断される場合はリホーミングできない可能性もあると考えています。(大沼)

4:情報発信とは具体的に何を提供すればいいのでしょうか
出す情報に気を付けないと逆効果なきがします


→基本的には研究秘密が多く関わっていますので、発信する内容は個人で決定するのではなく、学会など団体を通じて発信した方が良いのかもしれません。学会としても状況を整理し、一般の方々がどのような情報を求め、どのような情報を提供できるのかを考えていきたいと思います。ただし、SNSなどを通じた個人の声も必要だと思いますので、研究秘密に触れない範囲内で積極的な発言をしていくことも個人的には期待しています。(大沼)

④事後アンケート(11/6 21時時点)

1:研究とはいえ、人として「こういうことはやらない」という境界線があるかどうかについての質問があったが、その回答は施設ごとに実験動物の苦痛度によるガイドラインがあるというものだった。もし、これまでの体験から科学に貢献したいけれど「こういうことはやらない」と大沼さん個人として決めていることがあるなら、教えてもらいたかった。

→個人的には「こういったことはやらない」というよりも、「前例にとらわれない」ことを重視しています。過去の試験で麻酔を使用していなかったからといっても本当に麻酔が使えない試験なのか、金網の床で飼育していた試験をプラスチックの床で飼育できないのかなど、動物福祉に根差した考えで可能な限り動物の苦痛を軽減できるように考えています。(大沼)

2:CFや、実験動物の使用数について知りたいです

→CFは国内でもようやく話題に挙がってきた程度なので、これから多くの方に語られるようになる内容だと思います。実験動物の使用数に関しては、ブリーダーが所属している団体から、3年おきに販売数調査が報告されていますのでそちらを参考になさってください。(大沼)
http://www.nichidokyo.or.jp/production.html

3:動物実験がメインではないけど、少し触れている位の大学生向けのお話があったら嬉しいです。
情報発信の例をすこし具体的にききたかったです。


→JALAM(https://jalam.ne.jp/)では大学生向けのコラムも検討しております。ぜひ今後の参考にさせていただきます。国内の情報発信に関してはこれからというところですが、上記サイトや「実験動物福祉コミュニケーション」のサイト(https://www.lab-awcom.org/)でも様々な情報を提供していますので参考になさってください。(大沼)

4:業界内にある考え方の違いとして、実験動物にかかわる研究者側と実験動物自体を飼育管理して維持する側との意識の違いや双方へのコミュニケーションの在り方
(現在、企業が自前で動物実験や飼育管理を行うことが減ってきていますが、それを支える業界(受託機関)とクライアントさんとの間での意思疎通などの問題も大きな課題があると思うので)

→仰るように、業界内でも研究者と飼育管理担当者間で意識にかなり開きがあると思います。そこで解決の鍵になるのは、コミュニケーションだと考えます。こういった時こそ管理獣医師などの間接部門が間に入って調整する必要があるのではと考えています。動物実験申請書を共有することなどを通して、なぜこの動物実験が必要なのか?具体的にはどのように実施するのか?などについて、お互いの認識に違いが無いように話し合える場が必要だと思っています。(大沼)

5:動物実験申請書の審査がどの程度、厳密に行われているのか?

→どこの施設でも厳密に行われていると信じていますが、実際にはレベルの差があると思います。そのレベルの差を埋めるのが第三者認証制度で、この制度では第三者機関が施設に応じて適切な動物実験審査が出来るよう、改善を要求しています。(大沼)

6:動物実験委員会の実際の活動状況や問題点など(動物実験を実施するにあたっての土台の部分の課題や改善事例など)

→課題としては、ハード(施設や設備)の不足による問題をどう解決するか、などがあります。動物福祉のためにソフト(人の接し方や、上手い人が採血などの行為を行うなど)を良くすることは出来ますが、それに伴うハードの改善はコストの関係上、どの施設にも強制できるものではありません。そのような場合でも動物実験を実施するのか?というのは難しいところです。一方で改善事例をひとつ挙げるとすると、PAM(Post Approval Monitoring:承認後モニタリング)という制度があります。これは動物実験が審査・承認後に本当にその申請書どおり行われているか、動物実験委員会でチェックをする制度です。この制度により、実験者に対して注意喚起や改善を求めることもあります。(大沼)

7:動物実験の再現性に対する考え方をもう少し取り上げて欲しかった。

→動物実験の再現性の問題は最近よく取り上げられています。動物実験の再現性を改善するためにも、動物実験のデザイン(計画)や論文投稿の際のルール作りが欧米を中心に行われています。日本でも多くの機関で教育訓練に盛り込まれていると思います。また、JALAMのコラムでもこれらの話題には触れていきたいと思います。(大沼)

8:新型コロナワクチンの開発・実装が従来より短期間ですんだのは、CRISPR-Cas9を用いてヒトの遺伝子を組み込んだマウス受精卵の作成と受精卵を移植したマウス母体の子宮が”製造”した「コロナウィルスに罹患するマウス」のおかげと聞いている。もし「研究のためのヒト受精卵の作成」が始まれば、ヒト母体の子宮が”製造”する「デザイナーベビー」まで一気に進むのではと危惧する。機械が”製造”するような違和感がある。動物実験従事者のみなさんが人として「こういうことはやらない」と拒否する基準は何ですか。

