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サイエンスアゴラ2022「食べられる動物の言葉が分かったなら、どうする?」出展まとめ

こんばんは!
私たち「どうぶつたちの眠れない夜に」は、11月3~6日に開催されたサイエンスアゴラ2022に出展しました。

サイエンスアゴラについては、こちらをご覧ください。

国立研究開発法人 科学技術振興機構が主催する、さまざまな立場の人たちが参加して科学分野について対話するオープンフォーラムイベントです。

JST 科学技術振興機構

私たちは
食べられる動物の言葉が分かったなら、どうする?
と題して、出展をしました。

東京農工大学教授の新村毅先生を特別ゲストにお招きし、アニマル・コンピューター・インタラクション(以下ACI)をキーワードに、動物と会話ができる未来が来たら、動物とどんな関係を作っていけばよいか、また、食の未来について考えました。

当日のアーカイブはこちら▼

今日は、当日の参加者のみなさんとの対話を中心にご報告します!
ぜひ見てみてくださいね。

1.会場入り!


会場はお台場テレコムセンター。
入口でパシャリ。

真ん中が吹き抜けの会場です。

2.本番!

本編では、新村先生の研究の紹介をしたり、動物福祉のお話をしました。

新村先生の研究では、アニマル・コンピューター・インタラクション(動物の行動や鳴き声をコンピューターに覚えさせて、その動物がどのような状態かを推測したり、行動を制御する技術、以下ACI)のニワトリでの研究をお話していただきました。

また、先生の研究でもキーワードになっている動物福祉について、意味や考え方を参加者のみなさんにシェアしました。

この記事では、当日参加してくださったみなさんのコメントを抜粋してまとめました。
各テーマについて、ぜひ一緒に考えてみてください。

もしも動物と話ができたら、どんな動物と何の話をする?

【みんなの意見】
・エゾリスの研究をしているので、どんな気持ちで行動しているのか知りたい
・サメと「友達になろう」と言いたい
・ペットの犬と話したい

対話1:お肉を食べなければ全部解決…??

この時間は、この中で新しいたんぱく源として取り入れたいと思うものを教えてください」という質問から、お肉を食べることや自分たちの食べているものについて考えていきました。

【みんなの意見】
・BとCなら食べる。虫は気持ち悪くて嫌。
・Cなら食べる。AとBは動物の命を奪っていると思うから。
・A。一番自然だと思うから。昆虫は美味しいと聞いたから。
・お肉を食べないと、甲殻アレルギーのある人は食べられない。選べるとよい。
・完全栄養食は、栄養バランスを考えずに手軽に栄養を摂れる。でも、メンタルの栄養も必要。栄養を摂るだけでなく、誰かと食べたり話しながら食べることで、心の栄養にもなる。実際は、Cだけでは生きられないと思う。だから、完全栄養食だけ食べ続けることで自分の心、メンタル面がどう変化するか人体実験したい。Cを食べ続ける実験をしたい。
・今の生き物を食べるという生活に近いし、ずっと昔は虫を食べていた為人間の体に一番合っているため、健康に良いと思うから
・野菜も育てる過程で野生動物や虫などを殺してますし、そう考えると難しいですね
・動物福祉を取り入れた飼育環境の研究を進める。
・動物が健康的に過ごせる環境は、人も地球の健康も守れるように思います。
・どんな理由があっても、他の生物に食べられる為に殺されたくないから。動物達も檻に入れられたり、搾取されたり、殺されたくないと思うので…
・環境や動物たちに優しいかたちで生産されたお肉をなるべく優先的に消費していきたい。
・新村先生も仰ってた、日々の食糧に困っている人が地球にはまだまだ多いことを考えると、みんなが肉を食べないようにするのは無理だと思う。

対話2:日本のニワトリの飼い方が問題らしいけど、なにが問題?