→難しいところですが、ヒトの倫理と動物実験倫理は異なるものです。私たちは基本的に動物実験のみの専門家です。実験の中で、避けることのできる動物の苦痛がある場合には、そのような実験は行われません。動物実験審査の段階で除外されるような仕組みになっています。(大沼)

9:動物実験に関して、今どんな情報発信がされているのか。

→国内では、前述のJALAMや動物福祉コミュニケーションのサイトを使った発信が主だったところですが、最近は従事者個人によるSNSでの情報発信も見受けられるようになってきました。(大沼)

10:実験動物を扱ったことのない方で、動物実験に対する否定派の人(動物実験がある程度必要だと思っている人)が思いのほか多く、驚きました。講演の内容的に、フィルターがかかっているせいでしょうか。

⇒もしかしたら、無意識のうちにかけているかもしれません(そうだとしたら申し訳ありません)。しかし、素直に申し上げると、もっと否定的な意見はありました。しかし、「否定派」というよりも、実情を知らなくてとか、ネット情報だけでこうだ!と思い込んでらっしゃる意見が多い印象でした。これらの否定的なご意見は、実験をされている側が、よくも悪くも情報を流さなかった影響が大きいように思えました。(わたなべちえ)

11:動物実験をする人に対する過激な反対派がいて、実験者の個人情報を流す人もいると聞きました。海外では、そういった過激派から研究者を守る団体もいると聞きました。日本でもあるでしょうか?無い場合、動物実験の事を発信する際、リスクになると思うのですが、その辺りのお考えをお聞きしたいです。

→過去にはそのようなことを危惧して情報発信に二の足を踏んできたこともあると思います。しかし、正しいことや改善に取り組んでいることを発信する際には、間違ったことを言っているわけでは無いので堂々と発信すべきだと考えています。そういった情報発信に対して個人的に向けて攻撃をするのは間違いで、個人情報が流された場合には法に則って粛々と対処すべきだと考えます。一方で、個人を明かして発信するのにためらう方もいらっしゃると思いますので、どこかの団体を通じて発信できる場を設けることも私たちの学会に求められていることの一つだと考えています。(大沼)

12:動物実験と代替法、コストはどちらがかかりますか?

→現在は代替法が未熟なため、開発費用も含めて代替法の方がコストは高いと考えています。一方で、将来的にはパソコンなどによって代替できるようになるでしょうから、実際の動物を使用する方がコストは高くなるかもしれません。(大沼)

13:社会からの理解を得るための情報発信が、実験動物の飼育環境整備や従事者のCF緩和にとても重要だとわかりました。ただ、冒頭でみなさんがおっしゃっていたように、人によってはそういった話をきくだけでも心理的負担が大きい場合があると思います。どのような立場の人が、どのような場で発信するのがちょうどよいと思われますか?

→動物実験の情報についてはそんな話聞きたくないという方が少なからずいらっしゃいます。従事者としてもそのような方々に無理に聞いてもらうのではなく、同じような境遇の方や、動物実験に対して理解のある方々、もっと知りたいと思っている方々に向けて発信していくことで良いと思います。その際には取捨選択のできるインターネットやSNSが適しているとも考えています。(大沼)

14:一般の方々ともっと深く議論を進めるために、何が必要か?
(課題設定なのか?具体的事例なのか?など)

→現在は動物実験に関することがあまりにもブラックボックスのように扱われていますので、積極的な情報発信をしていく中で、リホーミングなど自分事として捉えやすい話題を中心に議論を深掘りしていければと考えています。そうしていくことで動物実験の従事者自体にもスポットが当てられ、心的負担に対するケアの必要性なども理解が進んでいくのではないかと思います。(大沼)

15:大沼さんが将来コンピューター・シミュレーションの精度が上がれば動物実験の代替になるという期待について話していた。だが、やり直しのきかない現実世界から実験者が距離をおくことで、「危害」にたいする慎重さが失われるのではと危惧する。故高木仁三郎はヴァーチャルなシミュレーションを優先するようになった原子力業界の技術者の「リアリティの感覚」の欠如に注意を促している(『原発事故はなぜくりかえすのか』2000年 岩波新書)。同様なことが動物実験をしない医薬品・化粧品開発で起こる可能性はないか。

→動物に対する薬である動物薬を除いて、基本的には動物実験は人間のために行っています。今後も人間に対するシミュレーションは治験という形で残り続けるでしょう。しかし、非臨床試験と呼ばれる、治験の前に薬効や安全性を担保する動物実験は必ずしも必要ではないと考えています。少し乱暴に言ってしまえば、現在の動物実験でも人間に対する薬効や安全性は完全には担保されていないため、それが動物実験と同程度の信頼性があるコンピュータに置き換わったところで何の問題があるだろうかと思うのです。結局、治験に入るためのプロセスでしかないのであれば、使用される動物の数は出来るだけ少なくすべき、コンピュータシミュレーションを優先すべきだと考えています。(大沼)

16:紹介映像のウサギ部分だったか、スライドの下の方に書いてあったカタカナの言葉が分からなかったので教えてほしいです。書いてあったことも忘れてしまったので、調べられなくなってしまったので。

⇒ドレイズテストのことでしょうか?以下に使用した画像を載せておきます。(わたなべちえ)

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以上となります。

たくさんのご質問ありがとうございました!



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