この時間は、さまざまなニワトリの飼い方を紹介し、メリット・デメリットをシェアしました。その上で、どんな飼い方のニワトリから生まれた卵を買おうと思いますか?ぜひ、理由も教えてください!という質問を投げかけて、みんなで考えました。

A:バタリーケージ B:エンリッチドケージ C:平飼い

【みんなの意見】
・どういうことを目的としているかで変わるが、ニワトリの気持ちに注目してみるとCの方がニワトリは自然の環境でいられるためニワトリにとってはいいかも
・放牧平飼い養鶏家さんとお話させてもらったことがあります。死亡率はきわめて低かったのですが、一般的には放牧平飼いの死亡率は高かったのですね。勉強になりました。食べてみたいのですが10個600円なのでなかなか通常購入は厳しいですが。
・平飼い卵、Cを選ぶべき。糞の上を歩くのは、汚いように思うが、鶏らしさ本来の鶏の生育環境に似ている気がする。でもやはりコスト的に買うのは、Aなのかもしれない。

対話3:どうして卵の値段が上がっているの?

このテーマでは、卵の価格を通して、自分ならどんな卵を買っていきたいかを考えていきました。

日本は世界で何番目に卵を消費する国でしょうか?というクイズを導入で行いました。

ニワトリの卵は餌代や人件費、燃料費が上がっている現状を踏まえつつ、これからの選択をどうしていきたいかを考えました。

【みんなの意見】
・Aだけど、国も補助をするとか積極的に考えてもらいたいです。
・Aを買いたい気持ちは強いが、日常的にいただくものなので、不況であることを考えると、ある程度コストを意識しなければいけない。
・Aはどんな製品も生産過程がわかりますから、食品も同じく育つ環境などわかると購入時の選択肢が増えるので良いと考えます。
・卵の価格は安い時代が長かったから、高額な卵にいまのところ順応できない人が大半の気がします。
・狭いケージで飼育せざるを得ない動物に対して可哀想だなと思ってしまうのですが、一概に狭いから可哀想だと決めつけてしまうのも違うのかもしれないなと思いました。生産者、消費者、家畜動物のつながりを意識した関係を築いていけたらいいなと思いました!

対話4:ACIが当たり前になった未来で食べることにどう向き合う?

この時間は、動物の言葉がわかるヘッドフォンが手に入ったら、使う?使わない?どうやって使う?という質問をしました。

【みんなの意見】
・牛が牛乳を絞られているときの本心を聞きたい
・鳩がどうして自分の家に居つくのか聞きたい
・病気になったときに体調を聞く(どの動物にも)
・使う。動物園に行った時や野生の鳥とお話がしたい。
・ペットが元気ないとき、どこか痛いの?とか聞きたいです。
・飼い猫に今の飼育環境は快適かどうか聞きたいです。使い慣れたらヘッドフォンをつけて動物園巡りをして色々な展示動物と話したいけど、環境の不満を沢山聞いてしまった場合に辛くなりそうです。
・動物園に住む動物に、野生とどっちがいいか聞いてみたい
・うちのイヌが他のイヌに吠えてる時、嫌いだから吠えてるのか構って欲しいから吠えてるのか聞いてみたい
・飼っていた老犬に、これまで幸せだったか聞いてみたいし、感謝を伝えたいです!

対話5:もっと知りたい!ニワトリのACIについて!

この時間は、新村さんになんでも質問してみましょう!ということで、ニワトリロボットや研究の動画を紹介しました。

【みんなの意見】
・親鳥と一緒に暮らすヒヨコが良い子に育つということでしたが、それならば、親子一緒に育てれば良いと思うし、動物福祉に則っていると思うのですが?なぜ、ロボット親どりと過ごさせるのですか?
⇒養鶏場のヒヨコは親がいなくても育ちます。そのため、何万羽のヒヨコに対して、さらにたくさんの親を入れて一緒に育てるのは、限られたスペースでは現実的ではないです。それを工学技術を使って、現実的にヒヨコを健康に育てることを研究しています。

そのほか質問・回答まとめ

・自分は、動物福祉は大事だと思うのですが、この話を他の人に話した際に値段上がるんだったら買わないよねと言われてしまいました。日本の消費者は、値段を一番大事に考えるという購買行動を取りますが、値段を上回る福祉的飼育のメリットは消費者に何か提示できませんかね?
【新村先生の回答】
日本の消費者アンケートなどを見てみると、価格に対する対価として、何らかの付加価値、例えば味が変わる、あるいは栄養素が高くなるといったことが大事だと思っているようです。EUでは、動物の福祉が良ければ高くても買う消費者が多いため、そのような研究はこれまでほとんど進んで来なかったのですが、私達の研究で、値段を上回る福祉的飼育のメリットが生じることを示唆するデータが得られてきています。もし、栄養素などが変わりうるとしたら、それを食べる私達ヒトの健康状態も向上する可能性があるため、そのような付加価値を付けることで購買行動が変化する可能性はあると思っています。そのデータについては、まだ未発表なのですが、今後の研究展開に御期待頂ければ幸いです。

・本来の鶏の種としての行動発現ができたうえで死亡率も上がるけれど、野生動物でも普通に死ぬわけなので仕方ないのかなと思いました。集約して大量生産しなければならないというところが問題なんでしょうか?
【新村先生の回答】
80パターンほどの行動のうち、止まり木に止まるといった強い欲求を持つ行動は積極的に発現するのが良い一方で、攻撃行動ももちろん正常行動なので発現するのは良いことなのですが、その頻度が適切な範囲内にあることが大事になってきます。攻撃行動が多すぎると死亡率も高まるので、それは福祉的にも良くないことになります。現在、そのような問題行動を支配している遺伝子を明らかにする研究を進めており、その遺伝子がわかれば遺伝的な改良もできるようになります。そのような過程で、行動ごとに切り分けて、どんなに発現しても良い行動はそうする、適切な範囲内が良い行動であれば遺伝要因(あるいは環境要因)による修正を行っていくことで、より良い状態になるのではないかと考えています

・卵の話がメインで説明されていましたが、鶏肉の生産としてはどうなんですか?効率とか味とか。
【新村先生の回答】
鶏肉を生産している肉用鶏は、ヒヨコからわずか2ヵ月程度で出荷体重になるような非常に急激な成長をすることが特徴で、平飼いで飼われていることが多いのですが、その急激な成長により突然死や足が弱くなる脚弱という症状がよくみられます。そのため活動量を多くするための試みとして、飼育密度を低くしたり、24時間点灯ではなく明暗リズムをつけて活動と睡眠のリズムを生じるようにしたりといった項目が肉用鶏の福祉を向上させる上で重要となっています。採卵鶏と同様に、福祉を向上させることで生産効率は悪くなり、味については未解明のテーマです。国産の地鶏のように、肉用鶏(ブロイラー)と比較して非常にゆっくり育てる方法(あるいは太陽光を浴びる)では、味が変わってくるということが報告されています。

・アニマルコンピューターインタラクションは、本日は声についてですが、それ以外の行動などでも可能でしょうか。
【新村先生の回答】
可能です。動画を解析したりもします。

・動物は嗅覚情報をコミュニケーションに多く利用していると思いますが、それもACIで研究できるのでしょうか。
【新村先生の回答】
今回紹介したのは鳥類の習性を利用したものです。鳥類は視覚あるいは聴覚を利用したコミュニケーションが多いため、実現できている部分はあると思います。哺乳類などは嗅覚を用いたコミュニケーションを行っていることが多く、嗅覚を用いたACIが実現できるかはわかりませんし、ハードルは鳥類よりも高くなると思います。ただ、アンモニアといった一般的な物質であれば、機械のセンサーや化合物なども存在しているため、可能性はあると思いますが、種あるいは個体ごとの違いを検出してACIを行おうとなると、やはりハードルは高くなると思います。

・培養肉は何から出来ていますか?
【新村先生の回答】
動物の細胞から出来ていて、少しの細胞から培養してたくさんの細胞を増やしてお肉を作っています。

3.おわりに

新村先生から

私たちは学校で手を合わせて「いただきます」と感謝して食べる教育を受けています。でも、そこで終わってしまっていませんか?その先にまで思いを馳せてほしいです。食卓に並ぶ動物たちがどんな環境で暮らしているか。今回のイベントが考えるきっかけになれば嬉しいです。

私たちから

畜産動物は、毎日の食卓でお世話になっているのに普段の生活では見えない、遠い動物になっています。今回はそんな動物たちについて考える機会となればと思います。どのように食べるものを選び、消費するか、今後は「考える消費者」になることが求められます。
動物や消費について、ぜひ考えてみてください。
当日は、配信や動画放映トラブル等あり、ご心配をおかけして申し訳ございませんでした。
今後の活動で必ず活かしてまいりますので、温かく見守っていただけるとありがたいです。

以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございました!

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